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死の発送

3.5
比嘉愛未(死の発送) ドラマ
比嘉愛未(死の発送)
死の発送は、2014年5月30日にフジテレビ開局55周年特別番組として放送。

死の発送の感想

N(農水)省の公金10億円を横領して逮捕された男(矢柴俊博)が7年の刑期を終えて出所したところから話が始まる。清張の原作では横領金は5億円とされていたが、雑誌掲載された1961〜62年においてはかなりの巨額だから(三億円強奪事件は1968年)、使途不明の1億があり、その行方がわからなかったというのは、それで済むはずがないと思うのだが、すでに事件が風化しつつあるという設定は、戦争が終わってまだ16年しか経っていない当時のリアルな感覚だろう。

そんな中で(と言ってもドラマの時代は現代だが)隠し金の在処を探るために編集長(寺尾聰)から矢柴の見張りを命じられた週刊誌記者の向井理比嘉愛未(原作では夕刊紙記者で、比嘉は存在しない)は、競馬場や神楽坂などを尾行するが、金の行方はわからず、挙句、矢柴は母親の墓参り直後に絞殺されてしまう。さらに、隠し金探しに自らのめり込んだ寺尾もトランク詰めの死体となって発見される。

矢柴と寺尾を殺したのは誰か、1億円(ドラマでは3億円)はどこに行ったのか、という二つの謎を撚り合わせたプロットはかなり綿密なもので、神楽坂の芸者(伊藤裕子)と競馬の厩務員(山中崇)を糸口に、死んだ矢柴と調教師(寺島進)、さらに代議士(大杉漣)に連なる関係が浮かび上がる展開は、原作ではかなり面白いが、ドラマでは時間が足りないので駆け足となり、段取り的。

一方、殺しにはややこしいトリックが仕掛けられており、寺尾の死体入りのトランクは上野から岩手(原作では福島の五百川)に発送されたのだが、上野駅の荷物係の証言から、トランクを持ち込んだのは寺尾その人だったという怪談になっている(死体が自らの死体を発送した)。もっとも、なぜそこまで手数をかけて死体を移動させる必要があるのかはよくわからないのだが(一応、アリバイ工作のためということになっている)。

向井らが調べを進めるにつれて、トランクと並行して、競走馬(と厩務員)、代議士と調教師、そして寺尾聰もまた同時に東北へ移動していたことがわかるが、原作ではすべて国鉄であり、貨物線を含んだダイヤグラムトリックとなっている。

ドラマでは馬と厩務員は馬運車に乗って東北道を移動しているのでJRとICをつなぐトリックにアレンジされ、さらに「犯行を見ていた馬が動揺したために翌日のレースで不調に陥った」という設定がつけ加えられている。また、寺尾聰や向井理のキャラ設定にも、新聞社を辞めて三流誌に身を落としているジャーナリストの屈託が加えられた。それでなくてもややこしいのにご丁寧なことだが、これは悪くないアレンジだったと思う。

死の発送 キャスト

底井武八(「週刊ドドンゴ」の記者) – 向井理
津村亜紀(底井の同僚記者) – 比嘉愛未
山崎治郎(底井の上司で編集長) – 寺尾聰
立山寅平(代議士) – 大杉漣
西田隆三(西田厩舎の厩舎主・調教師) – 寺島進
玉弥(神楽坂の芸者) – 伊藤裕子
岡瀬正平(元・中央官庁の官僚) – 矢柴俊博
末吉秀夫(西田厩舎の厩務員) – 山中崇
山崎文子(山崎の妻) – 朝加真由美
横川修(馬運車運転手) – 松尾諭
野島(「週刊ドドンゴ」のデスク) – 玉置孝匡
鈴木(「週刊ドドンゴ」の編集部員)- 中村靖日
長谷川(競馬担当記者) – 山崎画大
臼田与一郎(岩手県警の警部補) – ベンガル
桑原(秘書) – 阪田マサノブ

死の発送 スタッフ

脚本 – 扇澤延男
演出 – 国本雅広
テーマ音楽 – 佐藤和郎
ロケ協力 – 盛岡広域フィルムコミッション、奥州市、岩手県競馬組合、岩手県馬術連盟、盛岡競馬場、水沢競馬場、境共同トレーニングセンター、相模鉄道 ほか
アクションコーディネイト – 佐々木修平
スチール – スタジオエイト・バイ・テン
技術協力 – フォーチュン、ヴァンシャープ
美術協力 – アックス、日本テレビアート
CG – ダイナモピクチャーズ
ポスプロ – ビーグル、3one
スタジオ – 緑山スタジオ・シティ
プロデューサー – 千葉行利(ケイファクトリー)、宮川晶(ケイファクトリー)
編成企画 – 水野綾子(フジテレビ)
制作 – フジテレビ
制作著作 – ケイファクトリー

死の発送の原作(松本清張)

トランクの死体は発送者本人だった…!競馬界を舞台に描く本格長編推理小説
東北本線・五百川駅近くで死体入りトランクが発見された。被害者は東京の三流新聞編集長・山崎。しかし東京・田端駅からトランクを発送したのも山崎自身だった。競馬界を舞台に描く巨匠の本格長編推理小説。

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