1980年代の映画映画1984年の映画

Wの悲劇

4.0
薬師丸ひろ子(Wの悲劇) 1980年代の映画
薬師丸ひろ子(Wの悲劇)
『Wの悲劇』は、1984年12月15日に公開[1]された日本の青春映画。監督は澤井信一郎。薬師丸ひろ子主演。

『Wの悲劇』ってどんな映画?

劇団の研究生としてトップを目指す女性が掴み取った主役の座は、残酷な舞台裏の取引の代償だった──ミステリの女王夏樹静子の原作小説を大胆に取り込み、荒井晴彦澤井信一郎監督が共同で脚本を執筆。虚構と現実、役者の業を剥き出しにした傑作。
見どころは、二十歳の女性・静華(薬師丸ひろ子)が本物の「大女優」へと脱皮していくドラマ。対する三田佳子が「苦労人の大女優」をみごとに演じ、さらに劇中劇の台詞が現実と重なり合って、物語は怒涛の展開へ。
世良公則が静香を純粋に愛し、支えようとする青年・森口昭夫を好演。静華は彼の思いにどう応えるのか。

薬師丸の透明な歌声が響く主題歌も素晴らしい、今なお輝く80年代の傑作だ。

あらすじ

劇団「海」の研究生・三田静香(薬師丸ひろ子)は、次回公演『Wの悲劇』のオーディションに落選し、端役とプロンプターを任されることに。ところが看板女優・羽鳥翔(三田佳子)のホテルの一室で、パトロンの堂原が情事の最中に腹上死するというスキャンダルが発生。羽鳥は「スキャンダルの身代わりになるなら、『Wの悲劇』の主役に推薦する」と静華に取引を持ちかける。静香は条件を飲み、パトロンと寝た愛人として警察の事情聴取を受けスキャンダルの矢面に立つ。そしてヒロインの座を手に入れ、見事な演技で観客を魅了し舞台は大成功を収めるが…

キャスト

三田静香(劇団「海」の研究生)[若い女中→和辻摩子] – 薬師丸ひろ子
森口昭夫(不動産屋) – 世良公則
羽鳥翔(劇団の大女優)[和辻淑枝、摩子の母親で与兵衛の姪] – 三田佳子
◼︎劇中劇に参加する人たち
五代淳[中里右京、和辻家の事件を捜査する警部] – 三田村邦彦
嶺田秀夫[和辻道彦、淑枝の二人目の夫で摩子の義理の父親] – 清水綋治
安恵千恵子[和辻みね、与兵衛の妻] – 南美江
城田公二[間崎鐘平、会長の主治医] – 西田健
小谷光枝[一条春生、摩子の家庭教師] – 香野百合子
佐島重吉[和辻与兵衛、和辻製薬会長]- 日野道夫
木内嘉一[和辻繁、与兵衛の弟] – 草薙幸二郎
水原健[和辻卓夫] – 堀越大史
林年子[女中頭] – 野中マリ子
◼︎その他劇団に関わる人たち
菊地かおり(劇団研究生)[和辻摩子→途中降板] – 高木美保
宮下君子(同) – 志方亜紀子
小川明子(同)[若い女中] – 渡瀬ゆき
日高(劇団主宰者) – 内田稔
森安(演出助手) – 渕野俊太
舞台監督(舞台監督) – 遠藤征慈
安部幸雄(演出家) – 蜷川幸雄
◼︎その他の人々
堂原良造(東宝デパート社長) – 仲谷昇
レポーター – 梨元勝福岡翼須藤甚一郎藤田恵子
将棋をさす老人 – 藤原釜足
テケツ嬢(切符売り場の係員) – 塚田聖見

感想

映画は、暗がりでの三田村邦彦薬師丸ひろ子の会話で始まる。
「…大丈夫?」
「…え?」
「いや、子供…」
「…大丈夫だと思います」
そこにタイトルが出る。
このシーンの意味は、二十歳の薬師丸が、特に感情もなく三田村に処女を捧げたということである。彼女はアパートに帰ると鏡で自分の顔をチェックし、「女らしくなった?」と井の頭公園のアヒルに問いかける。がに股で坂道を歩き、カレンダーに安全日を記し、一目惚れされた世良公則とも酔った勢いで簡単に寝てしまうという展開もあり、相米慎二からガキと呼ばれたアイドル的“子役”が大人の女優になる一作と言える(本作は84年12月公開で、一つ前の主演作は夏公開の「メイン・テーマ」(森田芳光)、その幕切れでヒロインは二十歳になる)。
ラストシーンの彼女がエンドクレジットが流れる数分間にストップモーションになっても、飽かずにそれを眺めていられるのには、観る側のそんな感慨というか、映画が決定的にそれを裏づけたのを見届けたという感動もある。これは澤井監督が意図した通りであり、薬師丸は非常に微妙な半泣き顔で監督の要求に応えた(ちなみにここで主題歌が流れるのだが[実は澤井監督のイメージではなかった]、試写会では客席が号泣の嵐となったという)。

本作にはいくつか有名な台詞があり、シナリオの7割を書いた荒井晴彦の仕事が素晴らしい(ただし、夏樹静子の原作を劇中劇に押し込める発想は澤井信一郎によるもの)。
10年前のことだが、角川映画40周年イベントの記念上映会が新宿であり、77歳の澤井信一郎と74歳の三田佳子がゲストとして登壇したのだが、普段出演作を観ないという三田は、人から勧められて本作を再見し、自身の演技に驚いたと語った。たとえば薬師丸をかばう長台詞のシーンで、嘘をつくうちに「女優としての演技に酔ってしまうという演技」は、たしかにみごとである。また腹上死した仲谷昇の死体の傍らでの長回しは、歩き回るのはおかしいと反対した三田を監督が説得することで実現したという。

繰り返される鏡のイメージといい、クライマックスの俯瞰シーンといい、記憶に残る名画である。

『Wの悲劇』を観るには?

『Wの悲劇』作品情報

監督 – 澤井信一郎
脚本 – 荒井晴彦、澤井信一郎
原作 – 夏樹静子『Wの悲劇』
製作 – 角川春樹
音楽 – 久石譲
主題歌 – 薬師丸ひろ子「Woman “Wの悲劇”より」
撮影 – 仙元誠三
編集 – 西東清明
製作会社 – 角川春樹事務所
配給 – 東映
公開 – 1984年12月15日
上映時間 – 108分

『Wの悲劇』の原作(夏樹静子)

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