バットを離す奇策で大リーグボール1号を攻略するオズマに、飛雄馬は落下するバットを射抜く執念の投球で反撃。さらに「バット投げ」をも凌ぎ勝利を収めるが、極限の神経戦に耐えきれず昏倒した。
前回の続き。
運ばれていく弟の映像に、明子が「お父さん、飛雄馬が!」と悲鳴を上げる。
「飛雄馬よ、よくやった。気高い戦いだった…」と一徹は満足げだが、
明子は何を言っているかと言わんばかりに、「飛雄馬が倒れたんですよ!」と立ち上がる。
「飛雄馬のところへです、私は姉です!」

それがいかんと言うとるのじゃ
「こんなときも見舞いに行けないなんて、それこそ野球だけをやってきたオズマと一緒じゃないの。オズマがカージナルスに育てられた野球ロボットなら、飛雄馬はお父さんが育てた野球人形だわ!」
「くだらんことを言うな! そういうふうに感じられるとしたら、オズマにしても飛雄馬にしても、そこまで野球に打ち込んどるということじゃ」
ついに本音が出た明子だった。
「いい加減にせんか!」

台所に逃れた明子「堪忍してね、飛雄馬・・・」
飛雄馬のが入院中にカージナルスとの試合は全部終わり、結局、巨人はボロ負けした。

ともあれ回復した飛雄馬、ベッドの上でスポーツ紙の「オズマ物語」を読んでいる

そこへ、「対談をとりたい」と記者がオズマを連れてきた。
まずがっちり握手をお願いします、との記者の言葉に、
「照れるなあ、でもオズマ選手は素晴らしい好敵手です」
(こうして飛雄馬が頭をかくときは、ロクなことにならない)

飛雄馬は手を伸ばすが…

何が握手だ! 好敵手だ!
「野球ロボットは人間並みの口をきくな!」と戦闘姿勢なのである。
「野球ロボット? それは俺のことか?」
「お互いにだ。お前は父親に、俺は球団に、ただ野球をやるために製作された野球ロボットだ」
「違う! 俺は父から受け継いだ血の命ずるままに、野球とともに生きてきただけだ」
「違わない、俺の血は野球の性能を出すためのガソリンだ。お前の血管に流れているのも血ではない」
「ガソリン?」
「お前の父親はひどい人間だな、カージナルス球団は商売のためだが、お前の父親は我が子をロボットにしてしまった」
「父を侮辱すると許さんぞ!」
「その父を憎め! 呪え!」
「父を尊敬し感謝こそすれ、憎んだり呪ったりはできん」
「俺も球団が憎い、しかし俺は野球しか能がない。球団を飛び出したら野垂れ死にするしかない」
「俺は球団ででっかい星になり、父に応える」
飛雄馬の言葉にオズマは高笑いして、
「どっちみち野球しかないロボットではないか」
「かりに君がそうでも、俺は違う!」
オズマはニヤリとして、
「どんなところが俺と違うのか比べてみようじゃないか・・・」
──俺には青春がない。明けても暮れても野球だ。お前にはあるかな、その若さにふさわしい青春が?
「ある・・・青春もいろいろだ。野球一筋に命をかけるのも俺なりの青春だ」
──俺には恋人がいない。お前にはいるか?
「いない。欲しいとも思わん。しいて言えば野球が恋人だ」
──俺は野球の理論書以外に本というものを読んだことがない。お前は本は読むか?
「読まん・・・」
──俺には野球に関係のない友人は一人もおらん。お前はいるか?
「俺にもいないが、野球の友人だけでいい・・・」
だんだん苦しくなってくる飛雄馬である。
──俺は野球以外の夢をもつことはない。お前は?

(グイーン)「俺の・夢は・巨人の星になること・だ!」

オズマはせせら笑って、

ガガーン
「いいか、今並べたものが全部揃ってこそ、本当の青春といえるんだ。それがなくてただ野球だけなら、攻・守・走の3つの性能を目標に製作されたロボットでたくさんだ。だから我々は・・・」
「もう聞きたくない、たくさんだっ」
オズマは出て行きながら、「最後のあいさつが、まだ、ある」
「野球ロボットで生きるならば100%勝たねばならん、ことにロボット同士の性能比べともなればな」
「出て行け! 君がアメリカ人だったことを感謝するぜ、二度とその顔を見ずに済むからな」
この俺に借りがあることを忘れるな、と言い残して去っていったオズマ。
「俺はロボットなんかじゃない!」
*
・・・その後、置き手紙を残して失踪した飛雄馬。
公園のベンチに座り、おのれの人生をふりかえってみた。
「明けても暮れても野球、野球・・・俺はやっぱりオズマの言ったとおり・・・」
たまらなくなって公園を飛び出した飛雄馬、車に轢かれそうになる。

