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小さな巨人

3.5
芳根京子(小さな巨人) ドラマ
芳根京子(小さな巨人)
『小さな巨人』は、2017年4月16日~6月18日に日曜劇場で放送。全10話。主演は長谷川博己。警視庁本庁と所轄の確執、警察内部の戦いを克明に描くエンターテインメントドラマ。キャッチコピーは「敵は味方のフリをする。」。

小さな巨人の感想

ファーストインプレッション

演出を見るに「半沢直樹」のスタッフと思われる。
しかしまあ、こうした演出と脚本をサラリーマン物に持ってきたところが「半沢」の新しさだったと思うのだが、一周回って刑事物でこれをやられると、普通なんじゃないの?と思ってしまう。
せっかくの芳根京子だが、これは別に他の女優でもよかった。

最終回まで観て

毎回めちゃくちゃテンションを上げ、「その根拠は、カンだ!」と言いきる刑事を長谷川博己が熱演。岡田将生も眉間に皺が張りついていた。

テーマは「味方の顔をした敵」ということらしく、「半沢直樹」以来お馴染みの顔相撲を披露する香川照之が今回も名台詞を乱発しつつ、最終回では涙まで流して巨悪の暴露に協力してくれたのに、結局、重要証拠と捜査一課長の座を奪われただけ、という人を食った結末だった。

冷静に見るといろいろオカシイのだが、勢いで黙らせてしまうのは「半沢」以来一貫している。しかし今回はさすがに誰もがあきれたのではないか。

小さな巨人の見どころ

警察組織の“正義”と“出世”の板挟みを描く群像劇で、組織内の人間関係や権力構造を暴き出すのを見どころにしたドラマ。
刑事ドラマではあるが、拳銃や派手なアクションではなく、会議室や捜査会議、上層部との折衝を中心にしており、組織に従うことが正義なのか、事件の真相を暴くことが正義なのかを問う。実際の警察関係者からも「組織の空気感がリアル」と評価されたという。

前半(芝署編)と後半(豊洲署編)の2部構成になっており、前半は大企業の不可解な殺人事件、後半は再開発をめぐる汚職疑惑を扱っている。
どちらも事件そのものと同じくらい、警察内部での駆け引き・出世争いがストーリーの核になる。「真犯人は誰か?」をさておき、「誰が味方で誰が敵か?」という二重の謎が同時進行する。
芝署編で大きな事件が一区切りついた後、舞台を豊洲署に移し、新たな事件と人間関係が展開することで、「前半の人間関係を引きずりながら新たな戦いが始まる」仕掛けになっており、後半でも飽きが来ず、最後まで緊張感を保った構成と言える。

主人公・香坂真一郎(長谷川博己)と、芝署刑事課長・芝署署長代理の小野田義信(香川照之)の関係が最大の見どころとなっており、香川照之が目線や間でプレッシャーをかける芝居を見せ、長谷川博己は理想と現実の間で揺れる繊細な表情を演じる。二人の対峙シーンはきわめて舞台劇的な緊張感を演出している。

毎話のクライマックスでは、主人公が組織の理不尽に追い詰められながらも、ギリギリで逆転の一手を打つ展開が用意された。「逆転のカタルシス」と「敵を出し抜く知略戦」は、日曜劇場の王道演出。

半沢直樹と比較すると…

まず、両作とも、池井戸潤的な“組織内逆転劇ではある。

半沢直樹では銀行という企業組織の中での出世競争・派閥抗争が中心。数字や契約をめぐる論戦が醍醐味となっていたのに対し、本作は警察組織が舞台であり、捜査権や情報を武器にした駆け引きがメインで、正義と保身のせめぎ合いが描かれた。舞台は違えど、どちらも「組織の論理 vs 個人の信念」が核心である。

主人公の描き方としては、半沢直樹の堺雅人は常に正義感を全面に出し、言葉と勢いで押し切る“正面突破型”で、「倍返しだ!」という決め台詞の通り感情を爆発させる演出だが、本作の香坂真一郎(長谷川博己)は冷静沈着で感情を表に出さず、状況を分析して動く“間合い型”。表情の変化や沈黙の使い方で勝負するため、逆転の瞬間に静かな緊張感が走る。
ひとことで言うと、半沢は「熱量」、香坂は「緻密さ」といったところか。

敵役の描かれ方はどうか。
半沢直樹では黒幕や敵はわかりやすく悪役として描かれ、対決構図が明確だったが、本作の特徴は、敵か味方かが最後まで揺らぐキャラが多いということで、「裏切り」や「立場の変化」によるドラマ性が強調された。

