小さいおうち

山田洋次はカットの積み重ねによって物語をサスペンスとして大胆に作り替えた（小さいおうちの感想）

些細な違いはあっても原作と大体同じ、なんてことはなくて、山田洋次はカットの積み重ねによって物語をサスペンスとして大胆に作り替えている。やはり映画とはそういうものなのだろう。

たとえば、吉岡秀隆が出征前日に松たか子に会いに来なかったと倍賞千恵子が書き残しているのは、原作とは逆なのだが、おそらく映画的ではないという判断があったのだろう。妖しい中嶋朋子と黒木華とのシーンがいささか唐突に挿入されることで、サスペンスに奥行きを出している。
そうした手際は、さすがと思わせる。

小さいおうち　見どころ

昭和初期から戦後の激動期にかけての日本の暮らしと、そこに生きる人々の秘められた人間ドラマを描いた映画。

1. 山田洋次監督が描く昭和の暮らしと人間ドラマ
   山田洋次監督が昭和の日常と、そこに生きる人々の喜怒哀楽を丁寧に描いた。細部にまでこだわった昭和初期の「小さいおうち」の暮らしぶりは、まるでタイムスリップしたかのような感覚を与える。
2. 松たか子と黒木華の繊細な演技
   奥様・時子を演じる松たか子は上品で知的でありながら、秘めた恋に揺れ動く女性の複雑な心情を繊細に表現。女中・タキの若き日を演じる黒木華は、天真爛漫でありながら、奥様への忠誠心と、彼女の秘密を見守る葛藤を瑞々しく演じ、第64回ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞（銀熊賞）を受賞した。
3. 秘められた「愛」と「真実」
   奥様と画家の間に芽生える密やかな恋の行方が物語の大きな軸に。純粋でありながらも、時代の制約の中で苦悩する二人の姿が切なく描かれる。タキの自叙伝には書かれなかった、もう一つの「真実」が明らかになる終盤は大きな感動を呼ぶ。
4. 戦争という時代の影
   穏やかな日常の背景に、日中戦争から太平洋戦争へと向かう激動の時代が横たわる。戦争が人々の生活や心をいかに変容させていくのか、そして「小さいおうち」の平和がいかに脆いものだったのかが鮮明に描かれている。
5. 豪華なキャスト陣
   吉岡秀隆（画家・板倉）、妻夫木聡（健史）、そして倍賞千恵子（晩年のタキ）のほか、片岡孝太郎、吉行和子、橋爪功など、日本映画界を代表する実力派俳優たちが脇を固めている。

映画 小さいおうちのあらすじ

健史の大叔母タキが亡くなり、遺品から赤い屋根の家の絵と自叙伝が見つかる。昭和11年、タキは平井家に奉公し、美しく聡明な妻・時子と小児まひの息子・恭一との穏やかな生活が始まる。新入社員の板倉と時子が親密になり、やがて恋愛関係に発展。戦況悪化で徴兵される板倉に時子から託された手紙をタキは届けなかった。後に平井夫妻は空襲で亡くなる。タキの死後、未開封の手紙が見つかり、健史は板倉が戦後画家になったことを知る。恭一を訪ねると、手紙には時子からの切実な想いが書かれていた。恭一は「母の不倫の証拠」と嘆きながらも、昔タキと板倉に連れられた思い出を語る。

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