「みじめだ、なぜかひどくみじめだ…」
と、車を降りた若者は驚いて「あれっ、ジャイアンツの星投手!」
スポーツカーに乗せられた飛雄馬、「どうです乗り心地は?」と聞かれて、興味なさそうに
「いい車ですね・・・」
「そうでしょう、1時間いくらで借りたんです、工員風情にはぜいたくなんですけど」
「これ、レンタカー?」
「だって車なんて、なかなか買えないものなあ!」
若者は思い出したように、
「そうそう、すごかったなあ、カージナルス戦は・・・」
「やめてください、今日は野球の話は…」
飛雄馬はあわてて、
「今日は野球のことは忘れて、遊ぼうと思ってるんですよ」
「ほんとですか! じゃ今日は俺と一緒に徹底的に遊びましょう! それならと・・・おっ、あそこにかわい子ちゃんがいる!」
(かわい子ちゃんって、そういえば死語だなあ、なかなか良い言葉だと思うのだが・・・)

かわい子ちゃん
若者のレジャーにギターは必需品。

「ねえ、なんか歌いましょうよ」
歌うは「ズー・ニー・ブー」というコーラスグループのヒット曲(1969年)である。
白いサンゴ礁 作曲=村井 邦彦/作詞=阿久 悠
青い海原 群れ飛ぶカモメ
心引かれた 白いサンゴ礁
いつか愛する人ができたら
きっと二人で訪れるだろう
南の果ての 海のかなたに
ひそかに眠る 白いサンゴ礁
誠の愛を 見つけたときに
きっと二人で 訪れるだろう
さびしい・・・と感傷的になった飛雄馬は呟くのだった。
浜辺では定番のおいかけっこ。
「ねえ、さっきから何も言わないでさ、変な人、あんたって」
「俺、歌知らないし・・・」
すると娘は飛雄馬が唯一知ってる歌を・・・
♪ポッポッポッ、ハトポッポ・・・
「これくらいなら知ってるでしょう?」
たしかそれは、夢の巨人軍歓迎会で飛雄馬が歌おうとしていた歌だwww
飛雄馬がムッとしたので、娘は行ってしまう。
ギターを持たされると、オズマの言葉が蘇る──お前は音楽がわかるか?
さらに、カメラを持たされたものの、シャッターがわからない飛雄馬。
そのくらいわかれよww

かかっているのはゴールデンカップスの「クールな恋」だ、かっこいい~!
作詞:松島由佳/作曲:松井邦彦
I love you, I love you forever more
I love you, I love you forever more愛しすぎたから こわい
別れがこわい
青い月影をあびて 一人で祈るOh it isn’t cool today
Baby please don’t run awayこの胸に思い切り 甘えて欲しい
あなたに忘れられたら きっと僕は
渚の白い砂に 消えて行くだろう星が流れて 月だけ明るい夜に
心の扉を叩き 訪れた恋Oh it isn’t cool today
Baby please don’t run awayこの腕にすがりついて 泣いて欲しい
愛の涙を流そう 心ゆくまで
僕の胸から悩みが
消えて行くだろう
消えて行くだろうI love you, I love you forever more
I love you, I love you forever more
なんだか古く聞こえないのは、「黒バラ」のオープニングでかかっているからですね。
・・・しかし飛雄馬はいたたまれなくなり、オズマの言葉が頭に響き始める。
――お前は野球だけでも青春だと言ったな、お前はほかの青春を知らなかったらからそんなことが言えたんだ・・・
――青春とは音楽と人、希望と夢とは、若さという自由のの中にあってこそ言えるんだ・・・
そんなことは言っていなかったが・・・
飛雄馬は「こんなものが青春であるものか!」と叫びながら店を飛び出してしまう。

いきなり極端な体験を強いられている飛雄馬、言わばタイムスリップしたようなものかも?
――立て、飛雄馬・・・
今度は一徹の幻影が現れる。
――お前は野球人形かもしれん、しかし今のお前に何ができる・・・?
「うわあっ!」と走って逃げる飛雄馬。発狂寸前である。

気がつくと多摩川グラウンドに倒れていた

ゴロゴロ転がって、「ピッチャープレート・・・!」
(実際はマウンドは盛り上がっているのだから、かなり勢いよく転がらないとプレートのところまでいかないんじゃないかと思う)
野球人形はそれに徹するしかないのか
そうだ、どうして俺はこんなことに気がつかなかったんだろう
野球しかできない俺は、野球をやるしかないんだ
この腕一本で!
オズマ、アメリカに帰れ
俺は野球人形の青春を必ず作ってみせるぞ――!

「野球人形としての決意も新たな飛雄馬・・・」と始まったので、
思わず大爆笑!
焦る飛雄馬は病院の窓を割り、院長から伝説の投手・沢村栄治の生涯を説かれる。日米野球で快投し巨人の黄金期を築くも、戦地へ赴き若くして海の藻屑と消えた沢村。平和に野球ができる幸福を悟った飛雄馬は焦りを捨て、静養を誓う。(第89回|栄光のピッチング(沢村栄治物語))



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