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無限の住人の感想
見るのを忘れていたことを思い出したもののVODには見当たらず、2年ぶりにTSUTAYAディスカスを利用してブルーレイ版を借りた。ディスクがボロボロで音がブツ切れ状態だったが(ひどいサービスだ)、それでも最後まで見たのは、駄作と決めつけられていたにもかかわらず、殺陣など良くできていたからだろう(興行的には大コケだったらしいが)。
駆け足すぎて後半はグチャグチャだったが、三池崇史だからこそ完成できたと思われる。
もはや少女でもない歳だったはずだが(本作の撮影は2015年)ほとんど子役のような杉咲花、市原隼人の尸良、戸田恵梨香の槇絵、田中泯の吐鉤群など、キャスティングも良い線いっていた。
無限の住人 見どころ
江戸時代の日本を舞台に不老不死の肉体を持つ用心棒を中心とする時代劇で、奇抜な衣装を身にまとう人物や独創的な武器が多数登場する。キャッチコピーは「不死身って、死ぬほどめんどくせぇ。」「1人対300人(全員敵)“ぶった斬り”エンタテイメント」。 第70回カンヌ国際映画祭のアウトオブコンペティション部門に公式選出され、北米、イギリス、オーストラリア、ドイツ、でも公開。
- 100人斬りに象徴される“生”と“死”の業
主人公・万次(木村拓哉)は不死身の肉体を持つ剣士。妹を失ったことへの贖罪として、死にたいのに死ねず、人を斬り続ける宿命を背負う。
この“死にたくても死ねない”万次の姿は、単なるバトルヒーローではなく、存在の矛盾を抱えた哲学的キャラクターと言える。オープニングの「100人斬り」が象徴的で、命の軽さと重さが交錯する圧巻のシーン。血飛沫と刀の音の向こうに、業の深さと虚無が浮かび上がる。 - 木村拓哉の“老い”と“哀愁”をまとった新境地
万次を演じる木村拓哉は、これまでの“カッコよさ”全開のヒーロー像ではなく、疲れ果てた中年の“敗者”の色気と諦念を表現。顔に傷を負い、無精髭を生やし、死にたいと呟く。だが、少女・浅野凜(杉咲花)を守るという役目にだけは抗えず、刃の中に生きる意味を見出す。「年をくったキムタク」の説得力があり、キャリアの中でも特に印象深い演技となった。 - 三池崇史監督の“暴力美学”と型破りな殺陣
三池監督らしい過激さ、過剰さ、そして暴力をスタイリッシュに見せる演出が全編に満ちている。単なるグロテスクではなく、戦いの中に美学や苦悩がにじむ点で、単なる“バイオレンス映画”に留まらない魅力を放つ。
群集戦や一騎打ちなど、殺陣のバリエーションも豊富で、140分という長尺を持て余すことなく展開。血の量はやや多めだが、それも“生と死のドラマ”の一部として許容できるレベル。 - 原作の世界観を活かしながら、映画的に再構築
原作は長大かつ複雑な構成を持つ作品ですが、映画版は凜と万次の関係にフォーカスを絞ることで、1本の人間ドラマとして再構成された。
万次と凜の「血のつながらない家族」のような関係性が、物語の核。杉咲花は、復讐心と少女のあどけなさを併せ持った難役を的確に演じ、木村との年齢差を超えた“魂の交流”を感じさせる。 - 構成の粗さと演出のブレ
とはいえ原作の持つ“世界観の厚み”に比べ、映画はどうしても**展開が駆け足で、キャラクターの掘り下げが浅い。敵キャラ(特に福士蒼汰演じる尸良など)にもう一歩狂気の魅力が欲しかったという声や、説明不足な設定への戸惑いもあり、原作未読者に不親切だったはず。
無限の住人 あらすじ
剣客集団・逸刀流に両親を殺され、実家の剣術道場を潰された少女・浅野凜は仇討ちを遂げるため、不老不死の肉体を持つ男・万次(まんじ)に用心棒を依頼する。依頼を受けた万次は、凜と共に逸刀流との戦いに身を投じることになる。
当初、凛と万次は浅野道場を襲い両親を殺害した逸刀流の者たち(すなわち直接の仇敵)や天津影久を殺害し、逸刀流を潰すことを目的としていた。しかし逸刀流や、それを潰そうとする無骸流、幕府の刺客などと斬り合い、時に親交をむすぶ中で「天津影久を殺して逸刀流を潰せば個人的な復讐は果たせるが、はたしてそれでいいのか?」と思い悩むようになる。
