まだ観ていない方は、Amazon Prime Videoで今すぐ視聴できます。
名もなき毒の感想
国仲涼子(名もなき毒)
杉村三郎シリーズというのは、はからずも大企業の会長の娘(国仲涼子)と結婚してしまった男が平凡な人生のレールから外れ、結婚の条件として社内報広報室でさまざまな事件に巻き込まれるという枠組みの連作である。平幹二朗演じる強面の会長に頭が上がらず、庶子とはいえお嬢様金銭感覚の妻子にも会長の存在を透かして見てしまう杉村(小泉孝太郎)の異様に低姿勢な演技が見どころになっている。
ドラマ前半(原作の「誰か」に相当する)は会長の運転手の事故死事件にまったくの善意から取り組みながら、最終的に、運転手の美しすぎる遺族である深田恭子、南沢奈央、そして深田の婚約者など関係者全員から罵倒されるという結末に至る物語である。伊藤かずえ、池谷のぶえの演技が見もの。
後半(「名もなき毒」部分)は江口のりこが高身長を活かしてすごいモンスターを演じる話で、それが当時16歳の杉咲花の話に合流する最終回は圧巻である。私は江口という女優を知らなかったのでかなり驚き、同じ頃によく見るようになった安藤サクラと区別がつかず混乱したものだ(「野田と申します」などこの二人は共演が多い)。
この物語のユニークな点は、すべての登場人物が「今多コンツェルンの会長の娘婿」である小泉孝太郎に忖度している設定にある。単なる探偵の身分設定を越えた原作者のたくらみがあり、善良な男としてひたすら低姿勢を崩さない小泉がクライマックスで小さく爆発するシーンは手に汗握るものだった。
横山克の劇伴が素晴らしく、塚原あゆ子、金子文則の演出とのタッグはこの辺から始まっていたと言える。
名もなき毒 見どころ
- 宮部みゆきが描く「日常に潜む毒」
宮部みゆき作品ならではの、日常のささやかな出来事から、人間の心の闇や悪意が浮き彫りになっていく緻密な構成が魅力。直接的な暴力ではなく、言葉や感情、そして過去の出来事が、じわじわと登場人物たちを蝕んでいく「名もなき毒」の恐ろしさが描かれている。 - 小泉孝太郎の「杉村三郎」
温厚でお人好しに見える杉村三郎を、小泉孝太郎さんが演じる。事件の裏側に隠された人間の感情や社会の不条理に真摯に向き合いながらも、あくまで「普通のサラリーマン」として事件に関わっていくため、視聴者も彼の視点を通して感情移入しやすい。人間味あふれるキャラクターが重いテーマの物語に深みを与えている。 - 豪華かつ実力派のキャスト陣
国仲涼子(妻・菜穂子役)、南沢奈央(娘・聡美役)、室井滋(編集長・園田役)、高橋一生(秘書・橋本役)など豪華なキャスト陣の登場でドラマに引き込まれる。事件の被害者である聡美の同級生たち(福士蒼汰、杉咲花、岡本あずさなど)が演じる若者たちの葛藤も重要な要素。 - 現代社会の闇をえぐるテーマ
嫉妬、プライド、家庭内の不和、見栄や体裁といった現代社会に潜む普遍的な「毒」が、登場人物たちの間でどのように作用し、悲劇を生み出すのか。身近な悪意の形が提示される。 - 繊細な心理描写と人間ドラマ
ミステリー要素とは別に、登場人物たちの心情が非常に丁寧に描かれている点も魅力。それぞれが抱える葛藤、事件を通じて変化していく心の動きが感動を与える。
名もなき毒のあらすじ
今多コンツェルングループ広報室は、満足な仕事をこなせず、度重なるトラブルと軋轢を生みだすアルバイトの原田いずみを解雇したが、いずみが「広報室の社員達から嫌がらせやセクハラをされた」と嘘八百を並べ立て、訴訟を起こすという手紙を会長の嘉親宛てに送ってきたことから、三郎は嘉親の命で問題対処にあたることになる。詐称だらけのいずみの経歴の裏付けを取り始めた三郎は、その最中に過去にいずみを調べていたという私立探偵の北見一郎、北見の元を訪ねてきた女子高生・古屋美智香とその母・暁子と出会う。
暁子と美智香はさいたま市、横浜市、東京都で発生した連続無差別毒殺事件の第4の被害者の娘と孫だったが、被害者の繋がりが不透明なところもあり、暁子は警察から疑われており、古屋親子の関係はぎくしゃくしていた。三郎は、暁子達に親身になり、自らも事件の真相に近付いていくが、いずみの悪意が広報室全体を襲い、三郎個人に照準を定めていく。
名もなき毒を観るには?
