インベージョンは、2007年に制作されたアメリカ映画。原題は「The Invasion」。ジャック・フィニイのSF小説『盗まれた街』(原題:The Body Snatchers)の4度目の映画化作品。
インベージョンの感想
本作は「盗まれた街」の4度目の映画化で、ニコール・キッドマンが演じる精神科医のキャラクターはそのためにおざなりになっている。侵略者はDNAを書き換えるウィルスで、乗っ取りはコピー人間を作る形ではなく、ワクチンで元に戻る設定。感染が進行する中盤以降は汚いアクションシーンが続き、キッドマンもゲロを浴びて感染するが、レム睡眠中に乗っ取られるため、寝なければ無問題という都合の良さ。
午後ローで見たため8分ほどカットされており、急展開と謎のシーンが続く。終盤まで決着がつかずハラハラしたが、あっという間にハッピーエンドに。火だるまの車でビルの地下駐車場を走り抜けるシーンはぶっ飛んでいる。実は後半はウォシャウスキー兄弟が書き直して撮り直している。
ユニークなのは、感染が世界規模で広がるにつれ、紛争が解決し平和が実現していくこと。侵略によって人間が一つの存在になるためとされる。眠くてたまらないキッドマンの心が一瞬動くところが面白い。
キッドマンの患者ウェンディを演じるヴェロニカ・カートライトは78年版リメイク作の主要人物だった(役に立たない豆知識)。
「盗まれた街」の映画化タイトル
- SF/ボディ・スナッチャー(フィリップ・カウフマン、1978年)
- ボディ・スナッチャーズ(アベル・フェラーラ、1993年)
- インベージョン(本作)
インベージョン 見どころ
- 静かなる恐怖とパラノイア
本作は、宇宙人が地球に襲来して派手に破壊活動を行うようなSF映画ではない。見た目は全く変わらないのに、身近な人が「別人」になっていくという、じわじわと忍び寄る静かな恐怖を描くものである。誰が感染者で、誰がまだ人間なのか分からないという疑心暗鬼が心をじわじわと侵食する。「寝たら終わり」という設定も、睡眠への根源的な恐怖を煽る。 - ニコール・キッドマンの熱演
主演のニコール・キッドマンが、愛する息子を守るため、そして人類の未来のために必死で戦う母親を力強く演じる。極限状態での母親の強さ、感情を失わないことへの執着を表現する演技は見応えがある。 - 社会への示唆
原作「盗まれた街」は、時代ごとに様々な社会情勢を反映して映画化されてきた。本作も2000年代中盤の社会情勢(テロの脅威、情報社会における匿名性など)を背景に、人間が感情を失うことの意味や、個性が失われることの恐ろしさを問いかけていると解釈できる。感情を排除することで「争いのない平和な世界」が訪れるという皮肉なテーマも含まれている。 - サスペンスとアクションのバランス
心理的なサスペンスが中心だが、ニコール・キッドマンが感染者から逃げ惑うシーンや、息子を守るためのアクションシーンも適度に盛り込まれており、スリラーとしての緊張感を保っている。 - 現在の社会状況とのリンク(コロナ禍以降の評価)
コロナ禍を経て、未知のウイルスが蔓延して社会が変容していく本作は、より現実味を帯びている。感染が広がり、人々の行動が制限される様子が現実とリンクすると感じた人も多いようだ。
インベージョンのあらすじ
原因不明のスペースシャトル墜落事故が発生。空中分解したシャトルの破片には宇宙から飛来した未知のウイルスが付着しており、世界中で謎の感染症を引き起こす。ウイルスに感染すると、REM睡眠中に分泌されるホルモンをきっかけにして、人間らしい感情を失った別の何者かに変貌してしまう。周りの親しい者までもが次々と感染し発症していく中で、主人公キャロルは睡魔と闘いながら、解決の鍵を握る息子を探しに行く。
インベージョンを観るには?
インベージョンのキャスト
キャロル・ベネル – ニコール・キッドマン
ベン・ドリスコル – ダニエル・クレイグ
タッカー・カウフマン – ジェレミー・ノーサム
オリバー – ジャクソン・ボンド
スティーブン・ガレアーノ – ジェフリー・ライト
ウェンディ・レンク – ヴェロニカ・カートライト
ヘンリク・ベリチェク – ジョセフ・ソマー
リュドミラ・ベリチェク – セリア・ウェストン
ヨリッシュ – ロジャー・リース
リチャード・レンク – アダム・ルフェーヴル
オータム – マリン・アッカーマン
ベン・ドリスコル – ダニエル・クレイグ
タッカー・カウフマン – ジェレミー・ノーサム
オリバー – ジャクソン・ボンド
スティーブン・ガレアーノ – ジェフリー・ライト
ウェンディ・レンク – ヴェロニカ・カートライト
ヘンリク・ベリチェク – ジョセフ・ソマー
リュドミラ・ベリチェク – セリア・ウェストン
ヨリッシュ – ロジャー・リース
リチャード・レンク – アダム・ルフェーヴル
オータム – マリン・アッカーマン
スタッフ
監督 – オリヴァー・ヒルシュビーゲル
脚本 – デヴィッド・カイガニック、ウォシャウスキー兄弟
原作 – ジャック・フィニイ『盗まれた街』
製作 – ジョエル・シルバー
製作総指揮 – ロイ・リー、ダグ・デイヴィソン、スーザン・ダウニー、スティーヴ・リチャーズ、ロナルド・G・スミス、ブルース・バーマン
音楽 – ジョン・オットマン
撮影 – ライナー・クラウスマン
編集 – ハンス・フンク、ジョエル・ネグロン
製作会社 – ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ、シルバー・ピクチャーズ
配給 – ワーナー・ブラザース
アメリカ公開 – 2007年8月17日
上映時間 – 99分
脚本 – デヴィッド・カイガニック、ウォシャウスキー兄弟
原作 – ジャック・フィニイ『盗まれた街』
製作 – ジョエル・シルバー
製作総指揮 – ロイ・リー、ダグ・デイヴィソン、スーザン・ダウニー、スティーヴ・リチャーズ、ロナルド・G・スミス、ブルース・バーマン
音楽 – ジョン・オットマン
撮影 – ライナー・クラウスマン
編集 – ハンス・フンク、ジョエル・ネグロン
製作会社 – ヴィレッジ・ロードショー・ピクチャーズ、シルバー・ピクチャーズ
配給 – ワーナー・ブラザース
アメリカ公開 – 2007年8月17日
上映時間 – 99分
インベージョンの原作(ジャック・フィニイ)
アメリカ西海岸沿いの小都市サンタ・マイラで、奇妙な現象が蔓延しつつあった。夫が妻を妻でないといい、子が親を、友人が友人を偽物だと思いはじめる。はじめ心理学者は、時おり発生するマス・ヒステリー現象と考えていた。だがある日、開業医のマイルズは友人の家で奇怪な物体を見せられた。それは人間そっくりに変貌しつつある謎の生命体――宇宙からの侵略者の姿だったのだ! 奇才フィニイが放つ侵略テーマSFの名作。