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無限の住人 キャスト
浅野凜 / 町 – 杉咲花
天津影久 – 福士蒼汰
尸良 – 市原隼人
乙橘槇絵 – 戸田恵梨香
百琳 – 栗山千明
凶戴斗 – 満島真之介
司戸菱安 – 金子賢
八百比丘尼 – 山本陽子
黒衣鯖人 – 北村一輝
刀鍛冶 – 福本清三
宇留間 – 出合正幸
偽一 – 北代高士
火瓦 – 新妻聡
真琴 – 平岡拓真
お静 – ちすん
八角蔦五 – 山口祥行
花田 – 本山力
賽河屋 – 清家一斗、堀田貴裕
司戸の手下 – 黒石高大、一ノ瀬ワタル、笠原竜司、小橋正佳、夏山剛一
お恋 – 加藤千果
園英子
阿葉山宗介 – 石橋蓮司
河野虎巌 – 勝村政信
浅野時 – 真飛聖
浅野虎秀 – 菅田俊
天津三郎 – 音尾琢真
浅野虎行 – 大西信満
閑馬永空 – 市川海老蔵
吐鉤群 – 田中泯
伊羽研水 – 山﨑努
無限の住人 スタッフ
監督 – 三池崇史
脚本 – 大石哲也
音楽 – 遠藤浩二
主題歌 – MIYAVI「Live to Die Another Day -存在証明-」(UNIVERSAL MUSIC)
製作 – 高橋雅美、亀山慶二、吉羽治、ピーター・ワトソン、鄭泰成、奥野敏聡、大川ナオ、荒波修
エグゼクティブプロデューサー – 小岩井宏悦
プロデューサー – 坂美佐子、前田茂司、ジェレミー・トーマス
撮影 – 北信康(J.S.C.)
照明 – 渡部嘉
録音 – 中村淳
美術 – 松宮敏之
装飾 – 極並浩史
編集 – 山下健治
スーパーバイジングサウンドエディター – 勝俣まさとし
キャラクタースーパーバイザー – 前田勇弥
ヘアメイクディレクター – 冨沢ノボル
特殊メイクアップ – 松井祐一、三好史洋
殺陣 – 辻井啓伺、出口正義
画コンテ – 相馬宏光
書 – 岡本美香
特殊武器 – 坂本朗
キャスティングスーパーバイザー – 柿崎裕治
セキュリティースーパーバイザー – 古谷謙一
キャスティングプロデューサー – 杉野剛
ラインプロデューサー – 今井朝幸、善田真也
助監督 – 倉橋龍介
制作担当 – 青木智紀
VFXスーパーバイザー – 太田垣香織
コンポジットスーパーバイザー – 橋本聡
VFXコーディネーター – 川出海
企画協力 – 平田掛彦、丸田順悟
監修 – 金井暁、北嶌徹(講談社 「月刊アフタヌーン」編集部)
脚本分析 – 田中靖彦
制作プロダクション – OLM
制作協力 – 楽映舎、東映京都撮影所
製作幹事・配給 – ワーナー・ブラザース映画
製作 – 映画「無限の住人」製作委員会(ワーナー・ブラザース映画、テレビ朝日、講談社、ジェイ・ストーム、Recorded Picture Company、CJ E&M、OLM、研音、GYAO)
『無限の住人』は、死と贖罪を背負った者たちが、生の意味を求めて刀を振るう物語です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。
無限の住人の原作(沙村広明)
『月刊アフタヌーン』1993年6月~2012年12月連載、1993年アフタヌーン四季大賞、1997年に第1回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞、英語版が2000年にアイズナー賞最優秀国際作品部門
父を殺し、母を攫(さら)った剣客集団『逸刀流(いっとうりゅう)』に復讐を誓う少女・浅野 凜(あさのりん)は、「百人斬り」の異名を持ち、己の身体に血仙蟲(けっせんちゅう)という虫を寄生させることで不死の肉体を持った剣士・万次(まんじ)を用心棒として雇い、逸刀流の統主である宿敵・天津影久(あのつかげひさ)を追う旅を始める――。