シグナルの感想
「ボイス2」を見た後、Netflixに続きがないので、気になっていた日本版「シグナル 長期未解決事件捜査班」のリメイク元を見た。
途中で日本版を見直したりしたので膨大に時間がかかったのだが、最終的にはチョ・ジヌンを主人公に据えた本作の方がやはり面白かった。
北村一輝もかなりいいのだが、日本版はやはり坂口健太郎を主人公にせざるを得ず、そうすると吉瀬美智子とキム・ヘスを比べることになるので、吉瀬はまたしても後塵を拝したことになる。
韓日版を比較すると、日本版はクライマックス前までは原作に忠実であるものの、その先は一気に2.5事件分くらいをカットしている。韓国版は16話もあって間延びしているのは確かだが、キム・ヘスとチョ・ジヌンの交流エピソード部分がカットされたので、反芻される「もうすぐ解決する。週末には返事するから」というチョ/北村一輝の台詞が日本版では意味不明なものになってしまった。
そもそも、チョ/北村が死んでから無線機を介したドラマが始まるので(その後なぜか通信が再開して話が続く)、単に並行した過去と現在を描くわけではなく(現在の数週間が過去の数年になったりする)、中心設定には恣意的な非対称性がある。だから、チョ/北村の死をなかったものにしようとするクライマックスは完全に(タイム?)パラドクスの裡にある(死を回避させるための通信が原因で死ぬ)。
このへん、パクリ元と言われるアメリカ映画「オーロラの彼方へ」(2000年)やそのリメイク版アメリカドラマ「シグナル/時空を超えた捜査線」ではどうなっているのか、未見のためわからないのだが…
シグナル 見どころ
時空を超える無線通信を軸に、未解決事件の真実と人命を救う“ヒューマン・タイムリープ・スリラー”。
- 過去と現在を繋ぐ“無線×時代超越”の構造
主人公の刑事パク・ヘヨン(イ・ジェフン)が発見した無線機を通じて、1990年代の刑事イ・ジェハン(チョ・ジヌン)らと直接交信。過去の事件を変えることで、現在の悲劇を回避していく“因果逆転ミステリー”構成は、サスペンスの常識を超える新鮮さ。
単なる事件解決ではなく、「時間を変えることが倫理的に許されるのか」という重いテーマを自然に内包している。 - 個人の痛みと希望に寄り添うヒューマンドラマ
各エピソードは“一件ごとの事件”でありながら、被害者や捜査陣の“深い悲しみと救済の物語”が丁寧に描かれる構造。パク・ヘヨンとイ・ジェハン間の信頼、チームリーダー・チャ・スヒョン(キム・ヘス)の13年にも及ぶ弟子への愛と喪失。冷徹な時空犯罪劇ではない、人間同士の“温かさ”が核心にある。 - 実在事件モチーフと緻密な脚本の融合
韓国を揺るがした「華城連続殺人事件」をはじめ、数々の実話事件を大胆に脚色し構成に組み込んでいる。脚本家キム・ウンヒによる“細部にまで渡る構成力と伏線回収”は見事で、最後まで集中して観させる説得力がある。 - 演技力に裏付けされたキャラクター描写
チョ・ジヌンは90年代の正義感あふれる刑事像を瑞々しく、イ・ジェフンは理性的ながらも激情を抱えた現代の捜査官、キム・ヘスは静かに深く献身的なリーダー像など、名演技が世界観に説得力を与える。 - 社会現象としての“ミセン・シンドローム”ならぬ“シグナル・フィーバー”
ケーブルドラマとしては異例の平均10%超、最高12.5%の視聴率を記録し、社会現象化。日本や中国でも高い評価を受け、2018年には日本でリメイク、2025年には待望の続編ドラマが製作される。
シグナルのあらすじ
警察のプロファイラー・パク・ヘヨンはある日、15年前の未解決事件を追うイ・ジェハン刑事から、壊れた無線機を通じてその未解決事件の有力な手がかりを教えられる。時効まであと数日のところでかつてのジェハンの後輩・チャ・スヒョン刑事と共に事件を解決することに成功。その後もヘヨンはジェハンと交信を続けていくうちに、彼が過去の人間であることに気付く。一方でスヒョンは、15年前に失踪したジェハンの行方を捜し続けている。
シグナルを観る
シグナルの作品情報
脚本 – キム・ウニ
演出 – キム・ウォンソク、イ・ソンジュン、キム・エジ
製作・制作 – スタジオドラゴン、ASTORY
製作 – CJ ENM
放送 – tvN
放送期間 – 2016年1月22日-3月12日
回数 – 16