地獄が呼んでいるの見どころ
- “地獄行きの通知”によるディストピア感覚
ある日突然「あなたは●月●日に地獄に落ちます」という謎の通知が届く――。
この“高神秘&恐怖”な設定をきっかけに、社会は混乱に陥る。通知を信仰に変える集団や、恐怖から逃れようとする人々が入り乱れる、見応えある宗教スリラーである。 - カルト宗教 “新真理会” と狂信者 “矢印団” の恐怖
作品中では「新真理会」と呼ばれるカルト団体が、通知現象を“神の啓示”として信者を増やしていく。やがて“矢じり”と呼ばれる過激集団も登場し、人々が狂気と恐怖に支配されていくまでの過程が薄気味悪く描かれる。 - 人間の本能と“正義”が揺れる群像劇
通知を受けた人々の対応はさまざま。恐怖に負けて自殺を選ぶ者、生き延びるために他人を犠牲にする者、「神の啓示だ」と受け止める人々……倫理と本能の境界線がグラつく群像劇的視点が強烈な印象を残す。 - 社会批判と哲学的テーマの融合
通知現象を通じて、現代社会の「宗教依存」「倫理の崩壊」「群集心理」が鋭く切り取られている。“地獄”の存在を信じることの恐ろしさと人間の弱さが、哲学的な重みを持って描かれる。 - キャスト演技と緊張感溢れる演出
義務感に板挟みされる主人公、カルトに心酔するカルト教祖、狂信者を取りまとめる過激派リーダーなど、俳優陣の「信仰から狂気へと突き落ちる表情」と“地獄の使者”を撮る演出の不気味さが、サスペンスの緊張感を増幅させる。
地獄が呼んでいる シーズン1
感想
画面のトーンは最初から最後までホラー調で、3体の地獄の使者が被告知者をボコるシーンの非日常性とのコントラストが計算されている(それに比べると天使の告知CGはひどく陳腐だが、おそらくわざとなのだろう)。
使者が3体いるところがミソで、一気に殺す(ときもあるのだが)のではないなぶり殺し=「試演」(変な用語だ)は、カリスマ組織の下部団体「矢じり」の暴漢たちによる公開リンチと、それを遠巻きに見守る人々によって模倣される。つまりそれがこのドラマのテーマであるらしいのだ。母親をなぶり殺されリンチを生き延びたキム・ヒョンジュ(私は檀れいを重ねて見ていた)は、後半になって常人以上の戦闘力を身につけているのだが、それでも矢じりの群れが殺到してきたら死にもの狂いに逃げるしかない(5話)。
このシーンは手に汗握る以上の効果を生んでいて、意図的に揺れを残した手持ちカメラの映像が尋常ではない没入感を与えていた(だから新真理会の施設に乗り込んだり動画配信者と対決したりするシーンは少し不満)。
「新感染」と違って先がまったく読めない物語で(試演や使者の意味などは最後まで明らかにならないであろう)、8話だと思って見ていたら6話で終わったので拍子抜けしたのだが、シーズン2があるとしたら、成長した赤ん坊と復活したシングルマザーの戦いになると予想してみる。
初代議長と刑事は復帰しなさそうだが、刑事の娘イ・レ(天才子役だそうだが、ダークサイドに落ちたときの表情は素晴らしかった)がラスボスになるか。
あらすじ
ソウルで突如現れた奇妙な生き物が人を焼く事件が発生。新興宗教「新真理会」の議長ジンスはこれを「神の意志」と説き、チン刑事と法律家ミン・ヘジンが調査に乗り出す。
告知を受けたシングルマザー・ジョンジャの公開処刑は生中継され、社会に衝撃を与える。ジンス自身も過去に告知を受けていたことが判明し、チン刑事の目前で焼き殺される。
4年後、告知を受けた人々を秘密裏に援助する組織「ソド」が活動する中、テレビ局ディレクターのヨンジェは生まれたばかりの赤ちゃんが告知を受ける驚愕の事実に直面。新真理会との激しい対立の末、試演で夫婦は命を落とすが、奇跡的に赤ちゃんは生き残る。物語は処刑されたはずのジョンジャの復活で幕を閉じる。