演出(長台詞や会議室での緊張感のある対峙、カタルシスを生む「逆転の瞬間」、権力者を論破する場面の爽快感)は強調する部分が多いが、半沢直樹のようなは誇張された演技・演出ではなく、抑えた演技と現実寄りの描写で、一応リアリズム志向と言えるだろう。

総じて、視聴後の満足感は似ているものの、テンションの上げ方が違っており、見比べると演出哲学が異なることがわかる。

小さな巨人のあらすじ

芝署編

警視庁捜査一課の香坂真一郎は、難事件を解決した後、料亭で師匠の三笠洋平と祝勝会を開く。しかし、上司の小野田義信が現れ、その後「ナカタエレクトロニクス」社長・中田隆一を飲酒運転容疑で職務質問した際に車に傷をつけ、マスコミで問題視される。監察官の柳沢肇から追及され、小野田の証言により芝警察署への左遷を命じられる。芝署赴任初日、隆一の父・中田和正の誘拐事件が発生し、警視庁捜査一課が介入するが、香坂は渡部久志らと共に事件の核心に迫る。

豊洲署編

芝署で警察内部の不正を暴いた香坂は、豊洲署へ横滑り異動となる。豊洲署では、須藤文香刑事課課長のもとで三島祐里や山田春彦と働く。横沢亜美が夫・横沢裕一の失踪を相談し、勤務先の早明学園が横領事件として処理するよう要求する。香坂は事件性を疑い、学園職員の矢部貴志(本名・江口和夫)が警察官で、学園の癒着を暴こうとしていたことを知る。山田は江口と協力していたことを明かし、江口から癒着の証拠と横沢の居場所の連絡を受ける。しかし、香坂が尾行した先で、江口の遺体の側に立つ山田を発見。山田は逃亡を図るが確保される。

小さな巨人を観るには?

小さな巨人 キャスト

主要人物
香坂 真一郎 – 長谷川博己(幼少期:福島知乃心[3])
山田 春彦(警部補) – 岡田将生(幼少期:谷垣有唯[5])
三島 祐里(警務部人事課職員) – 芳根京子
渡部 久志(巡査部長) – 安田顕
三笠 洋平(芝警察署署長) – 春風亭昇太
小野田 義信(捜査一課長) – 香川照之

警視庁芝警察署
中村 俊哉(刑事) – 竜星涼
東山 智之(刑事) – 加治将樹
石倉 慎之介(刑事) – 丸一太
神尾 梢(刑事) – 夏緒
杉本 学(副署長) – 池田鉄洋
警務係・大島 – 児嶋一哉

警視庁豊洲警察署
須藤 文香(刑事課課長) – 神野三鈴
関口 一也(刑事) – 石黒英雄
篠原 良平(刑事) – 望月章男
寺井 友宏(刑事) – 大熊ひろたか

警視庁本庁
藤倉 良一(捜査一課係長) – 駿河太郎
片山 昭三(捜査一課特殊犯捜査担当管理官) – 神尾佑
柳沢 肇(警務部監察官) – 手塚とおる
松岡 航平(捜査二課長) – 高橋光臣

香坂家
香坂 美沙(香坂の妻) – 市川実日子
香坂 敦史(真一郎の父) – 木場勝己
香坂 真由美(真一郎の母) – 三田佳子(特別出演)

その他
芝署編
山本 アリサ(バーオーナー) – 佐々木希
中田 和正(IT企業社長) – 桂文枝
五十嵐 仁(顧問弁護士) – 堀尾正明
中田 隆一(中田和正の息子) – 加藤晴彦
池沢 菜穂(開発部防犯管理) – 吉田羊
風見 康夫(京子の父) – 長江英和
風見 京子(中田隆一の元恋人) – 富永沙織
小野田 ゆかり(小野田の妻) – 吉沢梨絵
佐川 勇人(社会部記者) – 好井まさお

豊洲署編
富永 拓三(学校法人早明学園専務) – 梅沢富美男
金崎 玲子(旧姓:山田)(理事長) – 和田アキ子
横沢 裕一(経理課長) – 井上芳雄
横沢 亜美(横沢の妻) – 中村アン
矢部 貴志(経理課員) – ユースケ・サンタマリア
松山 義則(山田勲の運転手) – 髙橋洋
山田 勲(内閣官房副長官) – 高橋英樹

小さな巨人 スタッフ

製作著作 – TBS
プロデューサー – 伊與田英徳飯田和孝
監修 – 福澤克雄
演出 – 田中健太渡瀬暁彦池田克彦
脚本 – 丑尾健太郎成瀬活雄
脚本協力 – 八津弘幸
音楽 – 木村秀彬
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