名もなき毒のキャスト
江口のりこ(名もなき毒)
杉村菜穂子(三郎の妻・嘉親の娘・旧姓今多) – 国仲涼子
椎名遥(グループ広報室 編集アシスタント) – 岡本玲
手島雄一郎(グループ広報室 編集者) – ムロツヨシ
加西新(グループ広報室 編集者) – 森崎ウィン
谷垣太一(グループ広報室 副編集長) – 山崎大輔
園田瑛子(グループ広報室 編集長) – 室井滋
水田(喫茶「睡蓮」マスター) – 本田博太郎
杉村桃子(三郎と菜穂子の娘) – 矢崎由紗
杉村正子(三郎の母親) – 木野花
遠山美緒子(会長の第1秘書) – 佐藤直子
今多嘉親(今多コンツェルン 会長) – 平幹二朗
誰か Somebody(第1話 – 第5話)
梶田梨子(信夫・弥生の次女) – 南沢奈央
浜田利和(聡美の婚約者) – 高橋光臣
梶田弥生(信夫の妻) – 相築あきこ
野瀬祐子(トモノ玩具 元事務員) – 伊藤かずえ
卯月勝利(城東中央警察署 刑事) – 菅原大吉
梶田信夫(今多嘉親の専属運���手・自転車ひき逃げ事件被害者) – 平田満
杉村一郎(三郎の兄) – 犬飼若博(第1話)
杉村麻子(三郎の姉) – 村岡希美(第1話)
杉村真一(三郎の父親) – 野添義弘(第1話・第3話・最終話)
木内(「遊楽会館」スタッフ) – 長野里美(第1話)
田辺(三郎夫妻に派遣された家政婦) – 三谷悦代(第1話・第3話)
友野栄次郎(梶田信夫の前職場「トモノ玩具」元社長) – 織本順吉(第2話)
友野文子(栄次郎の義娘) – 池谷のぶえ(第2話)
久保(マンション「グレスデンハイツ石川」管理人) – 小宮孝泰(第3話)
工藤(「グレスデンハイツ石川」管理組合理事長) – 日野陽仁(第3話 – 第4話)
お婆さん(エプロンさんの母) – 久松夕子(第2話 – 第3話)
エプロンさん – 弘中麻紀(第3話)
関口(トモノ玩具元事務職の責任者) – 柳家小さん(第4話)
名もなき毒(第6話 – 第11話)
古屋美知香(暁子の娘・明俊の孫) – 杉咲花
原田いずみ(グループ広報室 編集アシスタント) – 江口のりこ(第5話 – 最終話)
秋山省吾(フリージャーナリスト) – 平山浩行
五味淵まゆみ(秋山の従妹・グループ広報室 編集アシスタント) – 中西美帆(第8話 – 最終話)
古屋明俊(連続無差別毒殺事件4人目の被害者) – 森次晃嗣(第5話 – 最終話)
奈良和子(明俊の愛人) – 烏丸せつこ
萩原弘(コンビニ「ララ・パセリ」店長) – 斎藤歩
外立研治(「ララ・パセリ」店員) – 君嶋麻耶(少年期 – 城戸恵斗)
萩原社長(弘の父親・萩原運送 社長) – でんでん(第8話 – 最終話)
芦田(警視庁刑事) – 大高洋夫
森川(警視庁刑事) – 井坂俊哉
近藤(所轄刑事) – 松本岳
北見一郎(探偵・元警察官) – 大杉漣
沼田(いずみの前職場だった編集プロダクション「ハードアクト」社長) – 新井康弘(第6話)
黒井寛治(今多物流 次長) – 矢柴俊博(第6話)
原田克也(いずみの父親・道友エンジニアリング札幌支社長) – 前田吟(第9話)
橋本(遠山の部下) – 平沼紀久(第9話)
松井(刑事) – 近江谷太朗
外立幸恵(研治の祖母) – 星野晶子(第10話・最終話)
ドラマ 名もなき毒のスタッフ
杉崎花(名もなき毒)
脚本:神山由美子
音楽:横山克
主題歌:近藤晃央「あい」(アリオラジャパン)
演出:塚原あゆ子、金子文紀、山本剛義、竹村謙太郎
音楽コーディネーター:溝口大悟、池田修平
演出補:村尾嘉昭、西野成亮、松丸博隆、大宮いろは
タイトルCG:岸本威
CG:田中浩征、井田久美子、中村淳
スタントコーディネーター・擬闘:高槻祐士、カラサワイサオ
法律監修:関秀忠
医療監修:横井宏和
映像提供:ブレーントラスト
企画協力:河野治彦
制作:那須田淳
チーフプロデューサー:橋本孝
プロデューサー:鈴木早苗、橘康仁
プロデューサー補:吉村剛弘、相羽めぐみ
制作協力:ドリマックス
製作著作:TBS
『名もなき毒』は、単なる犯人探しに終わらない、人間の心の奥底にある「毒」と、それが引き起こす悲劇を深く考えさせる、骨太な人間ドラマでありミステリードラマです。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。
名もなき毒の原作(宮部みゆき)
今多コンツェルン会長・今多嘉親の個人運転手・梶田信夫が自転車にはねられ死亡した。コンツェルンのグループ広報室編集者で嘉親の娘婿の杉村三郎は、嘉親に頼まれて、ひき逃げ犯逮捕のきっかけになればと、父の伝記を書きたいという梶田の2人の娘に協力することになる。
伝記に意欲的な妹の梨子とは対照的に、姉の聡美は父の過去があまり褒められたものではないと言い、自身が幼少期に父を憎む何者かに誘拐されたことを理由に、梶田の半生が公になることを怖れ、伝記出版に反対した。
三郎は梶田の過去を調べつつ、梨子や広報室アルバイトの椎名と共に、ひき逃げ犯に関する情報集めにも力添えするが、梶田の過去から意外な波紋が投げかけられることになる。