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何がジェーンに起ったか?

4.0
ベティ・デイヴィス(何がジャーンに起こったか?) 映画
ベティ・デイヴィス(何がジャーンに起こったか?)
何がジェーンに起ったか?は、1962年に公開されたアメリカ合衆国の映画。原題は「What Ever Happened to Baby Jane?」。ヘンリー・ファレルによる小説を原作に、半身不随になった元映画スターの姉を元人気子役だった妹が家に監禁するサイコホラー。監督はロバート・アルドリッチ。主演はベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードで、ライバル関係かつ確執のあった二人の競演は当時話題を呼び、批評家の称賛を受け興行収入でも成功を収めた。

何がジェーンに起ったか?の感想

134分という尺はもちろん長すぎるのだが、ラストの衝撃と余韻を残すために、ロバート・アルドリッチはあえて無駄なシーンやシークエンスをカットしなかったのではないかと思わせる。

制作時点で二人の女優の不仲は周知のものだったから、これは大当たり間違いなしの企画だった。映画としてのオチは「私たち、仲良くしていられたはずだったのね」だが、現実では死ぬまで仲が悪かったという。女優たちがいかに壮絶な生き方をハリウッドで余儀なくされたかを描いたドラマ「フュード/確執」は、今どこかで見られるのだろうか。

何がジェーンに起ったか?の見どころ

本作は第35回アカデミー賞では5つの部門にノミネートされ、衣裳デザイン賞(白黒部門)を受賞。ベティ・デイヴィスは「これまでのキャリアを汚す」と周囲に反対されるほどの役づくりと怪演が功を奏し、主演女優賞にノミネートされた。近年は、カルト映画としての評価も高い。2021年、「文化的・歴史的・芸術的にきわめて高い価値を持つ」とみなされアメリカ国立フィルム登録簿に登録された。

本作はロバート・アルドリッチのフィルモグラフィーの中でも最も多く語られている作品であり、彼の演出スタイルとテーマ性が濃密に凝縮されている。

アルドリッチは常に権力・家族・社会の歪みに生きる“破綻した人間”を描いてきたが、本作では姉妹という最も親密な関係をモチーフに、依存・憎悪・狂気を描いている。
ジェーン(ベティ・デイヴィス)はかつての天才子役で、今はアルコールと妄想に取り憑かれた老女、ブランチ(ジョーン・クロフォード)はかつての大女優で、今は車椅子生活でジェーンに虐げられる。
観客が「善悪どちらの側にも完全に立てない」ように二人の過去と現在を絶妙に交錯させ、アルドリッチは人間関係の地獄絵図を構築したのである。

本作では、モノクロームの陰影が最大限活用され、古びた屋敷の不気味さと老いの恐怖が際立っている。特に屋内の狭い廊下、階段、暗い居間などは、ジェーンの精神における閉塞感を表しているが、ゴシック的な演出というわけではなく、リアルな老いの衰え・劣化として生々しく描写している。

そもそも、ベティ・デイヴィスとジョーン・クロフォードの確執は当時のハリウッドの有名なスキャンダルである。
アルドリッチはこれを逆手に取り、実際の“女優同士の憎悪”をキャラクターの関係性に重ねたのだ。
デイヴィスのジェーンは過剰に芝居がかった狂気を見せ、クロフォードのブランチは冷静さの裏にある屈辱をにじませた。
この演技の対比と緊張感が、映画全体に本物の緊張をもたらした。
ジェーンが「Baby Jane時代」の子供服を着て歌い踊るシーンや、ブランチの食事に“ペットのネズミ”を入れる残酷なジョークは、笑いを誘いながらも、観客に不安と嫌悪を呼び起こす。アルドリッチ的な“ユーモアの裏にある冷酷さ”による演出である。

ラストで、ブランチの“ある告白”が明かされる。これは全ての関係を逆転させるものであり、観客は、ジェーンの狂気を単純に非難できなくなる。「悪いのは誰だったのか」という問いを突きつける、一切の救いのない皮肉である。

アルドリッチはこの映画で、恐怖を“化け物”ではなく“老いた人間の心”に置いた。だからこそ『何がジェーンに起ったか?』は半世紀経っても古びないのである。

何がジェーンに起ったか?のあらすじ

ジェーン・ハドソンは6歳の人気子役で、ヴォードヴィルの舞台に立って愛らしい姿と歌で客を楽しませる「ベイビー・ジェーン」として喝采を浴び、常に特別扱いを受けていたが、公私にわたって妹の影に隠れ、誰にも省みられない姉のブランチは彼女に嫉妬していた。
大人になるとジェーンとブランチの立場は逆転。ブランチは実力派の映画女優としての評価を得るが、ジェーンの人気は過去のものとなり、仕事から外され、酒びたりになっていた。
そんなころ、ジェーンが自動車事故に遭い、嫉妬にかられブランチを轢き殺そうとしたと報じられた。ブランチは下半身不随となり、ジェーンは姉の面倒を見ることに。こうして表舞台から消えた姉妹だが、姉に対するジェーンの呪詛は消えず、ジェーンは姉の人生を支配する、醜く陰湿な暴君へと変貌していく。

何がジェーンに起ったか?を観るには?

何がジェーンに起ったか?のキャスト

ジェーン・ハドソン(英語版) – ベティ・デイヴィス
ブランチ・ハドソン – ジョーン・クロフォード
エドウィン・フラッグ – ヴィクター・ブオノ
エルヴァイラ・スティット – メイディ・ノーマン
ベイツ夫人 – アンナ・リー
デリラ・フラッグ – マージョリー・ベネット

何がジェーンに起ったか?のスタッフ

監督 – ロバート・アルドリッチ
脚本 – ルーカス・ヘラー
原作 – ヘンリー・ファレル
製作 – ロバート・アルドリッチ
製作総指揮 – ケネス・ハイマン
音楽 – フランク・デ・ヴォール
撮影 – アーネスト・ホーラー
編集 – マイケル・ルチアーノ
製作会社 – セヴン・アーツ・プロダクションズ
配給 – ワーナー・ブラザース
上映時間 – 134分
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