インフィニティ・プール

ミア・ゴス(インフィニティ・プール)
ミア・ゴス(インフィニティ・プール)

2023年製作、2024年4月5日劇場公開。原題は「Infinity Pool」。「アンチヴァイラル」「ポゼッサー」など独自の世界観を持つ作品でカルト的人気を集める鬼才ブランドン・クローネンバーグ監督の長編第3作。2023年製作、2024年4月5日劇場公開。「アンチヴァイラル」「ポゼッサー」など独自の世界観を持つ作品でカルト的人気を集める鬼才ブランドン・クローネンバーグ監督の長編第3作。「ノースマン 導かれし復讐者」のアレクサンダー・スカルスガルドが作家ジェームズ、「X エックス」「Pearl パール」のミア・ゴスがガビを演じ、「タクシー運転手 約束は海を越えて」「戦場のピアニスト」のトーマス・クレッチマン、「月影の下で」のクレオパトラ・コールマン、「イヴ・サンローラン」などの作品で監督としても活躍するジャリル・レスペールが共演。

インフィニティ・プールのあらすじ

スランプ中の作家ジェームズと資産家の娘である妻エムは、高級リゾート地として知られる孤島へバカンスにやって来る。ある日、ジェームズの小説のファンだという女性ガビに話しかけられた彼らは、ガビとその夫と一緒に食事をすることに。2組の夫婦は意気投合し、観光客は行かないよう警告されていた敷地外へとドライブに出かける。実はその国には、観光客は罪を犯しても自分のクローンを身代わりにすることで罪を逃れることができるという恐ろしいルールが存在しており……。

精神崩壊の様を描く観光ディストピア映画(インフィニティ・プールの感想)

映画は、リ・トルカ島なる高級リゾートホテルで、ジェームズと妻が目覚めるところから始まる。6年前に小説を出版したがその後は書けなくなったジェームズが、新作の構想を練るために島を訪れているとのこと。エムの父は出版社の経営者であり、財政的にはヒモ状態である。
二人はビーチでアルバンとガビという夫婦と知り合う。アルバンは建築家、ガビはCM女優で、ジェームズの小説を読んだことがあり、素晴らしかったと褒められて、ジェームズは喜ぶ。

次の日、4人はキャディラックを借りて島をドライブへ。ホテルはなぜか鉄条網に囲われており、オープンカーからは島民たちの生活が垣間見える。美しいビーチで過ごして帰りは夜になり、運転を代わったジェームズは道を横切った島民をはねて殺してしまう。ジェームズは動転して警察を呼ぼうとするがアルバンたちはをれを止め、4人は深夜ひっそりとホテルに戻る。

ところが翌朝、ジェームズは警察に連行。島の法律により、被害者である息子に処刑されることになる。しかし大金を払えばその刑をクローンに身代わりしてもらえるという(そうした条項があることが島の観光を振興させている外交政策なのだ)。

かくしてジェームズは自分のクローンの処刑を目撃することになり、事態の異常さにおそれをなした妻は逃げ帰ってしまう。ジェームズはなぜかパスポートをなくしたためにとり残され、アルバン&ガビに唆され、ドラッグ(島の怪しい麻薬)と酒、島の祭祀に用いられるフランシス・ベーコン的な仮面などに耽溺して、夢とも現実とも知れぬセレブとの果てしないどんちゃん騒ぎにのめり込んでいくのだが…

という話で、ジェームズが(アルバンやガビも)どこかの時点でクローンと入れ替わったように見えるが、実はコンプレックスによって精神崩壊していく過程を描いているとおぼしい。妻がいなくなった彼はただの文無しで、帰国すればちゃんとした仕事のあるセレブたちとは身分が違う。実はパスポートをなくしたというのも嘘だと最後にわかるとおり、彼は自らの意思でこの悪夢に足を踏み入れていくのである。

ガビを演じているのは、つねに眉毛がない ミア・ゴスラース・フォン・トリアーに見出された女優で、悪夢に出てくるサディストの顔をしていて怖い。

本作は ブランドン・クローネンバーグの3作目だが、彼自身が、父 デヴィッドの影響から逃れられない悪夢の中にいるのではないかと思ってしまう。ひとつ前の「 ポゼッサー」(2020)は他人の意識に入り込み危険なミッションに挑む工作員の話とのことで、それだけ聞くと「偶然世界」( ディック)や「分解された男( ヴァン・ヴォクト)のようなメタSFを期待するが、監督の興味はおそらく破壊されていく人間の描写にあるので、予想外の直視しがたい映像になっていると予想する。

本作の舞台となっているリ・トルカ島はもちろん架空のリゾートだが、監督はドミニカ共和国で、同じように観光客エリアがフェンスに囲まれて現地人とは隔絶されたリゾートを体験したことからこの映画を発想したという。いわゆる観光ディストピア物とも言える。



インフィニティ・プールのキャスト

ジェームズ・フォスター – アレクサンダー・スカルスガルド
ガビ・バウアー – ミア・ゴス
エム・フォスター – クレオパトラ・コールマン
スレッシュ – トーマス・クレッチマン
アルバン・バウアー – ジャリル・レスペール
アマンダ・ブルジェル

インフィニティ・プールの作品情報

監督 – ブランドン・クローネンバーグ
製作 – クリスティーナ・ピオベサンノア・セガン
製作総指揮 – ジェフ・ドイッチマン、エミリー・トーマス、トム・クイン、ライアン・ヘラー、マイケル・ブルーム、マリア・ザッカーマン、ヘンガメ・パナヒ、シャーロット・ミッキー、ローリー・メイ、エイドリアン・ラブ、アレクサンダー・スカルスガルド、ブランドン・クローネンバーグ
脚本 – ブランドン・クローネンバーグ
撮影 – カリム・ハッセン
美術 – ゾーシャ・マッケンジー
編集 – ジェームズ・バンデウォーター
音楽 – ティム・ヘッカー
2023年製作/118分/R18+/カナダ・クロアチア・ハンガリー合作
配給:トランスフォーマー

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