2005年のドラマ2000年代のドラマ

隠された記憶

4.0
ジュリエット・ビノシュ(隠された記憶) 2005年のドラマ
ジュリエット・ビノシュ(隠された記憶)
『隠された記憶』(原題:仏/Caché、英/Hidden)は、2005年公開のフランスの深層心理サスペンス映画。監督・脚本はミヒャエル・ハネケ。カンヌ国際映画祭で、監督賞など3部門受賞。

『隠された記憶』ってどんな映画?

平穏な家庭に届いた、自宅を隠し撮りした一本のビデオテープ。誰が、何の目的で送ってきたのか分からない不気味な映像が、夫婦の日常に亀裂を入れ、男が過去に封印した記憶を呼び覚ましていく。ミヒャエル・ハネケが監督・脚本を務め、人間の罪悪感と現代社会の不条理を鋭く描き出したサスペンス映画。

テレビの人気討論番組でキャスターを務めるジョルジュ(ダニエル・オートゥイユ)と、妻のアンヌ(ジュリエット・ビノシュ)。ある日、二人のもとに自宅周辺をただ撮影しただけのビデオテープが届く。やがてテープには不気味な子供の絵が添えられるようになり、ジョルジュは子供時代に実家で共に暮らしていたアルジェリア人の孤児・マジッド(モーリス・ベニシュー)の存在を思い出す。

見どころは、静かに押し寄せる恐怖の中で、崩壊していく家族の心理描写。ジョルジュが自身の母親(アニー・ジラルド)を訪ねて過去を探る一方、テレビ局の局長(アニー・ジラルド)からの視線や、息子のピエロ(レスター・マクドンスキ)の不穏な行動が、夫婦の猜疑心をさらに煽っていく。ジョルジュはついにマジッドのアパートを突き止める。しかし、マジッドは関与を否定。真相が見えないまま、物語は衝撃的な局面へと向かっていく。

隠された過去と向き合う選択、そして暴かれていく人間のエゴ。全編に不穏な空気が漂い、観る者に深い余韻を残す、ハネケ監督ならではの緊迫した心理サスペンスの傑作だ。

あらすじ

順風満帆な生活を送っていたジョルジュと妻のアンヌは、送りつけられる謎のテープと血を吐く子供の絵に追いつめられていた。映像のヒントから、ジョルジュは幼少期に嫉妬からアルジェリア人の孤児マジッドを罠に嵌め、施設送りにした過去を思い出す。映像に導かれて成人したマジッドの凄惨な住処を突き止めたジョルジュは、彼を犯人と決めつけて激しく脅迫するが、マジッドは関与を否定。限界を迎えたジョルジュの前で、マジッドは突然自らの喉を切り、衝撃的な自殺を遂げてしまう――。

キャスト

ジョルジュ・ローラン(テレビキャスター) – ダニエル・オートゥイユ
アンヌ・ローラン(ジョルジュの妻) – ジュリエット・ビノシュ: 。
マジッド(アルジェリア人) – モーリス・ベニシュー
ジョルジュの母親 – アニー・ジラルド
ピエロ・ローラン(ジョルジュとアンヌの息子) – レスター・マクドンスキ
テレビ局の局長(ジョルジュの上司) – ベルナール・ル・コク
マジッドの息子 – ワリッド・アフキ
ピエール(アンヌの勤先の社長、アンヌの愛人) – ダニエル・デュヴァル
マチルド(ピエールの妻) – ナタリー・リシャール

他者の視線を探すミステリ。

この映画は、久々に映画館で。

場所が場所なのだから当然そこにいるはずだろうと思いつつ、数分間、目を凝らしていたにもかかわらず、ラストシーンで多くの観客が見たものを見いだすことには失敗してしまった。このぶんでは何を見逃しているかわかったものではない(笑)。

固定アングルの映像を延々と数分間にわたって見つめつづけること。

ラストシーンにかぎらず、キャメラが動くシーンがまったくなかったかどうかは、見直してみなければわからないのだが(自販機で買ったコーヒーを飲むシーン、部屋を出ていこうとする息子を母親が仰角で追いすがるシーンはどうだったか)、少なくとも大部分が固定であったのはたしかだ。固定アングルで撮られた日常は、送られてくるヴィデオテープに収められた映像と区別がつかなくなる。キャメラと視線の境界があやふやになっいくこと。

パラドキシカルな言い方をすれば、おそらく、だからこそ、この映画は犯人探しのミステリという形をとっているのではないか。
誰の仕掛けたキャメラかを問うことは、誰の視線なのかを意識させることだからだ。アルジェリア人は「外部」である。外部とは、同じものを眺めながらまったく異なる視線を構成する、なじめない、他者の視線のことだ。この映画には音楽がないのは、いわゆる「地」の語りがないゆえんである(まあ、いつも、ないのだけれど)。

たとえば、ラストシーンのひとつ前に、アルジェリア人の子供が連れ去られる、俯瞰ロングのシーンがある。直前にダニエル・オートゥイユがベッドに入るシーンがあるのだから、普通に考えれば、それは「夢」であろう。つまりこれはオートゥイユの視線である。しかし、映画はそれをあいまいなままにしている。

主人公の夫婦の間柄は冷めており、それぞれ相手に対してひどく冷淡である。それでも夫はまだ妻を必要としているが、妻(ジュリエット・ビノシュ)のほうはもはや(息子も含め)家族は必要ではないように思える。

『隠された記憶』を観るには?

『隠された記憶』作品情報

監督 – ミヒャエル・ハネケ
脚本 – ミヒャエル・ハネケ
製作 – ファイト・ハイドゥシュカ
製作総指揮 – マルガレート・メネゴス、ミヒャエル・カッツ、アンドリュー・コルトン
音楽 – ラルフ・リッカーマン(フランス語版)
撮影 – クリスティアン・ベルガー
編集 – ミシェル・ハドゥスー、ナディン・ミュズ
製作会社 – レ・フィルム・ドゥ・ロサンジュ、ヴェガ・フィルム、バヴァリア・フィルム
配給 – フランス:レ・フィルム・ドゥ・ロサンジュ、日本:ムービーアイ・エンタテインメント
公開 – フランス:2005年5月14日(CIFF)、フランス:2005年10月5日、日本:2006年4月29日
上映時間 – 119分

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