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ジェーン・ドゥの解剖の感想
タイトル通り、最初から最後まで解剖の話で(この感想はネタバレである)、謎の美女遺体の解体が進むにつれホラー現象が起こり始めて登場人物が全員死ぬ。
美女(オルウェン・ケリーというロシアのモデルが、最後まで眉ひと筋動かさない)は外傷が一切ないのに手足の関節が粉砕しており、内臓は何度も刺されている上、肺は焼け焦げているのに、脳細胞を顕微鏡で見ると生きている(「これが死因が分からなかった理由だ!」と叫ぶのがおかしい)。
何を隠そう、17世紀のセイラム魔女裁判の犠牲者だった――というのがオチなのだが(爪の間に北東部にしかない泥炭が詰まっているという伏線が前半にある)、だからといって外傷がない理由はわからないままなので、どうも釈然としない(魔女だから、ということ?)。
お化けが姿を現さず、枯れ尾花と大音量SEで盛大に怖がらせる映画で、ちょっと狐につままれた感。
1時間26分と手短かなのは良し。
ジェーン・ドゥの解剖 見どころ
- ワンシチュエーション×ミステリ構造の妙
本作はほぼ全編が地下の検死室のみで進行する。密閉空間で2人の検死官(父と息子)が、身元不明の美しい死体「ジェーン・ドゥ(名無しの女性)」を解剖しながら、次々と異様な事実を発見していくという逆ミステリ”構造。- 肺が煤だらけなのに、皮膚は無傷
- 舌が切られ、胃には毒草が
- 死因は外傷ではない
この“謎が深まる一方のサスペンス設計”が観客を引き込み、密室での単調さを感じさせない。
- 死体が語らぬ“語り手”となる構成
ジェーン・ドゥは終始一言も喋らず、一歩も動かないにも関わらず、強烈な存在感を放っている。この死体が「観客に謎を投げかけ続ける語り手」の役割を担っており、彼女の肉体に刻まれた“証拠”が言葉に代わってストーリーを語る——という構成が非常にユニーク。
死体役のオルウェン・ケリーが実際に“本物の人間”として演じている点(人形ではない)が、観客に不気味なリアリティを与え、異常な緊張感を持続させている。 - ホラーと宗教・魔女裁判の交差点
物語が進むにつれ、ジェーン・ドゥの体に秘められた「時代を超えた呪い」が明らかになります。彼女は単なる被害者ではなく、無実の魔女狩りによって犠牲となった女性の象徴なのだ。
その背景には、「権力による暴力」「女性性への畏れと排除」「因果応報と転化した怨念」など、宗教史・ジェンダー史的テーマも内包されており、単なるジャンプスケアに終わらない“知的ホラー”としての魅力を備えている。 - 音と光の緊張演出
アンドレ・ウーヴレダル監督は、音の間と光の揺らぎを非常に巧みに使っている。- ラジオのノイズが急に切り替わる
- 蛍光灯が一斉に割れる
- 鐘の音が意味深に鳴り出す
見えないものが“在る”という恐怖をじわじわと浸透させ、観客の想像力に訴える。「何も起きていないのに怖い」演出は、ホラーの上級技術。
ジェーン・ドゥの解剖 あらすじ
バージニア州の田舎町で息子のオースティンと共に遺体安置所と火葬場を経営し、検死官もつとめるトミーのもとにある夜、保安官から緊急の検死依頼が入る。一家3人が惨殺された家屋の地下から発見された20歳代とみられる身元不明女性の全裸死体、通称「ジェーン・ドウ」の検死をしてほしいというものであった。
トミーとオースティンは早速検死解剖を始めるが、切り取られた舌、傷つけられた膣内、通常なら見られない執刀時の出血、真っ黒に変色した肺、胃の中の不思議な紋様の布切れ、皮膚の内側の同様の紋様の入れ墨など、遺体に隠された不可思議な事実が次々と判明し、折からの暴風雨で電気が遮断、2人は様々な怪奇現象に襲われる。
ジェーン・ドゥの解剖を観るには?
ジェーン・ドゥの解剖 キャスト
トミー・ティルデン – ブライアン・コックス
エマ – オフィリア・ラヴィボンド
バーク保安官 – マイケル・マケルハットン
ジェーン・ドウ – オルウェン・ケリー
ジェーン・ドゥの解剖 スタッフ
監督:アンドレ・ウーヴレダル
脚本:イアン・ゴールドバーグ、リチャード・ナイン
製作:フレッド・バーガー、エリック・ガルシア、ベン・ピュー、ロリー・エイトキン
製作総指揮:スチュアート・フォード、マット・ジャクソン、スティーヴン・スクイランテ
『ジェーン・ドゥの解剖』は、派手な殺人シーンもゾンビも出ない、密室の中だけで起こる、なのに、怖くて、息が詰まる、心理と謎解きに特化した知的ホラーです。です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。