続編はないだろう(寄生獣-ザ・グレイ-の感想)
岩明均が「モーニングオープン増刊」という雑誌に中編「寄生獣」を掲載したのは、思えば80年代のことで(アフタヌーンでの本編連載は90年から)、幻のハリウッド映画化(権利を保持したまま結局製作されなかった)のため、アニメ化、映画化まで20年を要することになった。
本作はさらにそれから10年を経て「新感染 ファイナル・エクスプレス」とその続編「新感染半島 ファイナル・ステージ]、「地獄が呼んでいる」などのヨン・サンホが撮ったNetflixドラマである。
コンパクトな6話構成で、最終回のラストシーンに泉新一を名乗る菅田将暉が登場するのは続編を示唆していると巷で期待されているが、私はむしろ続編を作らない宣言のように感じた。
寄生生物が柘榴状に頭部を弾けさせて正体を表す描写は、それによる被害者の身体損壊と対になっていて、「遊星からの物体X」の影響だとか、逆にターミネーター2」に影響を与えたとか言われるが(それらと同時代の漫画なのだ)、描写以前に、この物語における寄生生物がユニークなのは、種としての哲学性を意識しているところである。本作もそれを継承するかに見えて、やや浅い、どちらかというと社会学的な存在になっていたのは惜しいところだ(韓国人的な発想だと思う)。
本作では韓国当局はいち早く寄生生物を関知しており、特殊部隊をに壊滅指令を出している。そのチーム長が「新感染半島 ファイナル・ステージ』」のヒロイン、イ・ジョンヒョンなのだが、寄生された夫に耳を引きちぎられるという凄味のある設定で、つまり寄生生物ではない。ヒロインであるチョン・ソニは顔の一部がビローンと伸びて戦う。原作のジョーもこんな感じか。
寄生獣-ザ・グレイ- 見どころ
韓国を舞台に、人間を捕食する寄生生物「パラサイト」と、彼らと戦う人間たちの姿を新たな視点で描いたオリジナルストーリー。
- 原作『寄生獣』の世界観を韓国で再構築
漫画『寄生獣』の世界観を韓国の練り上げられた映像技術とドラマ制作ノウハウで再構築。原作へのリスペクトを随所に感じさせつつ、全く新しいキャラクターとオリジナルストーリーを展開。 - チョン・ソニ演じるヒロイン・スインの苦悩と成長
主人公のチョン・スイン(チョン・ソニ)は、パラサイトに脳を乗っ取られず、右半身だけが乗っ取られるという特異な存在。人間でもパラサイトでもない異質な存在として両者から狙われ、孤独な戦いを強いられる苦悩と、奇妙な共生関係の中で成長していく姿。 - VFXを駆使したパラサイトの表現
パラサイトが人間を乗っ取った後の変形や、戦闘シーンにおける描写を最新VFX技術で非常にリアルかつグロテスクに表現。パラサイトの触手が躍動する様子や、人間とは異なる動きがSFホラーとしての魅力を高めている。 - 骨太なアクションとサスペンス
パラサイトたちが人間社会に潜伏し、静かに勢力を拡大していく中で、それを阻止しようとする人間側の組織「ザ・グレイ」との攻防が繰り広げられる。心理戦、肉弾戦、そして知的な駆け引きが融合したアクションとサスペンス。 - 多様な登場人物たちの思惑と「共存」の問い
行方不明の妹を探すためパラサイトを追うソル・ガンウ(ク・ギョファン)、パラサイト専門チーム「ザ・グレイ」のリーダーであるチェ・ジュンギョン(イ・ジョンヒョン)など、様々な目的を持つキャラクターたちが登場。パラサイトという異質な存在とどう向き合い、何を「正義」とするのか、そして人間とパラサイトの「共存」は可能なのかという根源的な問いが投げかけられる。
トリビア・撮影裏話など
- 『新感染 ファイナル・エクスプレス』『地獄が呼んでいる』などで知られるヨン・サンホ監督が、脚本・監督を務める。原作『寄生獣』の大ファンで、リスペクトと同時に、独自の視点で作品を再解釈する意欲が込められた
- 岩明均は「『寄生獣』の世界に新たな物語を作ってくれた。オリジナルをとても尊重してくれていて、かつ独創的な発想で作ってくれたので、本当に良い映像化になった」と絶賛
- スインの右半身を乗っ取ったパラサイト「ハイジ」の声は、実は監督自身が演じている(という説がある)。監督自身が様々なパラサイトの声を担当し、独特の不気味さやユーモラスさが加わっている
- 原作の重要なテーマである「人間と自然、そして他の生命との共生」というメッセージが形を変えて継承されている
- ソル・ガンウ役のク・ギョファンがパラサイトとの戦闘シーンで独特の身体能力とアクションを披露
- 終盤にサプライズゲストが登場。続編の可能性を示唆した
寄生獣-ザ・グレイ-の人物相関図
寄生獣-ザ・グレイ- あらすじ
韓国に舞い落ちた寄生生物「パラサイト」が無差別殺傷事件を起こし、対策組織『ザ・グレイ』が設立される。主人公チョン・スインは、通り魔に刺されパラサイト「ハイジ」に寄生されるが、脳の乗っ取りに失敗し共存関係に。パラサイトは「セジン教会」を設立し、人間に寄生して組織化。スインは変異種として両陣営から狙われ、ヤクザのソル・ガンウと共闘。スインは『ザ・グレイ』に拘束されるが、刑事の叔父キム・チョルミンの助けで脱出。チョルミンはパラサイトに殺害され、身体を奪われる。
寄生獣-ザ・グレイ-を観るには?
寄生獣-ザ・グレイ-の感想・考察
- 『寄生獣』の素晴らしさ/『寄生獣 ザ・グレイ』の甘さ(さかもと)
- 皮膚との対話/『寄生獣ーザ・グレイー』【ドラマ感想】(月の人)
- 社会的少数者への優しい眼差しに溢れた、新解釈のドラマシリーズ(竹島ルイ IGN Japan)
寄生獣-ザ・グレイ-のキャスト
ソル・ガンウ – ク・ギョファン
チェ・ジュンギョン – イ・ジョンヒョン
キム・チョルミン – クォン・ヘヒョ
カン・ウォンソク – キム・イングォン
クォン・ヒョクジュ – イ・ヒョンギュン
ギョンヒ – ユン・ヒョンギル
イズミ・シンイチ – 菅田将暉
寄生獣-ザ・グレイ-のスタッフ
監督・脚本:ヨン・サンホ
制作:ヨン・サンホ、リュ・ヨンジェ
寄生獣-ザ・グレイ-の原案:「寄生獣」(岩明均)
シンイチ…『悪魔』というのを本で調べたが…いちばんそれに近い生物はやはり人間だと思うぞ…他の動物の頭に寄生して神経を支配する寄生生物。高校生・新一と、彼の右手に誤って寄生したミギーは互いの命を守るため、人間を食べる他の寄生生物との戦いを始めた。