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ブレードランナー

4.0
ショーン・ヤング(ブレードランナー) 映画
ショーン・ヤング(ブレードランナー)
ブレードランナーは、

ブレードランナー(ファイナルカット)の感想

80年代の映画としてさして思い入れはないのだが、ファイナルカットが見られるようになったので再見。
ユニコーンのシーンが追加になり、ハリソン・フォードのナレーションが消え、ラストシーンがなくなった。
ラストシーンについては、初見から蛇足として無視していたので、なくてもさして驚きはない。
そのほかの変更はディックの原作からさらに遠ざかる内容なので、どちらでもいいという感じ。

ハリソン・フォードがショーンヤングにセマる台詞を知人が婚約者に試していたという話を思い出して、今でもちょっと赤面する。

「2049」の予告編も付いていたが、いかにも外しそうだなあ。

「ファイナルカット版」の違い

本作にはいくつかのバージョンが存在し、2007年に公開された『ブレードランナー ファイナル・カット』は、リドリー・スコットが「これこそが決定版」と公言している。主な違いは、「監督の意図の反映度」「映像・音響の品質」「物語の解釈を左右する重要なシーンの有無」に集約される。
単なる高画質版ではなく、監督が本来伝えたかったハードボイルドで曖昧な結末と、「人間とは何か」というより深いテーマ性を、最高の映像技術で表現した「真の完成形」と言える。

『ファイナルカット』の最大の特徴

  1. リドリー・スコットが初めて完全な編集権を掌握
    1982年の劇場公開版は、観客に分かりやすくするために配給会社の意向が強く反映され、監督の意図しない変更(ナレーションの追加やハッピーエンド化)が加えられた。『ファイナルカット』は、リドリー・スコットが初めて誰の制約も受けず、自身の描きたかったビジョンを100%実現したバージョンである。
  2. 最新技術によるデジタルリマスター
    オリジナルのネガフィルムから4K解像度でスキャンし、映像を全面的に修復・再構築している。これにより、公開当時には技術的に不可能だった修正(ワイヤー消しなど)や、色彩の調整が行われ、圧倒的に高画質・高音質になっている。酸性雨が降る未来都市のディテールが、より鮮明に描き出されている。
  3. 他のバージョンとの具体的な違い

    特に有名な「劇場公開版」(1982年)と「ディレクターズ・カット(最終版)」(1992年)と比較してみよう。

    比較項目 ファイナル・カット
    (2007年)
    ディレクターズ・カット
    (1992年)
    劇場公開版
    (1982年)
    ナレーション なし なし あり
    (デッカードによる説明的なナレーション)
    エンディング 曖昧な結末(エレベーターのドアが閉まり、未来を暗示して終わる) ファイナル・カットとほぼ同じ ハッピーエンド(デッカードとレイチェルが自然の中をドライブする)
    ユニコーンの夢 あり(鮮明に)デッカードがユニコーンの夢を見るシーンが明確に挿入される ありこのバージョンで初めて追加された なし
    暴力描写 過激・鮮明タイレル博士の最期や、ゾーラの死亡シーンなどがより直接的で鮮明な描写に修正 劇場公開版よりは過激 抑制的一部の暴力的なシーンがカットされている
    映像の修正 多数あり・ゾーラの死亡シーンでスタントの顔が見えないように修正・ワイヤー消しや、細かな矛盾点の修正・VFXのクオリティ向上 なし なし
    画質・音質 最高品質(4Kデジタルリマスター) 当時のマスターを使用 オリジナル版

    なぜ「ユニコーンの夢」が重要なのか?

