波瑠の素材感が光る(ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子の感想)
ブランコに乗った子役(「奇跡の人」の住田萌乃だ!)の傍らにしゃがみ、前後に揺れるその動きを見つめる波瑠の瞳が右に左にと正確に移動する。これが緊迫感のある特異なシーンになっているのは、素材としての波留の力が大きい。
初回はなんだかよくわからず(記憶能力のある設定というのは不要だったのでは?)、3話あたりからようやく面白くなってきた。「沙粧妙子 -最後の事件-」を思わせるなどという感想をどこかで読んだが、それを上回るマンガ的な猟奇事件が題材のわりには演出は地味である。脚本もイマイチなので、原作と波留が良いということなのかもしれない。
ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子の見どころ
本作は波瑠の素材感を“削り”、“焼き”、“試す”ようなドラマである。無垢でありながら異常に染まりゆくキャラクターを通じて、波瑠という女優の持つ「危うい透明感」の可能性を最大化した。『あさが来た』などの健全なイメージとのギャップが大きかったため、その振れ幅もまたドラマの異様さを増幅した。
波瑠の“無垢”が異常性を際立てる
波瑠が演じる藤堂比奈子は、新米刑事でありながら、殺人事件に過剰なまでの興味を示す「異常な好奇心」を抱えているという設定。この難役を演じる上で、女優としての波瑠の透明感と無垢さが決定的に作用している。
波瑠はもともとクールビューティーとも評される一方で、素の佇まいは非常にニュートラルでナチュラル。そこに「無垢であるがゆえに危うい」空気が漂います。つまり、何色にも染まっていない“素材”だからこそ、比奈子の異質さがよりリアルに、そして不気味に感じられる。
比奈子は「殺人犯を理解したい」という異常な動機を持っているが、波瑠が演じることでその異常さが現実味を帯びる。波瑠の持つ“普通の人”としての実在感によるもの。彼女のシンプルな所作、装飾の少ない顔立ち、過剰な芝居を排した演技は、比奈子を「異常だけど、どこかにいそうな人」として描き出す。
他の俳優が演じていたら「漫画的なキャラクター」になっていたと思われるが、波瑠という素材が持つ現実感が、比奈子の怖さを日常に引き寄せたのだ。
“素材感”の変質としての成長ドラマ
全体を通じて、比奈子は事件を追うたびに“異常”に近づいていく。その過程は、波瑠の「素材感」に微妙な陰影をつける作業と言える。最初は清廉な刑事然とした印象。しかし、物語が進むにつれて目の奥の光が微かに揺らぎ、声のトーンが変わり、表情にほんのわずかな“闇”が射すというように、演技の表層に“加工”が施されていく。
決して派手な芝居ではないが、波瑠という素材の質感そのものを微細に変化させる演出は、まるで無垢なキャンバスに少しずつ濃い色が滲んでいくような怖さがある。
ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子のあらすじ
警察学校を優秀な成績で卒業した新人刑事・藤堂比奈子は一見明るく真面目な態度で勤務しているが、心に深い闇を持っており、興味の対象は殺人犯が人を殺害する心の“スイッチ”の解明。個性豊かなメンバーと捜査をしながら、様々な性格を持った猟奇的犯罪者と対峙していく。はたして彼女の抱く疑問の答えは見つかるのか。
ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子を観るには?
ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子のキャスト
藤堂 比奈子 – 波瑠
東海林 泰久 – 横山裕
倉島 敬一郎 – 要潤
片岡 啓造 – 高橋努
清水 良信 – 百瀬朔
中島 保 – 林遣都
三木 健 – 斉藤慎二(ジャングルポケット)
川村 浩二 – 松川尚瑠輝
加藤 邦彦 – 是近敦之
西連地 麗華 – 伊藤麻実子
藤堂 香織 – 奥貫薫
早坂 雅臣 – 光石研
石上 妙子 – 原田美枝子
厚田 巌夫 – 渡部篤郎
藤川 – 不破万作
ゲスト
第1話
斉藤 文隆 – 山中崇
宮原 秋雄 – 清水優
小林 翔太 – 三浦貴大
鈴木 仁美 – 篠田麻里子
宇田川 早苗 – 柏原優美
早苗の父 – 朝倉伸二
伊勢崎 久留美 – 田鍋梨々花
第2話
霜川 幸三 – 螢雪次朗
霜川 由美 – 赤間麻里子
霜川 栄太 – 神農直隆
霜川 雄太 – 広瀬剛進
ケンジ – 間宮祥太朗
第3話
吉田 佐和 – 中島亜梨沙
吉田 遥香 – 住田萌乃
佐藤 都夜 – 佐々木希
二階堂 澄香 – 小島みなみ
永山 宗一郎 – 裵ジョンミョン
第4話
小野寺 誠 – 藤村直樹
第5話
久保 一弥 – 中林大樹
壬生 – 利重剛
戸川 京香 – 町田佳代
第6話
原島 宗徳 – モロ師岡
稲富 信吾 – 浜田晃
坂田 大吉 – 桜木健一
大崎 奈津子 – 今本洋子
西沢 – 大石吾朗
芙巳子 – 角替和枝
浦沢 清 – すわ親治
首藤 泰造 – 新川將人
山嵜 ちづる
浦沢清の娘 – 小橋めぐみ
第7話
原島の妻 – 松元那実
第8話・最終話
真壁 永久 – 芦名星
ドラマ ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子のスタッフ
企画協力 – KADOKAWA
脚本 – 古家和尚
音楽 – 菅野祐悟
主題歌 – [Alexandros]「Swan」(UNIVERSAL J / RX-RECORDS)
撮影 – 山中敏康
照明 – 鵜飼隆一郎
音声 – 福部博国
編集 – 矢野数馬
音響効果 – 寺岡基臣
オープニングタイトルバック – 熊本直樹(EDP)
美術プロデューサー – 秋元博
美術進行 – 向井大樹
特殊メイク – 田中真維
VFX – 高橋良明(キュー・テック)
スタイリスト – 田中トモコ(渡部担当)
警察監修 – 倉科孝靖
医療監修 – 中澤暁雄
アクションコーディネーター – 栗田政明(倉田プロモーション)
編集 – 刑部仁(関西テレビ)/稲葉直人(フジテレビ)
宣伝 – 安田宜義、姫野健太(関西テレビ)
広告 – 東田元(関西テレビ)
プロデューサー – 河西秀幸、萩原崇(関西テレビ)、石田麻衣(ホリプロ)
演出 – 白木啓一郎、宝来忠昭、大内隆弘
制作協力 – ホリプロ
制作著作 – カンテレ
キャスト/スタッフインタビュー
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ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子の原作
新しいタイプの警察小説の誕生! ホラー大賞読者賞受賞!
謎の連続自殺事件。被害者は、かつて自分が犯した殺人事件と同じ手口で死んでいく。事件を追う新人刑事・藤堂比奈子が出会ったおぞましい真実とは!? ホラー大賞読者賞受賞!