犬神家の一族

シリーズ・横溝正史短編集　犬神家の一族（2020ドラマ）

『シリーズ・横溝正史短編集』はNHK BSプレミアムのテレビドラマシリーズ。原則として短編を原作とするが、本作のように長編『犬神家の一族』を29分の短編ドラマとして描いた回もあった。2020年1月18日から3週連続で放送。同年8月8日にはBSプレミアムにて『池松壮亮×金田一耕助』というタイトルで3作まとめて幕間にメイキングも加えた完全版が放送された。

感想

金田一（池松壮亮）以外が全員女優の「華やかな野獣」もかなりの珍作だったが、特筆すべきは、クソややこしい因縁話を最初から最後まで全員が和室に立ちすくんだまま原作通りに演じる、この「犬神家の一族」だった。
坂井真紀はじめ、中心人物は台詞（これは原作に忠実になっている）の多さに悲鳴をあげたとのこと。

舞台的演出とも言えるが、あれを30分でやろうという企画そのものがメチャクチャだと思う（終盤は訳の分からぬ役者たちのやり切った感が漲っていた）。

シリーズ・横溝正史短編集　犬神家の一族（2020ドラマ）　キャスト

シリーズ・横溝正史短編集　犬神家の一族（2020ドラマ）　スタッフ

犬神家の一族（2023ドラマ）

NHKが制作を手掛ける「金田一耕助」シリーズの第4弾として、2023年4月22日・4月29日にNHK BSプレミアム、NHK BS4Kで前・後編仕立てで放送された。24P製作。

感想

何度も映像化されているにもかかわらず（映画3本、ドラマ8本で、市川崑など2度も映画化している）、「八つ墓村」と同じで原作通りになった試しがなく、たとえば「犬神松子の琴の師匠は実は青沼菊乃」という設定は、なぜか一貫して無視されていたりする。
どの映像化作品でも、トリックのキモは青沼静馬と犬神佐清の入れ替わりなのだが、過去作の中には、2人が「別に似ていない」というものもあったようだ。

本作の大竹しのぶ（松子）は初めから仮面の男が佐清ではないことを知っていたことになっていて、「あの化け物」呼ばわりするのが印象的だが、この設定は1990年の長坂秀佳版と同じなのである。

長坂秀佳も、本作を書いた小林靖子も、特撮物で有名な人なのだが（小林は近年の岸辺露伴物で注目されている）、小林は本作の終盤10分に佐清の悪意を問うという思い切ったアレンジを加えていて、ぼんやり見ていると驚かされる。

ただし、古川琴音（野々宮珠世）と結婚するのだろう佐清は、それて財産を独り占めするわけなので、一連の行動に何らかの動機があったようには思われない。

原作も含めて象徴的なシーンは、湖に倒立する佐清（と見られる男）の死体なのだが、本作では事件が解決した後に死体が発見されているので、ヨキケスという判じ物が意味をなしていないのはどうなのか。

それにしても古川琴音のNHK出演が続くなあ（それだけの存在感を得ているとも言える）。大成しそうだ。

あらすじ

湖畔の広大な屋敷で、財界の大物・犬神佐兵衛の他界に伴う遺産相続争いが勃発する。松子（大竹しのぶ）ら3人の佐兵衛の娘たちが反目し合う中、湖を訪れていた探偵・金田一耕助（吉岡）の前で、佐兵衛の孫たちが謎の死を遂げてゆく。財界の大物・犬神佐兵衛の莫大な遺産を巡って起こる謎の連続殺人。第1、第2の殺人に続き、第3の事件が起こり、やがて一族の禍々しい過去が明らかになる。そして金田一らは、謎の日本兵の正体に迫っていく。

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