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ニッポンノワール-刑事Yの反乱-の感想
暴力刑事で人間性がねじくれた賀来賢人が山小屋で目を覚ますと、手には拳銃を握っており、傍らには上司の広末涼子警部が胸を撃たれて死んでいた。そして賀来の記憶は3ヶ月前で途切れており――
というヒジョーに漫画的な導入、そして定石外しの展開で、「これが刑事ドラマと呼べるのか」という挑戦的なキャッチコピーから先に作ったかのようなドラマである。 ・
「3年A組-今から皆さんは、人質です-」を書いた武藤将吾ならではとも言えるが(本作の設定は「3年A組」の半年後で、3人が同じ役で出ている)、オヤジくさい日曜劇場でこれをやるのは勇気を要したはずだ。またこの人物設定は次の「桜の塔」に引き継がれる。
初話では、密室劇「3年A組」でも首を傾げていたような部分が、だだ漏れに全開しているように感じる。どんな計算がこの後あるのか。
といいつつ、最後まで見はしたが、ながら見に近く、細かいところはよくわからぬまま終わった。
結論からいうと、「平成ライダーの書法」によるドラマと言えるのだが、とてつもなく退屈な何分かが毎回あるため、つい、ながら見になるのだ。
敵だった人が次の回には味方になったりするところが平成ライダーっぽいのだが、おかげで最終回の黒幕も意外性はなく。
エンドクレジットで、ダメ押しのようにオチがあり、さすがに白けた。
ニッポンノワール-刑事Yの反乱- 見どころ
本作は賛否両論を巻き起こした問題作であり、その「異質さ」こそが最大の見どころである。
一見すると刑事ドラマなのだが、物語が進むにつれて サスペンス、アクションに加え、SF的要素が絡み合う、ジャンルミックスのドラマなのだ。
まず、目覚めたら女性刑事の死体と拳銃というショッキングな導入からドラマは始まるが、「自分は人を殺したのか?」という 記憶喪失の主人公(遊佐清春)が真相を追う展開は、「メメント」的なハードボイルドを予想させる。
しかし、次第に明らかになるのは、人体実験、薬物投与、国家ぐるみの陰謀といったかなり荒唐無稽なプロットである。ほとんど「仮面ライダー」的なもので、従来の日曜夜10時枠の文法を壊すような挑戦と言える。
賀来賢人といえば、『今日から俺は!!』のコミカルな印象が強い役者だった。本作では鋭い目つきと虚無感をまとったシリアスな演技を披露している。ラストに向けての賀来の演技は、孤独・怒り・愛情がないまぜになった凄絶さがあり、強烈な後味を残す。
記憶を失い、自分の正義を見失いながらも少年(碓井薫)のために戦う姿は、やはり特撮ヒーロー的なのであった。
演出美学も異様であり、モノクロ調の画面、冷たい色彩設計の中で激しいアクションが唐突に挿入され、カメラワークは縦横無尽、スローモーション、サザンオールスターズ「愛はスローにちょっとずつ」(主題歌)などハイテンションな劇伴が挿入される。
本作は話題作『3年A組』と同じ世界線にある物語であり、「ガスマスクの男」「NNマーク」などが引き継がれ、「プロジェクトニッポンノワール」といった謎が次々提示される。
最終話では一応ほとんどの謎が明かされはしたが、説明不足に終わった部分も多く、あえて「理解できない駄作」を拒み、「理解できないからこその余韻」を開き直っているかのようであった。
奇抜な設定の裏には、遊佐と碓井薫、清春と父母、プロジェクトに関わった親世代と子どもたちという“親と子の絆・継承”というありきたりなテーマが流れていた。暴力と陰謀に彩られた物語の中心に「誰かを守る」という優しさを置いたのは、何か言い訳めいたものを感じる。
結果、『ニッポンノワール』は、日曜夜ドラマの枠でここまで尖ったものをやるか?と視聴者を驚かせ、刑事ドラマと見せかけてサイコスリラー・SF・人間ドラマをぶち込む実験作となった。
ほとんどの視聴者は置き去りにされたため批判も多い、「理解できる人だけついてこい」という姿勢のドラマである。
たとえばラストシーンの「銃声の真意」については、いまだに議論が絶えないのである。
ニッポンノワール-刑事Yの反乱- 巷の考察や感想
思えば、世の中の考察流行りはこのへんから始まったのではなかったか。
惑わされた視聴者たちの感想をいくつかピックアップしてみる。キヨホーヘンというのはこういうのを言うのであろう。
すべて折り込み済みと思われる。
- 大量の伏線が張り巡らされていたが、最終回での一斉回収で消化不良になった
- 第1話放送後からSNS上で考察合戦が活発化し、視聴者の推理心を煽る演出だった
- 主人公・遊佐清春が人体改造を受けていたという設定が突如明かされ、一気にリアリティが失われた
- 黒幕が名越時生であることが判明したが、予想通りすぎた
- 賀来賢人のハードボイルドな演技が話題となり、前作『今日から俺は!!』とのギャップが注目された
