さがすの感想
映画は、何度も金槌を振り下ろす練習をしている佐藤二朗の姿を捉えるところから始まる。
これは後半のシーンのリハーサルを意味しているが、そうした意図的な時系列と視点の配置が、まずもってこの映画の特徴になっている。
まず最初に失踪した佐藤二朗を探す娘である伊東蒼の時間軸、次に名無しと称する連続自殺幇助魔の時間軸、そして失踪した佐藤二朗が妻を喪くし名無しの仕事を手伝い始める時間軸がある。
最初の二つをつなぐのは、伊東に追われた名無しがズボンを剥ぎ取られながら超える壁である。
そうして舞台は大阪西成から果凛島という架空の島へと移るが、二つ目と三つ目の時間軸は森田望智演じるムクドリという自殺志願者をめぐるものである(ここは少しわかりづらく、一筋縄ではいかない森田という女優の存在を反映している)。
3人の視点を重ねることで浮かび上がるのは、何やらあてどなく彷徨し続ける人の姿だ。
その中で映画は、互いを見失っていた伊東と佐藤の絆に行き着き、あっけなく終わる(ラストシーンで伊東は「ようやく見つけた」と呟き、これが「さがす」映画だったことを思い出させる)。
監督はポン・ジュノに師事した人とのことだが、本作で当て書きしたとされる佐藤二朗の演技は本当に素晴らしい。
カーテンに吊った紐で縊死しようとしているALSの妻を扉の隙間から茫然と見つめ続ける長いシーンは、長く忘れがたいものになるだろう。
上映時には、ラストシーンに「迎えにきたで」という伊東の声が入っていたというが、今回見たVOD版にはなかったと思う。
伊東蒼はNHK「やさしい猫」で優香の娘を演じている、注目の17歳。
さがすのあらすじ
原田智はスーパーで20円足りず万引きし、娘の楓が不足分を支払って許しを乞う。帰り道、智は連続殺人犯・山内照巳の懸賞金300万円に言及するが、楓は相手にしない。翌日、智が失踪し、楓は日雇い労働現場で智を探すが、そこにいたのは山内に似た別人だった。楓は指名手配犯ポスターで山内と父と同じ名前の男が酷似していることに気づき、父の過去を調べ始める。卓球教室で山内と遭遇し、逃亡する彼を追い、山内のズボンから父のスマホと果林島の乗船券を発見。果林島へ向かうと、一軒家で事件に巻き込まれた父を発見し、取り乱す楓を警官が制止する。
さがすを観るには?
さがす キャスト
原田楓(原田の娘) – 伊東蒼
山内照巳(連続殺人犯) – 清水尋也
ムクドリ(自殺幇助を依頼した女性) – 森田望智
花山豊(楓のクラスメート) – 石井正太朗
蔵島みどり(楓の担任) – 松岡依都美
原田公子(智の妻で楓の母) – 成嶋瞳子
馬渕(みかん農家) – 品川徹
さがす スタッフ
共同脚本:小寺和久、高田亮
音楽:髙位妃楊子
エグゼクティブプロデューサー:豊島雅郎、仲田桂祐、土川勉
プロデューサー:井手陽子、山野晃、原田耕治
ラインプロデューサー:和田大輔
撮影:池田直矢
録音:秋元大輔
編集:片岡葉寿紀
装飾:松塚隆史
衣裳:百井豊
ヘアメイク:宮本奈々
カラリスト:大西悠斗
音響効果:井上奈津子
キャスティング:田坂公章
助監督:相良健一
スケジュール:山田卓司
制作担当:姫田伸也
音楽プロデューサー:安井輝
宣伝プロデューサー:中島航
製作協力:埼玉県 / SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ
制作協賛:CRG
制作プロダクション:レスパスビジョン
制作協力:レスパスフィルム
製作幹事・制作・配給:アスミック・エース
製作:『さがす』製作委員会(アスミック・エース、DOKUSO映画館、NK Contents)

  
  
  
  