映画1950年代の映画1958年の映画

巨人と玩具

4.0
野添ひとみ(巨人と玩具) 映画
野添ひとみ(巨人と玩具)
巨人と玩具は、開高健の小説(文學界1957年10月号掲載、1958年3月文藝春秋新社刊「裸の王様」所収)を原作として、1958年6月22日に大映にて映画化。1958年のキネマ旬報ベストテンの日本映画部門第10位。上映時間95分半。

巨人と玩具のあらすじ

キャラメルを主力商品とするワールド製菓株式会社では、売上の頭打ちに悩んでいた。原因は宣伝不足と決め付けた重役たちは、同業他社に抜きん出た宣伝活動を宣伝部に求めた。野心に燃える宣伝課課長の合田竜次は子供の興味の傾向に注目した宇宙を題材にした豪華景品を企画する。一方、無名の18歳・島京子をスカウト。京子はタクシー会社に勤める、虫歯だらけの女性だったが、有名写真家の春川純二の御機嫌を取って写真を撮らせ、マスコミ人脈を使って有名人にまつりあげる。
合田を尊敬する宣伝課の西洋介は、大学の級友の横山忠夫がいるライバル会社のジャイアンツ製菓に次のキャラメルの宣伝戦略を探る一方。 別のライバル企業であるアポロ製菓宣伝課の倉橋雅美と恋人になるが、お互いに次の宣伝戦略を探り合う関係になる。 ワールド、ジャイアンツ、アポロの3社が三つ巴になってキャラメルを売り出そうとするなか、ワールドは島京子を商品のイメージキャラクターとしてデビューさせるのだが、彼女は芸能界に慣れて取引をしてくるようになる。

巨人と玩具の感想

♪足音たてず刺し殺せ!
 足取り軽くぶち殺せ!
 ジャカボン ジャカボン、葬式だ!

と歌い踊る野添ひとみ川口浩夫人である)の、前半のマンガのような虫歯娘からの変貌ぶりが凄まじい(朝ドラ「ブギウギ」の趣里を通じて、笠置シズ子の「ジャングルブギー」の驚くべきステージフィルムを観たときに、この野添ひとみの曲を思い出した)

土人が云々という歌詞、高松英郎のヒロポン中毒など、高度成長期前夜(景気が悪いという台詞が繰り返されるが、朝鮮戦争特需が終わったというだけでGDPは年10%ずつ上がっており、この後60年代を迎えてオリンピックとともに東洋の奇跡と呼ばれるようになる)に、すでに高度資本主義に飲み込まれるサラリーマンを描いている点で興味深い。

巨人と玩具を観るには?

巨人と玩具のキャスト

西洋介: 川口浩

合田竜次: 高松英郎

島京子: 野添ひとみ

春川純二: 伊藤雄之助

倉橋雅美: 小野道子

矢代光平: 信欣三

横山忠夫: 藤山浩一

東隆三: 山茶花究

合田鈴枝: 町田博子

菊村須美子: 山川あい子

藤本みゆき: 堀込久子

中崎: 伊藤直保

松谷: 飛田喜佐夫

下村: 春本富士夫

南: 夏木章

北: 大山健二

秋村: 高村栄一

春岡: 伊東光一

冬崎: 花布辰男

夏木: 潮万太郎

乙骨: 高見貫

金子: 武江義雄

黒沢: 星ひかる

栄吉: 伊達正

キク: 村田扶実子

猿沢: 南方伸夫

岩崎: 目黒幸子

巨人と玩具のスタッフ

監督:増村保造

脚本:白坂依志夫

原作:開高健

製作:永田秀雅

巨人と玩具の原作(開高健)


とつじょ大繁殖して野に街にあふれでたネズミの大群がまき起す大恐慌を描く「パニック」。打算と偽善と虚栄に満ちた社会でほとんど圧殺されかかっている幼い生命の救出を描く芥川賞受賞作「裸の王様」。ほかに「巨人と玩具」「流亡記」。
工業社会において人間の自律性をすべて咬み砕きつつ進む巨大なメカニズムが内蔵する物理的エネルギーのものすごさを、恐れと驚嘆と感動とで語る。

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