キャスト
ペ・ヨンジェ(テレビ局番組プロデューサー) – パク・ジョンミン
ミン・ヘジン(弁護士) – キム・ヒョンジュ
ソン・ソヒョン(ヨンジェの妻) – ウォン・ジナ
チン・ギョンフン(刑事) – ヤン・イクジュン
イ・ドンウク(矢じりのリーダー) – キム・ドユン
パク・ジョンジャ(地獄行きを告知された母親) – キム・シンロク
ユジ執事(新真理会の執事) – リュ・ギョンス
チン・ヒジョン(ギョンフンの娘) – イ・レ
地獄が呼んでいる シーズン2
ムン・グニョン(地獄が呼んでいる シーズン2)
感想
衝撃のシーズン1から3年、待望の続編とあって勢い込んで見始めたら、あらかたストーリーを忘れていたので、まずシーズン1を見直したのだが、異様に面白いのであらためて驚いた。
3年前の私は、成長した赤ん坊と復活したシングルマザーが対決し、刑事の娘がラスボスになるという続編を予想したのだったが、これは当然のごとく大外れ。真神理会、矢じり、ソド、そして韓国政府という「四つ巴」の権力闘争をゲームの盤面として、その上を、実演(シーズン1の試演から用語が変更)から蘇った2名の復活者、正義派弁護士ミン・ヘジン、生き残り(ではなく、実は5秒で復活していたことが明らかになる)の赤ん坊などの駒を進めていくという、かなり手の込んだストーリーになっている。
相変わらずの北斗の拳世界でひときわイッちゃってる「お日様組の先生」の冒頭描写はスゴイと思うし(演じているのは「[秋の童話」の名子役ムン・グニョン)、政治状況を反映したサスペンスも面白いのだが、シーズン1の興奮には至らず、トーンダウンした印象は否めない。
復活したカリスマ議長が地獄の使者になってしまったり、街中の人が告知を受けてしまったり、何も説明されぬまま、世界がなし崩し的に地獄化して終わるのだが、さらなる続編はなさそうな気がする。
あらすじ
パク・ジョンジャが復活してから4年(シーズン1から4年)。彼女は話せる状態ではなかったが新真理会が保護し、政府主導のもと新たなシンボルにしようと計画していた。シーズン1で赤ん坊を守って怪物に殺されたヨンジェとソヒョン。赤ん坊だったジェヒョンは反新真理会の組織・ソドの代表ミン・ヘジンとその仲間によって保護され、怪物から生き残った奇跡の少女として観察されていた。新真理会と対立する矢じりの信者たちは告知を受けた人間が処刑される瞬間に覆い被さって守ることが尊いとカルト宗教化していた。矢じりは各地でデモを起こし、韓国の治安は最悪の状態だった。そんな中、なんと怪物たちに殺されたジンス議長が復活。果たして誰が宗教の時代の新たなるシンボルになるのか?
キャスト
ミン・ヘジン(元弁護士で秘密組織<ソド>のリーダー):キム・ヒョンジュ
チョン・ジンス(新興宗教「新真理会」の初代議長(教祖)):キム・ソンチョル
パク・ジョンジャ(公開試演を受けたシングルマザー):キム・シンロク
イ・スギョン(大統領室政務首席):ムン・ソリ
オ・ジウォン(<矢じり>のリーダーの1人):ムン・グニョン
キム・ジョンチル(「新真理会」2代目議長):イ・ドンヒ
チョン・セヒョン(<ソド>のメンバー):イム・ソンジェ
チン・ギョンフン(刑事):ヤン・イクチュン
チン・ヒジョン(新真理会の信者):イ・レ
地獄が呼んでいるのスタッフ
メーカー :クライマックススタジオ
監督 :ヨン・サンホ
脚本 :ヨン・サンホ、チェ・ギュソク
原作 :ヨン・サンホ、チェ・ギュソクのウェブトゥーン《地獄》