ロストアイズの感想
もう20分短くできたら傑作になっていたかもしれないサスペンスで、前半はなぜか「サスペリア」のオマージュなのかと思わせる陰鬱な展開。登場人物が全員怪しく思えてくる中盤はそっくり要らんやろ。後半は随所にヒチコック的な伏線と描写がてんこ盛りになるのだが、クライマックスがかなりしつこく、犯人とヒロインのスタミナ勝負一騎打ちみたいになる。ホラーゲームはホラームービーの模倣だったわけだが、今は一周して映画がゲームを模倣していると思わされる。
ヒロインのベレン・ルエダは「だんだん失明していく」「ショックを受けると一気に視野が狭窄する」という映画的に都合の良い設定で、前半はトイカメラふうの主観ショット、手術して包帯の人になってからは、手で触れられる範囲のものしか映さないフレーミングで描写され、観客を引き込んでいく仕掛け。
犯人は「誰の目にも見えない男」なので(ロバート・ベンチリーのユーモアスケッチなどに出てくる「レストランに入ってもボーイが注文を取りに来てくれない男」だ)、これは窃視についての映画であると言える。見られないはずの犯人は見られた瞬間に存在意義を失うわけで(だから犯人は盲人に固執する)、見られない存在がもっぱら一方的に見る(犯人はヒロインの失明を自分の目で確認することしかできない)ということになるからだ。映画の中盤には、盲女たちの更衣室に迷い込んだヒロインが意図せずに女たちの噂話を盗み聞く興味深いシーンがあった。映画においては、見る側と見られる側の関係はつねに逆転の運動を内包しているのだ。
ロストアイズのあらすじ
フリアは先天性疾患で視力を失いつつあり、双子の姉サラが自殺したことに納得できず、盲人福祉センターへ。誰かに後を付けられ、視力がさらに衰える。サラの恋人の存在に疑いを深め、ホテルで情報を集める。使用人から鍵を渡され、恋人は透明人間のようだと聞く。監視カメラの映像をチェックしようとするが、夫イサクが消え、映像も持ち去られる。サラの恋人を覚えている証人も殺される。黒幕は恋人と確信し、老婦人ソレダドを訪ねると、彼女は夫と息子に捨てられたと話す。その後、失踪していたイサクが自殺し、フリアは視力を完全に失う。
ロストアイズを観るには?
ロストアイズのキャスト
イサク – リュイス・オマール
イバン – パブロ・デルキ
ディマス警部 – フランセスク・オレーリャ
クレスプロ – ホアン・ダルマウ
ソレダド – ジュリア・グチェレッツ・カーバ
ロストアイズのスタッフ
脚本 – オリオル・パウロ
製作 – ギレルモ・デル・トロ
製作 – ホアキン・パドロ、マル・タガローナ
撮影 – オスカル・ファウラ
音楽 – フェルナンド・ベラスケス
美術 – バルター・ガラート
編集 – ホアン・マネル・ヴィレシカ
衣装デザイン – マリア・レイジェス
音響効果 – オリオル・タラー