Netflixのリミテッドシリーズとして2025年3月13日に配信開始されたドラマ。原題は「Adolescence」。同じ学校に通う女子生徒を殺害した容疑で13歳の少年が逮捕されたことをきっかけに、家族が崩壊していく様を描く。
稀有な没入体験(アドレセンスの感想)
とてつもなく面白かったのだが、ネタバレになってしまうので、とりあえず1話ずつ紹介してみよう(本作は全4話のミニシリーズである)。
13歳の少年の自宅に警官隊が突入し、逮捕されるところからドラマは始まる。連行され、警察署で生理検査を受け、最初の取り調べで、犯行(クラスメイト女子の刺殺)時の防犯カメラ映像を見せられるところまでが第1話なのだが、これがなんと60分の1カット撮影で、突入前にぼやく刑事を捉えるキャメラがそのまま宙を滑空し、数台の警察車両を後退しつつ正面から追うので、いつのまにかドローンキャメラになっていることがわかる。ていうか全部ドローンなのか? と思うほど自由に動き回る。
2話目は少年が通っていた学校に刑事が調査に来るシークエンスなのだが、教室から廊下、食堂、テニスコートと移動しながら、すれ違う生徒、視線を向けられた教師など、対象を流麗に変えながら1カット撮影は続く。画面に映る人物は100名近くおり、どれだけ手間をかければこんな撮影ができるのか。クライマックスでは窓から飛び出す別の少年を追い、息子を乗せて車を出す刑事を見送る幕切れの後は、また空中撮影となり、数キロ先の事件現場を映して終わる。
呆気にとられるうちに3話目が始まり、少年の犯行の背景に「インセル」のミソジニーが存在していることがじわじわ判明する(すでに第2話で断片的に示される)。日本でいうところの非モテの女さん叩きのようなものだが、イギリスでは深刻な社会問題として認識されている。インセルの少年を演じるのはオーウェン・クーパー(撮影時は14歳)という新人だが、臨床心理士(エリン・ドハティ)との面談シーン(これも当然1カット)で、巧みに態度を変える演技力はずば抜けたものである。面談後にエリンが思わず涙を流してしまう緊迫シークエンスで、ここまでのものはなかなか映画では見られない気がする。
4話目は少年の父であるスティーヴン・グレアムのマッチョな男泣きで終わり、インセル問題の根の深さを示す。
1カット撮影がもたらすものは4つのシークエンス(2話以降は3日後、7ヶ月後、13ヶ月後とされる)ごとに微妙に異なるのだが、いずれも尋常じゃない緊張感に満ちていて、稀有な没入体験を味わえるドラマと言える。
アドレセンスのキャスト
Jamie Miller – オーウェン・クーパー
Eddie Miller – スティーヴン・グレアム
Briony Ariston – エリン・ドハティ
DI Luke Bascombe – アシュリー・ウォルターズ
D・S・ミーシャ・フランク – フェイ・マーセイ
Manda Miller – クリスティン・トレマルコ
Lisa Miller – アメリー・ピーズ
Mrs Fenumore – ジョー・ハートリー
ポール・バーロウ – マーク・スタンリー
フレッド – オースティン・ヘインズ
アドレセンスのスタッフ
監督 : フィリップ・バランティーニ
脚本 : スティーブン・グラハム、ジャック・ソーン
アドレセンスを観る
アドレセンスを観た人の感想
-
『アドレセンス』は、私たちの社会にあらためてこの場で問いかける作品であり、その問いに本当に向き合わないといけないと痛感させてくれました。
ドラマ『アドレセンス』感想(ネタバレ)…13歳の少年を殺人犯に変えたのは?(シネマンドレイク:映画感想&レビュー) -
『アドレセンス』を観て、人と人との間にしか生まれないものがあることを改めて教えてもらった気がします。
心理士が観た『アドレセンス』|恥について(ばらん) -
本当にすごい作品だと思う。
まだ、その衝撃から抜け出せてはいない。
NETFLIX『アドレセンス』の衝撃(カルチャー中毒おじさん)