赤子連れのハンデが生きる目的に(ノーウェア:漂流の感想)
ヨーロッパ全土が食糧危機に陥り、老人・妊婦を切り捨てるディストピアと化したスペインを脱出しようと、なけなしの金を払い、コンテナで密航を企てる人々の姿は、難民そのものである。
ヒロインのミア(アンナ・カスティーリョ)は夫と別のコンテナに閉じ込められ、さらに検問で同じコンテナの仲間が全員射殺されて、一人出航したのはいいが、嵐でコンテナが海上に落下し、大西洋を彷徨うことになる。
コンテナには銃撃のため穴が空いており、どんどん水が入ってくるのだが、ミアの持ち物はペットボトルの水と少々の缶詰、ペンと紙、スマホ。コンテナ内のダミー荷は、大量のタッパウェア、大量のイヤホン、大型テレビ。あとは射殺された仲間が持っていた万能ナイフとガムテープ、電気ドリル、ガラケーなど。サバイバルから逆算したような無理ゲーのラインナップだが、別に大きく役立ったりはしない。スマホはしょっちゅう水没させるし、ガラスはヒビだらけでフリックができなくなっている。
ミアは妊婦であり、いよいよ絶望して自死を決意するところで陣痛がきてついに出産。赤子連れのハンデを負いながら、それが逆に生きる目的となって、4ヶ月以上も耐える。最後どうなるかは見てのお楽しみだが、最初は頼りなく見えたのが強い母になっていて、出産シーンをはじめ迫真演技だったのは確かだ。
ノーウェア:漂流のあらすじ
全体主義政府が支配するスペインから、ミアとニコは妊娠中の子供と脱出しようとする。子供や妊婦を殺す政府から逃れ、民主主義を維持するアイルランドへ貨物船で向かう計画だった。しかし、途中でニコと離れ離れになり、ミアはコンテナの中で一人になる。嵐でコンテナが海に落下し、ミアは浸水する中で出産。娘のノアと生き延びるため、ミアはコンテナ内の物資を使い、怪我を負いながらもサバイバルを続ける。ニコとの最後の会話で励まされ、ミアは筏を作り漂流。やがて、漁船に救助され、ミアとノアはアイルランドに辿り着く。
ノーウェア:漂流 見どころ
『ノーウェア:漂流』は、極限状態での母性とサバイバルを描いた作品であり、社会的メッセージや映像表現、主演の演技力などが高く評価されている。
- 極限状態での母性とサバイバルの描写がスゴイ
妊婦のミアがコンテナ内で出産し、限られた物資で赤ちゃんと共に生き延びる姿が描かれており、母性の強さとサバイバル能力が称賛されている。 - 全体主義国家からの逃亡という社会的背景が深い
背景には全体主義国家からの逃亡というテーマがあり、難民問題や政治的抑圧に対するメッセージが込められている - 閉鎖空間での演出と映像表現にフルエる
コンテナ内という限られた空間での撮影が、観客に強い閉塞感と緊張感を与えており、映像表現の巧みさが評価されている。 - アンナ・カスティーリョの演技力がスゴイ
アンナ・カスティーリョが、ほぼ一人で物語を牽引する演技力を発揮しており、彼女の表現力が作品のリアリティを高めている。
ノーウェア:漂流を観る
ノーウェア:漂流のキャスト
アンナ・カスティーリョ
タマル・ノバス
トニー・カルビーリョ
マリアム・トーレス
イリーナ・ブラボ
ビクトリア・テイへイロ
ルーシア・ソリア
メアリー・ルイス
ノーウェア:漂流の作品情報
監督 – アルベルト・ピント
製作 – ミゲル・ルス
原作 – インディアナ・リスタ
脚本 – アーネスト・リエラ、ミゲル・ルス、インディアナ・リスタ、シアニー・ウィンスロー、テレサ・デ・ロセンド
撮影 – ウナクス・メンディア
音楽 – ルーカス・ペイレ
2023年製作/109分/スペイン
原題 – Nowhere
配信 – Netflix
配信開始日 – 2023年9月29日