波の塔(2012年のドラマ)

羽田美智子(波の塔)
羽田美智子(波の塔)

松本清張の長編小説(『女性自身』1959年5月29日号~翌年6月15日号連載、1960年6月カッパ・ノベルス刊)。人妻と青年検事の恋愛とその行方を描く、著者の代表的長編恋愛ロマン。1960年に松竹で映画化、また8度テレビドラマ化されている。
本作「松本清張没後20年特別企画 ドラマスペシャル 波の塔」(2012年6月23日21:00-23:06、テレビ朝日系列にて放映)は、踊り子の殺人事件を発端に設定。視聴率12.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

清張が「女性自身」の部数を急増させたロマンス物で、1960年に書籍化されるや、本をバッグに忍ばせて青木ヶ原で自殺する女性が増えたといういわくつきの小説である。深大寺そばを有名にした作としても知られる。

冒頭に取ってつけたような殺人があるだけで、全編、沢村一樹羽田美智子の奥ゆかしい不倫ストーリーで、上記の事情を意識して見ないと、冗漫かつ唐突で意味不明なドラマになっている(クライマックスの沢村の錯乱など)。

映画化1回、ドラマ化8回。映画は有馬稲子津川雅彦(1960)、ドラマは池内淳子(1961)、村松秀子(1964)、桜町弘子(1970)、加賀まりこ(1973)、佐久間良子(1983)、池上季実子(1991)、麻生祐未(2006)に続いて本作が羽田美智子(2012)。お相手である沢村一樹の二枚目ぶりは初代の津川雅彦に匹敵するかもしれない。

東京オリンピックを4年後に控えて建設ラッシュ只中の東京が舞台で、建設省汚職に暗躍する公共事業ブローカー(むちゃくちゃ怪しい鹿賀丈史)の妻が羽田、それを追う若き検事が沢村。羽田は44歳で作中年齢を大幅にオーバーしているのだが、和装も洋装も見映えが良いのでまあ適役なのだろう。鹿賀は佐久間美子版で検事役をやっているせいか、終盤でいい味を出している(鹿賀の演じたブローカーは山崎努が演じた)。

二人は事件と関係なく青木ヶ原で出会い(死体発見現場を検分に来た沢村はともかく、一介の人妻の羽田がそんなところにいるのは変なのだが、当時は観光地だったのだろうか)、あちこちで距離を縮めていくのだが、二人の関係を追う市川由衣(「女性自身」読者層に合わせて清張が設定したキャラクターならん)の出番が途中でなくなっており、これも意味不明になっている。

あとは、吉田羊が出ていたのと、蟹江敬三のナレーションが良かった。

新装版 波の塔 上下巻 セット

新装版 波の塔 上下巻 セット

松本清張 波の塔(映画版)PrimeVideo

松本清張 波の塔(映画版)PrimeVideo

キャスト

小野木 喬夫 (42) – 沢村一樹
黒田 頼子 / 結城 頼子 (30) – 羽田美智子
石井 哲夫 – 佐野史郎
田沢 輪香子 – 市川由衣
田沢 美子 – 山下容莉枝
蝶丸 / 西岡 蝶子 – 遊井亮子
常子 – 高橋かおり
土肥 正治 – 隆大介
田中 正春 – 中村育二
佐藤 – 柏原収史
辺見 博 – モロ師岡
柴原 五郎 – 正名僕蔵
梨本 秀雄 – 小松和重
山本 芝夫 – 吉満涼太
本木 正男 – 田村三郎
笹尾 毅 – 平泉成
アケミ – 吉田羊
佐々木 和子 – 広山詞葉
杉浦 靖文 – 川鶴晃裕
寺島 シゲ子 – 松島柴代
西村 – 峰蘭太郎
妙子 – 宍戸美和公
たつえ – 鷲尾真知子
小山 – 山根誠示
立花 – 崔哲浩
源田 清三 – 小松みゆき福本清三高橋知代宇谷玲芹沢礼多大沼百合子三浦憲世渋谷めぐみ幸世 ほか

スタッフ

原作 – 松本清張 「波の塔」(文春文庫刊)
脚本:竹山洋
監督:佐々部清
助監督:山本亮
音楽:加羽沢美濃
録音:松陰信彦
CG:キルアフィルム
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:藤本一彦(テレビ朝日)、三輪祐見子(テレビ朝日)、河瀬光(東映)、小野川隆(東映)
ラインプロデューサー:廣田成人
プロデューサー補:新井富美子
音楽協力:テレビ朝日ミュージック
撮影協力:ウェスティン都ホテル京都、二尊院、京都府立植物園、京都文化博物館、国立京都国際会館、滋賀県、大津市、びわ湖大津館、琵琶湖汽船、龍谷大学、交通科学博物館、嵐山高雄パークウェイ、京福電気鉄道 ほか

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