    『ファイナル・カット』(およびディレクターズ・カット)で挿入された「ユニコーンの夢」のシーンは、物語の解釈を根底から揺るがす非常に重要な要素である。

    映画のラストで、同僚のガフがユニコーンの折り紙をデッカードのアパートに残していく。

    劇場公開版: ガフがレイチェルを見逃したことを示す、単なる粋な計らいに見える。
    ファイナル・カット: デッカードがユニコーンの夢を見たことをなぜガフが知っているのか? という疑問が生まれる。これは「デッカードの記憶(夢)は、他者によって植え付けられたものであり、彼自身もレプリカントなのではないか?」という強烈な暗示になる。

    ブレードランナーのあらすじ

    21世紀初頭、遺伝子工学の進歩によりタイレル社は「レプリカント」と呼ばれる人造人間を開発。彼らは優れた能力を持つが、感情が芽生えると人間に反逆するため、4年の寿命年限が設定されていた。環境破壊で人類の大部分が宇宙植民地(オフワールド)に移住する中、レプリカントは過酷な労働を強いられ、脱走した者は地球で違法存在とされ、警察の「ブレードランナー」によって抹殺される運命にあった。
    2019年、ロサンゼルス。ネクサス6型レプリカント4体が地球に潜入し、ブレードランナーのデッカードは彼らを追う。レプリカントの開発者タイレル博士の秘書・レイチェルもまたレプリカントであり、デッカードは彼女に惹かれていく。デッカードはレプリカントたちを次々と「解任」するが、リーダー格のバッティはタイレル博士を殺害し、寿命延長の願いが叶わぬことを知る。デッカードはバッティと対決し、逆に命を救われる。バッティは最期の言葉を残し、デッカードはレイチェルと共に逃避行を選ぶ。

    ブレードランナー ファイナルカットを観るには?

    ブレードランナー キャスト

    リック・デッカード(退職した賞金稼ぎ) – ハリソン・フォード
    ロイ・バッティ(反逆レプリカントのリーダー) – ルトガー・ハウアー
    レイチェル(タイレル博士の姪の記憶を移植されたレプリカント秘書) – ショーン・ヤング
    ガフ(ロサンゼルス市警刑事) – エドワード・ジェームズ・オルモス
    ハリイ・ブライアント(ロサンゼルス市警警部) – M・エメット・ウォルシュ
    プリス・ストラットン(慰安用レプリカント) – ダリル・ハンナ
    J・F・セバスチャン(タイレル社の遺伝子工学技師) – ウィリアム・サンダーソン
    リオン・コワルスキー(労働用レプリカント) – ブライオン・ジェームズ
    エルドン・タイレル博士(タイレル社社長) – ジョー・ターケル
    ゾーラ・サロメ(暗殺用女性レプリカント) – ジョアンナ・キャシディ
    ハンニバル・チュウ(遺伝子工学者) – ジェームズ・ホン
    デイヴ・ホールデン(ブレードランナー) – モーガン・ポール
    タフィー・ルイス(バーの経営者) – ハイ・パイク
    カンボジア女性(路上で商売をしている女) – キミコ・ヒロシゲ
    スシマスター(屋台“ホワイトドラゴン(白龍)”で働く日系人) – ロバート・オカザキ
    アブドゥル・ベン・ハッサン(合成動物を売る商人) – ベン・アスター

    ブレードランナー スタッフ

    監督 – リドリー・スコット
    脚本 – ハンプトン・ファンチャーデヴィッド・ピープルズ
    原作 – フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
    製作 – マイケル・ディーリー、チャールズ・デ・ロージリカ(ファイナル・カット)
    製作総指揮 – ブライアン・ケリー、ハンプトン・ファンチャー、ジェリー・ペレンチオ、バッド・ヨーキン、邵逸夫
    音楽 – ヴァンゲリス
    撮影 – ジョーダン・クローネンウェス
    編集 – テリー・ローリングス、マーシャ・ナカシマ
    製作会社 – ラッド・カンパニー、ショウ・ブラザーズ、ブレードランナー・パートナーシップ
    配給 – アメリカ ワーナー・ブラザース
    公開 – アメリカ 1982年6月25日、日本 1982年7月10日
    上映時間 – 116分(劇場公開版、ディレクターズ・カット)、117分(ファイナルカット)
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