1976年公開のアメリカ映画。原題は「Taxi Driver」。監督マーティン・スコセッシ、脚本ポール・シュレイダー、主演ロバート・デ・ニーロというゴールデントリオによる作品の嚆矢であり、この後、同じ組み合わせによる作品が複数制作された。製作はマイケル・フィリップス、ジュリア・フィリップス。コロムビア映画配給。第29回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品。また、1994年にアメリカ議会図書館がアメリカ国立フィルム登録簿に新規登録した作品のひとつ。
タクシードライバーのあらすじ
ニューヨーク。トラヴィス・ビックル(ロバート・デ・ニーロ)は、ベトナム戦争帰りの元海兵隊員で、不眠症のためタクシー会社に就職。社交性に欠け、同僚たちからは守銭奴とあだ名されるトラヴィスはポルノ映画館に通ったりマンハッタンを当てもなく運転したり、孤独の中にいたトラヴィスは、麻薬と性欲に溺れる若者たちや盛り場の退廃ぶりに嫌悪を示していた。ある日トラヴィスは次期大統領候補チャールズ・パランタイン上院議員の選挙事務所に勤務するベッツィー(シビル・シェパード)に魅かれ、デートに誘うが、デートでポルノ映画館に入ったたえふられてしまう。
トラヴィスの心はすさんでいく一方だったが、そんな中タクシーに幼い少女が逃げ込んできたことをきっかけにある決断をする。拳銃を4挺の仕入れ、射撃の訓練となまった肉体の強化に励んだ。トラヴィスは食料品店で強盗に入った黒人を撃ち、いつかの少女アイリス(ジョディ・フォスター)と会って。売春で稼ぎ学校にも行かない生活をやめるように説得した。
やがてパランタインの集会に現れたトラヴィスはモヒカンにサングラスをかけており、シークレット・サービスに怪しまれて逃げ去った。その夜、トラヴィスは、アイリスのヒモ、スポーツ(ハーヴェイ・カイテル)を撃ち、見張り役や用心棒、売春の元締めを立て続けに射殺。自らも重傷を負い、駆け付けた警官の前で昏倒する。
マスコミは彼を少女を裏社会から救った英雄として祭り上げ、アイリスの両親からも感謝の手紙が来た。ある夜、路上で会社の同僚と話していたトラヴィスの車にベッツィーが乗り込んだ。彼は彼女を降ろしたあと、夜の街に向けてタクシーを走らせる。
タクシードライバーの感想
何度か見ているが、ウン十年ぶりの再見。
意外と細かいところまで覚えていたが(大学時代に「Are you talking to me?」と真似をしていた友人がいたことも思い出した)、これがバーナード・ハーマンの遺作であるとは知らなかった。当初ハーマンは「なぜタクシー運転手の映画の曲を書かなきゃならないんだ?」と断ったそうだが、素晴らしいスコアである。
不貞中の妻の殺害を仄めかす客がスコセッシだと知ったり、スリーブガン(スライドして手に収まるワルサー)の仕組みなどもわかったりするので、ネット時代とはいかにも便利。
デ・ニーロとジョディ・フォスターの視線の高さ(ハーヴェイ・カイテルとの違い)なども興味深いのだが、やはりヤクザ映画を意識したクライマックスの畳みかけが秀逸である。
デ・ニーロはシビル・シェパードをポルノ映画館に連れていって軽蔑されるのだが、あれはトラヴィスがいつも行く(この撮影が縁でデ・ニーロと結婚したダイアン・アボットが受付をしている)場末の映画館ではなく、かなり高級な劇場で、トラヴィスとしては張り込んでいることがわかる。
トラヴィスは死んでいてラストシークェンスは「ありえたかもしれない未来」の描写だとする説、そもそも襲撃自体がトラヴィスの幻想である説などもある。スコセッシは続編を構想していたと言う。
タクシードライバーのキャスト
トラヴィス・ビックル – ロバート・デ・ニーロ
ベッツィー – シビル・シェパード
アイリス – ジョディ・フォスター
スポーツ – ハーヴェイ・カイテル
ウィザード – ピーター・ボイル
トム – アルバート・ブルックス
パランタイン上院議員 – レナード・ハリス
ポルノ映画館の売店の女 – ダイアン・アボット
イージー・アンディ(銃のセールスマン) – スティーヴン・プリンス
タクシーの客 – マーティン・スコセッシ
ドーボーイ – ハリー・ノーサップ
メリオ – ヴィクター・アルゴ
タクシー会社の受付 – ジョー・スピネル
シークレットサービス – リチャード・ヒッジス
強盗に入る黒人 – ナット・グラント
タクシードライバーのスタッフ
監督 – マイケル・フィリップス、ジュリア・フィリップス
音楽 – バーナード・ハーマン
撮影 マイケル・チャップマン
編集 トム・ロルフ
配給 コロムビア映画
公開 アメリカ 1976年2月8日 日本 1976年9月18日
上映時間 114分