画期的な学園ドラマ(御上先生の感想)
放送時に初話を見たきり録画を放置していたのは、こういう松坂桃李のあり方には何度か騙されたと感じたからなのだが(「新聞記者」「今ここにある危機とぼくの好感度について」)、あらためて見直してみると、本作は最後まで面白かった。ごく普通に「そうだね」と相槌を打って本作ならではの意味を持たせてしまう芸当はこの人ならではであろう。
イジメも、一軍二軍も、クレーマーも、万引きも、飲酒喫煙も、恋愛も、スポーツも出てこない学園ものである。
脚本家はその「新聞記者」を書いた一人で、本作には麹町中学校の校長先生というモデルがいるらしいのだが、そうした下地を活かしつつ、本作の緊迫感を実験しているのは、演出がいいのか、プロデューサーがいいのか、よくわからない。非常にバランスが良かった。
生徒としては、常にニヤニヤしていかにも現場馴れしていそうな蒔田彩珠がやはり印象的だが、この人は折り紙付きだからそのくらいやるだろうと思っているので、それほど驚かない。吉柳咲良、髙石あかり、影山優佳、永瀬莉子(ただの莉子との違いがよくわからないのだが)などの客演も良かった(髙石あかりは最初から目立っているのだが終盤までスポットが当たらず、ハラハラさせられた)。
岡田将生が実は味方で、及川光博(この人も謎である。常に同じキャラしか演じておらず、どんどん円熟化している)が陥れられると言う展開は、いかにも日曜劇場的だった。
御上先生 見どころ
東大卒のエリート文科省官僚である御上孝(松坂桃李)が、新規の官僚派遣制度により、事実上の左遷として私立高校「隣徳学院」へ出向し、高校3年生の担任として教壇に立つというドラマ。
- エリート官僚が教師に?異色の主人公
東大卒のエリート文科省官僚という、教師とはかけ離れた主人公が、突然高校の担任になるという設定が斬新。教育現場の常識とは異なる視点を持つ御上先生が、生徒や他の教師たちとどう向き合い、どんな化学反応を起こすのかが見どころ。彼の合理的思考や、官僚としての知識が、教育現場でどのように活かされるのか、あるいは通用しないのか。 - 松坂桃李の新たな教師像
松坂桃李がこれまでの熱血教師像とは一線を画す、クールで論理的ながらも、次第に生徒たちに心を開いていく御上先生を演じる。生徒一人ひとりの個性を冷静に見抜き、データに基づいた分析力で問題を解決しようとする新しいタイプの教師像である。 - 現代の教育システムへの問いかけ
官僚派遣制度や、教育現場の様々な問題(学校の財政、教員の評価システム、生徒の進路など)が描かれることで、現代日本の教育システム全体に切り込んでいる。既存のシステムに疑問を投げかけ、新たなアプローチで改革を試みる姿。 - 個性豊かな生徒たちと教師陣
悩みや個性を抱える生徒たちが御上先生との交流を通して成長していく姿。学校を運営する校長や他の教師たちとの関係性。 - 日曜劇場らしい骨太な人間ドラマ
TBS日曜劇場らしく、単なる学園ドラマに終わらず、登場人物たちの葛藤や成長、そして人と人との繋がりを深く描いた骨太な人間ドラマである
トリビア・撮影裏話など
- 完全オリジナルの脚本で制作されたことにより、結末や登場人物の展開が予測不能だった
- 松坂桃李は教育現場に関するリサーチだけでなく、文部科学省の官僚がどのような仕事をしているのかについても入念に調べたそう
- ロケ地となる高校のセットは、実際の学校の雰囲気を再現するために細部にまでこだわって作り込まれた
- 「東大卒のエリート官僚が担任」という異色の設定は、放送前から大きな話題に
御上先生 あらすじ
東大卒のエリート文科省官僚の御上孝(松坂桃李)。とある出来事を機に「日本の教育を変えてやろう」と文科省官僚になった御上だが、現実はほど遠いものだと気づく。「考える」力を身につけるための教育改革も名ばかりで、日本の中枢は改革どころか、自分たちの保身ばかりを考えている。さらには子供たちが未来を夢見る教育現場までも、大人の権力争いの道具に成り下がっていることに気づいていく。
そんな中、新たに設けられた官僚派遣制度によって御上に私立高校への出向が命じられる。実質、エリート官僚にくだされた左遷人事。しかし御上は、制度を作っている側にいても変えられない、ならば現場から声をあげ、制度の内部からぶっ壊せばいいと自ら教壇に立ち、令和の時代を生きる18歳の高校生を導きながら、権力に立ち向かっていく。
御上先生を観るには?
御上先生 キャスト
是枝文香(3年2組副担任) – 吉岡里帆
神崎拓斗(報道部部長) – 奥平大兼
富永蒼(神崎の幼馴染) – 蒔田彩珠
次元賢太(元数学部) – 窪塚愛流
槙野恭介(文科省官僚) – 岡田将生
溝端完(学年主任) – 迫田孝也
一色真由美(養護教諭) – 臼田あさ美
吉川智明(社会科・地理教師) – 上川拓郎
山添修(社会科・世界史教師) – 篠原悠伸
片桐敏也(校長) – 松角洋平
古代真秀(理事長) – 北村一輝
津吹隼人(御上の後輩) – 櫻井海音
塚田幸村(総合教育政策局局長) – 及川光博
中岡壮馬 – 林泰文
冴島悠子(元隣徳学院の教師) – 常盤貴子
真山弓弦(殺人事件の犯人) – 堀田真由
渋谷友介(被害者) – 沢村玲
戸倉樹 – 高橋恭平
御上先生 スタッフ
脚本協力 – 畠山隼一、岡田真理
音楽 – 鷺巣詩郎
主題歌 – ONE OK ROCK「Puppets Can’t Control You」(Fueled By Ramen / Warner Music Japan)
演出 – 宮崎陽平、嶋田広野、小牧桜
プロデューサー – 飯田和孝、中西真央、中澤美波
教育監修 – 西岡壱誠
学校教育監修 – 工藤勇一
製作著作 – TBS