映画2010年代の映画2015年の映画

イニシエーション・ラブ

4.0
前田敦子(イニシエーション・ラブ) 映画
前田敦子(イニシエーション・ラブ)

衝撃の真実
マユは、観客が見ていた「タッくん(鈴木拓人)」とは別に、もう一人の「タッくん(鈴木竜也)」と同時並行で付き合っていた。「竜也」こそがマユの本命(Aくん)であり、主人公の「拓人」は二番手(Bくん)だったのだ。

ヒロイン・マユ(前田敦子)の恐るべき「魔性」

一見、天然で天真爛漫、昭和のアイドル的な純真さを持つヒロイン「マユ」。しかし、そのすべては「計算」だった。

妊娠の嘘
Side-Bのクライマックス。タッくん(拓人)が美弥子を選び、マユに別れを告げようと静岡に戻ると、マユは「妊娠した」と告げる。拓人は自分の子だと思い込み、責任を取る決意をする。
→このお腹の子は、本命のタッくん(竜也)の子である。マユは本命(竜也)に捨てられそうになった(あるいは浮気された)ため、保険のBくん(拓人)に責任を押し付け、父親として「確保」したのだ。

「理想の男」への調教
Side-Aで太っていた拓人が、痩せてオシャレになり、髪型まで変えてイケメン(松田翔太)になったのは、拓人の努力の成果のように見えるが、違う。
→マユが本命のタッくん(竜也)の容姿に「似せる」ように、拓人を巧妙に誘導していた。拓人は、知らず知らずのうちに「本命の代用品」に作り替えられていた。

松田翔太が「一人二役」を演じていた(ように見せかけた)トリック

この映画のトリックを成立させた最大の功労者は、松田翔太。

Side-A(序盤): 太った「タッくん(拓人)」
Side-A(終盤)〜Side-B: 痩せた「タッくん(拓人)」

観客はこれを「同一人物のビフォーアフター」として見るのだが、ラストの答え合わせで、マユが本命「タッくん(竜也)」と一緒に写っている写真が出てくる。その「竜也」の容姿は、痩せた後の「拓人」と瓜二つ(=松田翔太)
つまり、マユは「同じ鈴木姓」で「同じタッくんという愛称」で「(最終的に)同じ容姿」の男二人を天秤にかけていたのだ。

ラスト5分の「答え合わせ(伏線回収)」

物語が「最悪」の結末を迎えた後、カセットテープが巻き戻るように、映画はSide-Aの冒頭から高速でリピート再生される。そこで、観客が見逃していた数々の伏線が「答え」として提示される。

  • 合コンでマユが「鈴木くん」と呼んだ時、拓人と竜也(のちに登場する)の両方が反応していた可能性。
  • マユが拓人の名刺を見て一瞬「あれ?」という顔をするシーン(拓人=「拓」人だと確認した)。
  • マユが拓人の容姿(髪型や服装)に細かく口出しするシーン(すべて竜也に似せるため)。
  • クリスマス・イブの約束をドタキャンされたマユが、すぐに拓人を呼び出すシーン(本命の竜也にドタキャンされ、Bくんの拓人を呼び出した)。
  • 拓人が東京に行くことを、マユが意外なほどあっさり承諾するシーン(本命の竜也が静岡に残るため、むしろBくんの拓人には遠くに行ってほしかった)。

結論

『イニシエーション・ラブ』の見どころは、「甘酸っぱい80年代のラブストーリー」という皮を被った、「一人の純朴な青年が、恐るべき魔性の女によって人生を乗っ取られるまでの物語」であること。
「すべてが覆される最後の5分」を体験するために、それまでの約100分間、観客は見事に騙され続けてきたのである。このカタルシスのない、背筋が凍るような結末こそが、この映画の最大の見どころと言える。

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