- 『3年A組』と世界観の共有され、登場人物や設定がリンクしていた
- 最終回後にHuluで配信されたオリジナルストーリーで補完が行われて不満の声が上がった
- ラストシーンで主人公が撃たれたが生死が明確にされなかった
本作の脚本を書いた武藤将吾の経歴
武藤将吾は、『仮面ライダービルド』の中心的なライターであり、ストーリー構築と世界観形成を一手に担い、特撮ジャンルに大きな功績を残した脚本家である。
- 『仮面ライダービルド』(2017–2018) — シリーズ構成・脚本(全49話)
主にドラマ脚本で実績を積み(『電車男』『クローズZERO』など)、『ビルド』で特撮初挑戦だったが、2017年9月〜2018年8月まで放送されたテレビシリーズ全49話をメインライター兼シリーズ構成として担当。「科学×推理×アクション」のバランスに重きを置いた独自路線が、大人にも響く知的な雰囲気を支え、その構成力とストーリーテリング力が高く評価された。
原作・演出スタッフと共に、科学と推理を組み合わせた硬派な作風で知られる本作を、「子供も大人も楽しめる」作品に仕上げたと自身で語っている。 - 劇場版&スピンオフ作品
『ビルド』本編に加えて次の映像作品の脚本を単独で手がけた。- 劇場版『仮面ライダービルド Be The One』(2018年公開)
- Vシネマ『ビルド NEW WORLD: 仮面ライダークローズ』『…グリス』(両作品とも2019年公開)
- クロスオーバー作品『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイド with レジェンドライダー』(2017年12月公開)**(脚本は高橋悠也と共同)
これにより、テレビシリーズから映画、Vシネマまで同一世界観を継続的に描いた。
さらに本編を基にした小説版『仮面ライダービルド』も手がける予定だったが、2020年以降は「無期限延期」状態のまま。
ニッポンノワール-刑事Yの反乱- あらすじ
警視庁刑事の遊佐清春は、上司だった碓氷薫の死体と共に森の小屋で目覚め、3か月の記憶喪失に苦しむ。自らが容疑者になることを避けるため証拠を消去して逃亡した清春は、薫が再捜査していた「東堂銀行十億円強奪事件」と彼女の殺害事件の関連性を追い始める。同時に薫の息子・克喜の面倒を見ることになった清春。捜査を進めるうち、警察内部に存在する謎の組織「ニッポンノワール」が人体実験を行っていること、そして薫自身が十億円強奪の首謀者だったという真実が徐々に明らかになっていく。記憶の断片から、薫は清春にこの組織の壊滅を託していたことが判明する。
ニッポンノワール-刑事Yの反乱-を観るには?
ニッポンノワール-刑事Yの反乱- キャスト
碓氷薫(警視庁捜査一課のマドンナ) – 広末涼子
名越時生(碓氷班の刑事) – 工藤阿須加
高砂明海(碓氷班の女性刑事) – 立花恵理
江國光成(碓氷班のベテラン刑事) – 杉本哲太
■警視庁捜査一課
南武修介(捜査一課長) – 北村一輝
伊上龍治(捜査一課刑事) – 水上剣星
香月安彦(捜査一課刑事) – 駒木根隆介
前園孝(捜査一課刑事) – 横山涼
宮城遼一(捜査一課刑事) – 細田善彦
本城諭(捜査一課理事官) – 篠井英介
■警視庁公安部
才門要(さいもん かなめ) – 井浦新
仁平(公安部の課長) – 相島一之
宇野(刑事部長) – 長谷川公彦
眞木光流(清春と宮城の同期) – 矢本悠馬
■ニッポンノワールのメンバー、元メンバー
碓氷政明(元警察庁長官) – 大和田伸也
陣内凪人(半グレ集団ベルムズのリーダー) – 落合モトキ
宝生順平(少年A) – 久保田康祐
■深水家
深水喜一(喫茶店「bonnaro」マスター) – 笹野高史
深水星良(深水の長女) – 入山法子
深水咲良(フリーライター) – 夏帆
■その他
碓氷克喜(碓氷薫の息子) – 田野井健
本城芹奈(本城理事官の娘) – 佐久間由衣
喜志正臣(半グレ集団ベルムズの元リーダーK) – 栄信
ファイター田中(スーツアクター) – 前川泰之
科学者 – 仲野元子
ニッポンノワール-刑事Yの反乱- スタッフ
音楽 – 松本晃彦
主題歌 – サザンオールスターズ「愛はスローにちょっとずつ」(TAISHITA LABEL / VICTOR ENTERTAINMENT)
オープニング・挿入曲 – ヴィヴァルディ 「協奏曲第4番 RV 297「冬」第1楽章 」
警察監修 – 石坂隆昌
アクションコーディネイト – 柴原孝典
制作協力 – AX-ON
チーフプロデューサー – 西憲彦
プロデューサー – 福井雄太、柳内久仁子
演出 – 猪股隆一、小室直子、西村了、西岡健太郎
製作著作 – 日本テレビ
『ニッポンノワール-刑事Yの反乱-』は、平成仮面ライダーの書法による警察ドラマと言えます。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。