ヴァンサンカン・結婚の感想
キザったらしい小林稔侍(広告代理店の営業部長)と、当時から犬みたいな石黒賢(青年医師)の間で、24歳の安田成美が心を揺らすというドラマ。当時の24歳は、結婚するか、それとも仕事に生きるかという決断を迫られる年齢である。
舞台は91年で、安田がDCブランド(!)のプレスというトレンディっぽい設定でありながら、実は小林が不治の病に冒されていたりする不穏さがバブル崩壊直後の不安な世情を伝える。
一度見たら忘れられなさそうなファーストシーンでは、安田が西新宿の小林のマンションからブラインド越しに東京都庁(まだ建設中)を眺め、「できあがったら悪魔の建物みたい」とつぶやく。部屋の壁にはニューシネマが映写され、ボブ・ディランの「I Shall Be Released」が流れている。
けだし、崩壊の予感である。
菊池桃子が演じるイケイケの女性の生き方が「右子現象」なるものを生んだというのだが、何のことを言っているのかもはやわからない。
菊池桃子(ヴァンサンカン・結婚)
1980年代半ばから後半にかけてアイドルとして絶大な人気を誇った菊池桃子のイメージは、初期の「ふわふわとしたお嬢様」から、徐々に「明るく健康的で、自分の意見を持ち、仕事にも前向きな女性」へと変化した。
特に1980年代後半はバブル景気の真っ只中で、女性の社会進出が進み、経済的にも精神的にも自立を目指す女性が増えた時代。菊池桃子が演じる役や、彼女自身のパブリックイメージが時代の空気を反映し、憧れの生き方として受け入れられた。
当時、専業主婦志向から、キャリアを積むことや、男性に頼らず自分の力で生きることを重視するようになっていた。
右子現象の詳細は、今調べてもわからなかったのだが、そうした菊池桃子の役柄が、「イケイケ」=活動的で、自己主張もできる、新しい時代の女性像を体現していたということなのだろう。
ヴァンサンカン・結婚 見どころ
- 「結婚」をリアルに描く
最大の魅力は、結婚がゴールではなく、新たなスタートであることを当時の若者たちの視点からリアルに描いている点。結婚に至るまでのワクワク感だけでなく、現実的な問題や不安、そしてそれにどう向き合っていくのかという過程が描かれる。 - 安田成美と加勢大周の旬なカップル
当時の人気俳優である安田成美と加勢大周が結婚を控えたカップルを演じ、視聴者の共感を呼んだ。二人の間の甘くも切ないやり取りが見どころ。 - 当時の恋愛・結婚観の反映
1990年代初頭のバブル崩壊前後の時代背景の中で、若者たちが結婚に対して抱いていた夢や現実、価値観の多様化が垣間見える。「結婚適齢期」「寿退社」といった当時の社会的な風潮も反映されている。 - 共感性の高い人間ドラマ
メインのカップルだけでなく、周囲の友人や家族、職場の人々が抱える様々な人間関係や恋愛模様も描かれる。それぞれの登場人物が結婚や人生に何を求めるのか、という問いが、視聴者自身の共感を呼ぶ。
ヴァンサンカン・結婚 あらすじ
佐伯小夜(安田成美)は、婚約者である山ノ内亮(加勢大周)との結婚を間近に控え、幸せな日々を送っていた。しかし、結婚式の準備を進める中で、理想と現実のギャップ、家族や友人との摩擦、そして自分自身の将来に対する漠然とした不安に直面する。小夜の親友や、亮の同僚など、様々な立場の人々の恋愛や結婚観がオムニバス形式で描かれ、それぞれの幸福の形を模索する姿が描かれる。
ヴァンサンカン・結婚のキャスト
松永右子 – 菊池桃子
向井薫平 – 石黒賢
森脇玲子 – 中村あずさ
宮原七重 – 相原勇
須賀今日子 – 床嶋佳子
広瀬貴子 – 磯野貴理子
市河清志 – 西村和彦
諸岡慎 – 村井国夫
友部俊一 – 水島新太郎
伊東幸江 – 溝渕美保
坂崎隆司 – 小林稔侍