ミス・ジコチョー〜天才・天ノ教授の調査ファイル〜ってどんなドラマ?
「失敗学」を専門とする天才工学者・天ノ真奈子が、さまざまな事故の裏側に隠された「失敗のメカニズム」を解き明かしていく、痛快かつ知的なミステリードラマ。松雪泰子演じる「私、失敗しちゃった」と笑う型破りな真奈子教授のキャラクターが鮮烈だった。脚本に『半沢直樹』の八津弘幸や『おっさんずラブ』の徳尾浩司が名を連ねており、専門的なテーマを扱いながらもエンターテインメントとしては完成度が高かった。
助手役の堀井新太との掛け合い、寺脇康文、余貴美子などベテラン勢が締める画面には安定感があった。
あらすじ
台風の落雷により化学プラントで停電が発生。予備電源も不具合が起こりタンクの冷却装置が作動しないため、非常手段として一酸化炭素が投入される。だがタンクの温度上昇は止まらず爆発が起こり、作業員の水上が死亡する。天ノは近隣の資材業者が取り扱うガスボンベが強風により倒れたことで爆発、タンクまで飛ばされて穴を開けたのではないかと仮説を立てる。再現実験の結果、ボンベの飛距離はタンクまで届くものではなかった。しかし、ボンベはタンクではなく一酸化炭素を送るパイプを直撃していたことが判明する。さらに、水上の業務報告書により、爆発事故以前から予備電源は故障していたことがわかる。採算を重視し修理を遅らせたことを後悔する工場の製造課長・増渕に、天ノは同じような失敗が繰り返されないためにも、このことを多くの人に伝えてほしいと説く。
キャスト
野津田燈(真奈子の助手) – 堀井新太
辻留志保(真奈子の秘書) – 須藤理彩
西峰郁美(真奈子の助手) – 高橋メアリージュン
南雲喜里子(国立工学創造センターのトップ) – 余貴美子
守康堅一郎(敏腕弁護士) – 寺脇康文
感想
失敗学(立花隆が命名したという)をベースにしたドラマで、初回ではハインリヒの法則などが連呼されていた。
それだけで10回も続くドラマになるのかと思うが、池井戸潤原作もので成功している八津弘幸らのオリジナルだから(共同脚本)、なにか勝算があるのだろう。
松雪泰子にリケジョの役を演らせるというのが盲点をついた感じだが、松雪自身はいつもの通りである。
ミス・ジコチョー〜天才・天ノ教授の調査ファイル〜における失敗学とは?
ヒロイン天ノ真奈子が専門とする「失敗学」は、実在する学問(監修の畑村洋太郎が提唱するもの)をベースにしている。
ドラマで描かれるエッセンスは、主に以下の3つのポイントに集約されている。
「失敗」を責めるのではなく「原因」を究明する
失敗が起きたとき、多くの組織は「誰がやったのか」という犯人探し(個人攻撃)に走りがちだが、真奈子は「人間は必ずミスをするもの」という前提に立つ。個人の責任を追及して終わるのではなく、なぜそのミスが起きるような状況(システム)になっていたのかを、工学的な視点で徹底的に分析する。
失敗の「知識化」と共有
ドラマで繰り返し語られるのは、「失敗を隠すと、より大きな失敗を招く」という教訓。
起きてしまった失敗を「不運」で片付けず、論理的に整理すること。
そのデータを広く公開することで、他の場所で同じ過ちが繰り返されないようにすること。
「失敗は成功の母」という言葉を、高度なデータ分析と論理によってシステム化したものが、真奈子の実践する失敗学だ。
「ハインリッヒの法則」と「局所的最適化」
劇中では、大きな事故の裏に潜む小さな予兆や、組織特有の力学についても触れられている。
ひとつは「ハインリッヒの法則」で、1つの大きな事故の裏には29の軽微な事故があり、さらにその裏には300の異常(ヒヤリハット)があるという考え方。各部署が「自分たちの範囲内」だけで効率を求めた結果、全体として致命的な欠陥が生まれてしまう「局所的最適化」も描かれる。
「私、失敗しちゃった!」
真奈子がこのセリフを笑顔で放つのは、失敗を認めることが「真実への第一歩」であり、それを隠蔽せずに受け入れることでしか新しい発見や進歩は得られないという信念(および、少しの変人ぶり)の表れでもある。
本作は、この「失敗学」というレンズを通すことで、単なる謎解きに留まらず、現代社会の組織の歪みや人間心理の弱さを浮き彫りにしている。



