地球外生命「スカヴ」に侵略を受けその戦いの影響から人類が宇宙へ移住した世界を舞台に、任務のため記憶を消され地球で警備とドローンの管理を行う主人公ジャック・ハーパーが、素性不明の女性ジュリア・ルサコーヴァと出会い真相を求める物語。
オブリビオンの感想
なるほど。極限的な現実が崩壊するディック的なストーリーをベースに、過去のSF映画大集合みたいな映像が続くが、それだけに先が読めてしまうのが苦しいところだ。始まりと同時にトム・クルーズは記憶がないことを独白するのだから、こんな話になるのに決まっているのだ。
ドローンがわかりやすく悪役顔で動きもアメコミ的というか、そーゆーのは「ロボコップ」から変わらないのね。
ヒロインのオルガ・キュルレンコより、偽妻のアンドレア・ライズボローのほうが個人的には好み。
オブリビオンの見どころ
本作はジョセフ・コシンスキー監督が自身の未発表グラフィックノベルを原案に映画化したSF映画である。
ジョセフ・コシンスキーは建築出身の監督らしく、未来的な造形美にこだわった映像を構築している。
荒廃した地球の描写は「過去の栄光」と「静寂な終末感」が共存しており、エンパイア・ステート・ビルやフットボールスタジアムが崩れ落ちた後の風景が人類不在の美を感じさせる。
主人公ジャック(トム・クルーズ)の住居兼職場である“スカイタワー”は、ガラスと金属で構成されたミニマリズムの極致のような建築物である。室内外がシームレスに繋がる設計は、未来の人工的な“心地よさ”と孤独感を表している。
空、雲、夕暮れ…自然光の使い方が絶妙で、CGではなく実写撮影の空を背景にプロジェクションした技法(フロントプロジェクション)によるリアリティが際立っている。未来の機能美”と“失われた過去の情緒”を視覚で語っている。
映像美だけでなく、本作には哲学的な問いが内包されている。
ひとつは、「記憶と存在」である。ジャックは任務をこなすうちに、自分の記憶と正体に疑問を抱く。クローン、人工知能、そして自己認識、というフィリップ・K・ディック的なテーマ(私は誰か”問題)である。
もうひとつは「人類 vs. 機械知性」。
地球を荒廃させた存在(テット=AI制御の巨大構造体)は、「人類創造の知性が人類を凌駕する」というSFの古典的命題を体現している。ここには人間らしさとは何か?という問いが潜んでいる。
ジャックの「僕はまだここにいる」は、人類のレジリエンスを象徴する台詞と言えるだろう。
本作は、SF映画史の名作たちの影響を巧みに取り込み、再構築し、ノスタルジーではなく現代的なSF叙事詩としてまとめ上げた映画である。
元ネタ | オブリビオンでの引用 |
---|---|
『2001年宇宙の旅』 | テットのデザインと無機質な知性 |
『ソラリス』 | 記憶・愛・存在の問い |
『月に囚われた男』 | クローンとアイデンティティ |
『ウォーリー』 | 廃墟化した地球の美しさ |
『マトリックス』 | 現実と虚構の二重構造 |
オブリビオンのあらすじ
西暦2077年、地球は異星人スカヴの侵略と核戦争で荒廃し、人類はタイタンに移住したとされる。ジャック・ハーパーはヴィクトリアと地球に残り、スカヴの残党を始末していた。ある日、墜落した宇宙船からジュリアを助け、彼女との記憶を思い出す。スカヴのマルコムから、スカヴは人類の生き残りで、宇宙ステーション「テット」が敵だと知らされる。ジャックは自分がクローンで、テットの手先として人類を抹殺していたと知り、ジュリアと結ばれる。テットを破壊するため、ジャックは核爆弾を仕掛け、テットを爆破。地上のドローンは停止し、ジュリアは約束の地で目覚める。(250字)
オブリビオンを観るには?
オブリビオンのキャスト
マルコム・ビーチ – モーガン・フリーマン
ジュリア・ルサコーヴァ – オルガ・キュリレンコ
ヴィクトリア・“ヴィカ”・オルセン – アンドレア・ライズボロー
サイクス軍曹 – ニコライ・コスター=ワルドー
テット/“サリー” – メリッサ・レオ
ジュリアの娘 – アビゲイル・ロウ、イザベル・ロウ
カラ – ゾーイ・ベル
オブリビオンのスタッフ
脚本 – ウィリアム・モナハン、カール・ガイダシェク、マイケル・アーント
原作 – ジョセフ・コシンスキー、アルヴィド・ネルソン
編集:ラディカル・コミックス
製作 – ピーター・チャーニン、ディラン・クラーク、ブルース・フランクリン、スティーブ・ゴーブ、ダンカン・ヘンダーソン、ジョセフ・コシンスキー、マイク・ラロッカ、バリー・レヴィン、R.J.ミノ
製作総指揮 – ジェシー・バーガー、デイブ・モリソン、ジャスティン・スプリンガー
音楽 – アントニー・ゴンザレス(M83)、ジョセフ・トラパニーズ
撮影 – クラウディオ・ミランダ
編集 – リチャード・フランシス=ブルース
公開 – アメリカ 2013年3月26日 日本 2013年5月31日
上映時間 – 124分