オールドの感想
シャマラン新作の記事を見かけたので、見ていなかったコロナ下で撮られた旧作を。
スコセッシの「アフター・アワーズ」に、カフェで女の子と知り合って部屋に招かれたものの、彼女は買い物に出かけてしまい、その留守中に火傷の薬とリハビリ写真のファイルを見つけて(外見からは女の子が火傷を負っているようには見えない)、主人公がショックを受けるエピソードがある。
病院(皮膚科とか泌尿器科とか)の待合室に並ぶ人の顔をそっと見て、同じ感覚に見舞われる人もいるのではないか。
本作は予告編が示す通り、「なぜかあっという間に老いていく謎のビーチから出られない」という映画なのだが、登場人物の大半が持病持ち(多発性硬化症、癲癇、血友病、腫瘍、低カルシウム血症、統合失調症)という奇妙な設定が、そういう意味でなかなか秀逸だった。
彼らはパニックに陥ってしまい、話はちっともまとまらず状況は打開できない。役に立つはずの外科医が早々におかしくなってしまったり、次に役立ちそうな人があっさり溺死したりして、見る側はバッドエンドを覚悟せざるを得ないのである。
なぜその現象が起こるのか、そして脱出する方法はあるのかという2点は、映画にとってさして重要ではなく、シャマランらしい仕掛けによって男女二人が死を免れる(しかも急転直下で悪人たちが一網打尽になる)という結末は、案の定、ツマラナイものである。
それよりは、老いていく夫婦(ガエル・ガルシアとヴィッキー・クリーブス)の情感を描きたかったはずだ。
細部がおかしい、という指摘も見られる。たとえば、子どもたちはみるみる大人になるのに、大人たちはあまり変わらないように見えるなど。しかしメイクが抑えめなことはむしろこの映画の美点ではないかと思う(いくらでもメイクで怖がらせることはできたはずだ)。
ということで、私にとってはそんなに悪い映画ではなかった。
オールドのあらすじ
ガイとプリスカは離婚前の最後の家族旅行で、南国のリゾート地を訪れる。プライベートビーチで他の招待客たちと休暇を楽しむが、女性の遺体発見をきっかけに不可解な現象が次々と起こる。時間の流れが異常で、細胞の老化が急速に進むことが判明し、一行はビーチからの脱出を試みる。トレントとカーラは恋に落ち、子供を授かるが、時間の影響で子供は死亡。チャールズの統合失調症が悪化し、セダンを殺害。ジャリン、カーラ、パトリシアも相次いで死亡する。
ガイとプリスカは和解し、トレントとマドックスはビーチの秘密を解明するノートを発見。地磁気と岩の影響で老化が進むことを知り、金属の管が解決策かもしれないと考える。プリスカはチャールズと戦い、ガイとプリスカは寿命を迎えて死亡。トレントとマドックスは珊瑚礁が岩の影響を防ぐと推測し、海中を脱出。ホテルが大手製薬会社の極秘研究所であり、新薬の治験を行っていたことを暴く。
トレントとマドックスはホテルに戻り、警察に事態を説明。マネージャーや従業員は逮捕され、製薬会社にも捜査が入る。2人は警察のヘリコプターで叔母の元に向かう。
オールドを観るには?
オールド キャスト
プリスカ・キャパ – ヴィッキー・クリープス
チャールズ – ルーファス・シーウェル
トレント・キャパ(15歳) – アレックス・ウルフ
トレント・キャパ(中年) – イーモン・エリオット
トレント・キャパ(6歳) – ノーラン・リヴァー
トレント・キャパ(11歳) – ルカ・ファウスティーノ・ロドリゲス
カーラ(15歳) – エリザ・スカンレン
カーラ(6歳) – カイル・ベイリー
カーラ(11歳) – ミカヤ・フィッシャー
マドックス・キャパ(16歳) – トーマシン・マッケンジー
マドックス・キャパ(中年) – エンベス・デイヴィッツ
マドックス・キャパ(11歳) – アレクサ・スウィントン
クリスタル – アビー・リー
ジャリン・カーマイケル – ケン・レオン
ミッドサイズ・セダン/ブレンダン – アーロン・ピエール
パトリシア・カーマイケル – ニキ・アムカ=バード
アグネス – キャスリーン・チャルファント
支配人 – グスタフ・ハマーステン
マドリッド – フランチェスカ・イーストウッド
シドニー – マシュー・シアー
運転手 – M・ナイト・シャマラン
グレッグ – ダニエル・アイソン
オールド 作品情報
脚本 – M・ナイト・シャマラン
原作 – ピエール・オスカル・レヴィー、フレデリック・ペータース『Sandcastle』
製作 – M・ナイト・シャマラン、マーク・ビエンストック、アシュウィン・ラジャン
製作総指揮 – スティーヴン・シュナイダー
音楽 – トレヴァー・ガレキス
主題歌 – サレカ『Remain』
撮影 – マイク・ジオラキス
編集 – ブレット・M・リード
製作会社 – パーフェクト・ワールド・ピクチャーズ、ブラインディング・エッジ・ピクチャーズ
配給 – アメリカ ユニバーサル・ピクチャーズ、日本 東宝東和
公開 – アメリカ 2021年7月23日、日本 2021年8月27日
上映時間 – 108分