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ラストシーンをどう解釈するか?(タクシードライバーの感想)
何度か見ているが、ウン十年ぶりの再見。
意外と細かいところまで覚えていたが(大学時代に「Are you talking to me?」と真似をしていた友人がいたことも思い出した)、これが バーナード・ハーマン の遺作であるとは知らなかった。当初ハーマンは「なぜタクシー運転手の映画の曲を書かなきゃならないんだ?」と断ったそうだが、素晴らしいスコアである。
不貞中の妻の殺害を仄めかす客が スコセッシ だと知ったり、スリーブガン(スライドして手に収まるワルサー)の仕組みなどもわかったりするので、ネット時代とはいかにも便利。
参考: 飛び出せコルト!~自作スリーブガン製作記2~(これは遊びだ!マジでヤレッ!!)
デ・ニーロ と ジョディ・フォスター の視線の高さ(ハーヴェイ・カイテル との違い)なども興味深いのだが、やはりヤクザ映画を意識したクライマックスの畳みかけが秀逸である。
デ・ニーロは シビル・シェパード をポルノ映画館に連れていって軽蔑されるのだが、あれはトラヴィスがいつも行く(この撮影が縁でデ・ニーロと結婚した ダイアン・アボット が受付をしている)場末の映画館ではなく、かなり高級な劇場で、トラヴィスとしては張り込んでいることがわかる。
トラヴィスは死んでいてラストシークェンスは「ありえたかもしれない未来」の描写だとする説、そもそも襲撃自体がトラヴィスの幻想である説などもある。スコセッシは続編を構想していたと言う。
タクシードライバー 見どころ
マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演によるアメリカン・ニューシネマの代表作。都市の孤独と狂気を描いた心理ドラマである。ベトナム戦争帰還兵であるタクシードライバー、トラヴィス・ビックルの内面世界と暴力への傾倒を通じて、1970年代のアメリカ社会の病理を浮き彫りにした。都市の孤独と狂気、そして暴力の正当化というテーマを通じて、観客に深い問いを投げかける。一般的な評価としては、「主人公の孤独と狂気が魅力的」「ネオン輝くアメリカの濁った街の風景が印象的」「ジョディ・フォスターの美しさが救い」「ロバート・デニーロの演技が素晴らしい」「自分の正義を貫こうとするとき、人は誰しもが孤独になる」など。主人公の行動や物語の展開に共感できないという人もいるが、映画史において重要な位置を占めており、その影響は映画だけでなくポップカルチャー全般に及んでいる。
- 考察その1. 孤独と疎外感の象徴としてのトラヴィス
トラヴィスは、社会から孤立し、精神的に不安定な状態にある人物。内面の独白や行動は、都市生活の中での孤独や疎外感を象徴する。彼が視るニューヨークの街は、腐敗と堕落に満ちた場所だが、それは彼の精神状態を反映したもの。 - 2. サイコパス的傾向と暴力への傾倒
トラヴィスの行動はサイコパス的な傾向を示しており、内面の混乱と怒りが暴力として噴出している。自らの正義感に基づいて行動し、最終的には暴力によって自己を証明しようとする。 - 3. メディアによる英雄化と皮肉
終盤、トラヴィスは暴力的な行動によってメディアから英雄として扱われる。社会が暴力を容認し、時には称賛することへの皮肉である。彼の行動が正当化される過程が道徳的なジレンマとなっている。
タクシードライバーのトリビア
映画史に残る伝説的なトリビアの代表的なものを厳選して紹介しよう。
- 名シーンである、主人公トラヴィス・ビックルが鏡の前で銃を抜くシーンのセリフ「You talkin’ to me?」は、デ・ニーロの即興アドリブ。脚本には一切書かれておらず、スコセッシも驚いたという伝説的瞬間である。
- 脚本家ポール・シュレイダーは、戦争のPTSDでうつ状態で孤独だった時期にこの脚本を一気に書き上げた。失業、離婚、孤独、ポルノ映画館に通う日々など、当時の彼の私生活がトラヴィスの原型になっている。
- クライマックスの銃撃シーンは非常に流血が多く、MPAA(映画倫理機関)の格付けでX指定を避けるため、血の色を褐色に加工した。監督のスコセッシは「むしろアートっぽくなって気に入っている」と語っている。
- 少女売春婦アイリスを演じたジョディ・フォスターは**撮影当時わずか12歳。性的な描写のあるシーンについては、フォスターの実姉がボディダブルを務めた。
- スコセッシが依頼した音楽担当は、ヒッチコック作品で知られる名作曲家バーナード・ハーマン。ハーマンは映画のスコア録音を終えた翌日に亡くなっており、『タクシードライバー』が遺作となった。
- この映画に感化された男(ジョン・ヒンクリー・ジュニア)が、1981年にレーガン大統領暗殺未遂事件を起こしたとされる。彼は「ジョディ・フォスターに気を引きたかった」と供述しており、映画と現実が危険な形で結びついた事件として有名になった。
- 本作は1976年カンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールを受賞。当時はその過激な内容が物議を醸したが、映画史に残る名作として高く評価された。
デ・ニーロは役作りのため、実際に偽名で約1か月、ニューヨークでタクシードライバーとして働いていた。普通の客も乗せていたとのこと。
タクシードライバーのあらすじ
タクシードライバーを観るには?
タクシードライバーのキャスト
ベッツィー – シビル・シェパード
アイリス – ジョディ・フォスター
スポーツ – ハーヴェイ・カイテル
ウィザード – ピーター・ボイル
トム – アルバート・ブルックス
パランタイン上院議員 – レナード・ハリス
ポルノ映画館の売店の女 – ダイアン・アボット
イージー・アンディ(銃のセールスマン) – スティーヴン・プリンス
タクシーの客 – マーティン・スコセッシ
ドーボーイ – ハリー・ノーサップ
メリオ – ヴィクター・アルゴ
タクシー会社の受付 – ジョー・スピネル
シークレットサービス – リチャード・ヒッジス
強盗に入る黒人 – ナット・グラント
タクシードライバーのスタッフ
脚本 – ポール・シュレイダー
製作 – マイケル・フィリップス、ジュリア・フィリップス
音楽 – バーナード・ハーマン
撮影 マイケル・チャップマン
編集 トム・ロルフ
配給 コロムビア映画
公開 アメリカ 1976年2月8日 日本 1976年9月18日
上映時間 114分
『タクシードライバー』は、都市の孤独と狂気、そして暴力の正当化というテーマを通じて、観客に深い問いを投げかける映画です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。