往生際の意味を知れの感想
原作はもっとコワイらしいが、ドラマは、見るのをやめたくなるような出だしからテンションを下げずに突っ走ってなかなかネタを割らず、どうするのかと思っていたら、途中から急に面白くなった。ひとつの傑作と言える。
主演2人(青木柚と見上愛)はどちらも2021年の問題作「きれいのくに」に出ていた人で、この2人でなければドラマとしては成立しなかったと思う。とくに見上は素晴らしい。寺山修司好きだというが、出来すぎのような気がする。見なかった「liar」というドラマを見てみようかな。
往生際の意味を知れの見どころ
本作は非常識の淵を行く復讐的“妊活ミステリー”である。
一見“ラブストーリー”だが、実際は“妊娠=復讐手段、母への暴露劇、姉妹関係の崩壊”という狂気の連鎖がテーマだ。
まず、日和の衝撃的台詞「精子出して――」で「常識の脱構築」が一気に浮き彫りになる、“身体を道具化し、目的のために男を呼び戻す”というタブー破りである。
海路は、「元カノと結婚したい」と公言し、自宅は全焼、自殺直前に日和から電話が。彼の歪んだ“元カノストーカー”願望、自己破壊的な狂気が、物語の底流にある。
日和は妊娠を“母のエッセイ漫画への復讐”として利用しており、海路はそれに応じて、ドキュメンタリー作成を条件に性交を開始。“自己利用のための身体”と“復讐の摂理に飲み込まれる関係性”が極端に拡大する「妊活復讐劇」となる。倫理の限界に挑む展開だ。
母・由紀(山本未來)の毒親・監禁の“真実”、日和の妊娠目的、そして姉妹三人の暗い因縁と、展開は次々と予想を裏切る。
見上愛(日和)と青木柚(海路)は共演3回目。“同じ思考”を共有しつつ、不安と緊張感が増す緻密なバランスの組み合わせだ。日和役は漫画的トーンだが、後半は人間味が付加され、《“ドS”の清く強い自己肯定》がゾクゾクする魅力を放つ。
海路役は危うく哀しい元カレを演じ、表情や仕草が“どこか狂気”を帯びた人物として立体化されていた。
演出は“過去と現在を行き来するヴィジュアル”が綿密に作り込まれ、照明・色調の差異が時制と心情を浮かび上がらせる。美術は、海路の部屋や日和の自宅に“生活感と異様な静けさ”を共存させる、冷たくもリアルなセットだった。オープニング「往生際の意味を知れ!」(TOOBOE)、エンディング「FOOL」(羊文学)はプロットの“狂気と蜜”を質感的に支えていた。
往生際の意味を知れ あらすじ
区役所勤務の市松海路は、7年前に別れた元カノ・日下部日和が突然現れる。大学時代、映画監督だった海路はパーティーで日和と出会い、映画出演をオファーし、交際に発展。しかし、1か月後、日和は突然別れを切り出し失踪。7年後、海路は日和との思い出を失い、自殺を考えるが、日和から「精子が欲しい」と連絡が来る。日和は『星の三姉妹』のモデルで、妊娠に隠された目的は母親の嘘を暴くこと。海路の同僚・八幡典子や日和の家族が絡み、衝撃の展開へ。海路は日和と再会し、彼女の真意を探る。
往生際の意味を知れを観るには?
往生際の意味を知れ キャスト
市松海路(いちまつ かいろ) – 青木柚
■海路の関係者
八幡典子(やはた のりこ) – 樋口日奈
榊田正史(さかきだ まさし) – 三山凌輝(BE:FIRST)
■日和の関係者
日下部由紀(くさかべ ゆき) – 山本未來(幼少期 – 中村莉久)
日下部珠緒(くさかべ たまお) – 安斉星来
日下部千世子(くさかべ ちよこ) – 宮﨑優
日下部美智(くさかべ みち) – 遊井亮子(学生時代 – 玉井らん)
往生際の意味を知れ スタッフ
監督 – アベラヒデノブ
脚本 – #nrt開真理、竹村武司
プロデューサー – 上浦侑奈、松本彩夏、小林有衣子
ドラマイズム
往生際の意味を知れの原作
「元カノと結婚したい」は叶うのか!?
主人公・市松海路(いちまつかいろ)の前に、7年前に失踪した元カノジョ・日下部日和(くさかべひより)がある日突然、現れた。
恋い焦がれ、待ち望みすぎて、元カノ教の敬虔な信徒と化していた市松だったが、彼女の無理難題な要求が明かされて…
「市松君に私の出産記録を撮って欲しいの。」
「だから市松君の精子が欲しい。」
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