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問題のあるレストラン

4.5
真木よう子(問題のあるレストラン) ドラマ
真木よう子(問題のあるレストラン)
問題のあるレストランは、2015年1月15日~3月19日の毎週木曜日22時~22時54分にフジテレビ系「木曜劇場」枠で放送。主演は真木よう子。職場で理不尽な目に遭った主人公が、友人や元同僚とビストロレストランを開店するドラマ。坂元裕二による脚本、並木道子による演出など2013年放送の同枠ドラマ『最高の離婚』と同スタッフによるオリジナルドラマ作品。第84回ザテレビジョンドラマアカデミー賞、助演女優賞 (高畑充希)、ギャラクシー賞(放送批評懇談会)、2015年3月度 テレビ部門 月間賞
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長らく再見したかった坂元裕二の傑作(問題のあるレストランの感想)

FilmarksのおかげでFODで配信していることを知って再見。大げさだが、これこそ文明の利器ではないか。

長らく再見したかった2015年の坂元裕二作品である。なぜあまり取り上げられないのか、やはりこれもまた傑作であろう。この頃までの真木よう子は好きだった(このドラマの女優はみんな好き。豪華キャストである)。

ところで、きゃりーぱみゅぱみゅ(主題歌)のTwitterを叩く人が気にさわるのは、このドラマに出てくる〈悪い男〉たちと同穴に見えるからかも。

問題のあるレストラン 見どころ

  1. 「傷ついた女たち」への徹底的な寄り添い
    坂元裕二は常に「社会の片隅に追いやられた声なき者たち」に目を向けてきたが、本作ではそれが明確に“セクハラ・パワハラ・男社会に傷つけられた女性たち”として描かれている。
    主人公・田中たま子(真木よう子)は、上司に抗議して職を追われた元OLであり、仲間は、引きこもりの料理人、離婚調停中の主婦、トラウマを抱える元キャバ嬢など、「世間からズレてしまった女たち」。
    坂元は彼女たちを被害者ではなく「戦う当事者」として肯定的に描写し、セリフの一言一言に彼女たちの“切実な魂の叫び”を込めた。
  2. 長ゼリフの名手・坂元の“詩のような対話”
    以下のような坂元的名セリフが印象的。
    「どうせ男にはかなわない。どうせ女は可愛いだけ。」
    「だったら戦って、勝って、ぶっ壊せばいいじゃない。」
    登場人物たちは「論理的に強い人間」ではない。だからこそ、感情のままに不器用な言葉をぶつけ合う。
    会話はリズミカルで、時に滑稽、時に鋭く痛烈。“言葉のキャッチボール”ではなく“心の投げ合い”と言える。
    坂元脚本の真骨頂である「詩のように美しく、罵倒のように鋭いセリフ」が次々と飛び交う会話劇は圧巻。
  3. 男社会の縮図としての“対立するレストラン”
    女性たちの「ビストロ フー」に対抗するのは、男尊女卑的な価値観で成功したレストラン「シンフォニック表参道」。
    女たちのチームは寄せ集めで不器用、だが温かくて誠実。男たちのチームは効率重視で冷酷、だが論理的で合理的。
    この対比により、「働く意味とは?」「成功とは何か?」「誰のための職場か?」といったテーマが浮き彫りになる。
    坂元は、単に男を“敵”とするのではなく、「システムの中で加害性を内在化した人間」として描くことで、より深く問いかけている。
  4. 喜劇的な軽さと社会批評の重さの絶妙なバランス
    誰もが欠点だらけで、でも滑稽で愛しい。毎回ドタバタ劇のように始まりながら、終盤には静かな余韻と涙が訪れる。
    この構造は、坂元裕二がのちに『カルテット』や『大豆田とわ子と三人の元夫』でも採用した「軽妙さと深さの融合」の初期形とも言える。
  5. 希望の在りか=“場所”の力
    坂元作品では、“物理的な空間”が希望の象徴になることが多いが、本作ではレストランそのものがその役割を担っている。
    傷ついた人間たちが、自分をさらけ出せる唯一の場所、社会で排除された者が、もう一度「ただの人間」に戻れる場所。この「居場所の再構築」というモチーフも坂元らしい構成である。

問題のあるレストランのあらすじ

田中たま子は、親友への性加害を行ったレストラン、職場で警察沙汰の問題を起こして大手飲食サービス「ライクダイニングサービス」を退職し、裏原宿の雑居ビル屋上の朽ちたペントハウスを改装し、友人や元同僚を集め、ポトフがメインのビストロレストラン「ビストロ フー(bistro fou)」を開店する。当初トラブルが相次いだものの「フー」の評判は次第に上がっていく。向かいにはライクダイニングのレストラン「シンフォニック表参道」があり、たま子の元同僚・恋人だった門司誠人がシェフを務めている。たま子は元同僚の藤村五月と再会し、多くの社員が見ている場で彼女に対して性加害を行ったライクダイニング社長雨木太郎を訴えるが、その過程で図らずも、雨木からパワハラを受けた男性部下がリークしたためにその訴状内容が週刊誌の知る所となって、雨木は辞任、シンフォニックは休業に追い込まれる。
順調に見えた「フー」もまた、クレームを発端に閉店を余儀なくされたが、その300日後、海辺に集った元同僚や友人達が唖然とする中で、今度は海の家を改装してレストラン再建を企むたま子の姿があった。

問題のあるレストランを観る

問題のあるレストランのキャスト

ビストロ フー
 田中たま子(ビストロ フー店長 バンダナ赤) – 真木よう子(高校時代:大橋澪乃
 新田結実(元ライクダイニングサービス社員 バンダナ緑) – 二階堂ふみ(幼少期:吉澤梨里花
 川奈藍里(元ライクダイニングサービス社員 バンダナオレンジ) – 高畑充希
 雨木千佳(シェフ バンダナ黄色) – 松岡茉優(8歳:曽我夏美 / 10歳:本川みのり
 森村鏡子(スーシェフ バンダナ青) – 臼田あさ美(高校時代:木村友紀
 烏森奈々美(ソムリエール バンダナ紫) – YOU
 几ハイジ(パティシエ バンダナピンク) – 安田顕

シンフォニック表参道
 門司誠人(シェフ) – 東出昌大
 星野大智(シェフ見習い) – 菅田将暉
 雨木太郎(社長、千佳の父) – 杉本哲太
 土田数雄(たま子の直属の元上司) – 吹越満
 西脇太一(社員) – 田山涼成
 藤村五月 – 菊池亜希子(高校時代:志田彩良)(第7話 – 第9話)

問題のあるレストランのスタッフ

脚本 – 坂元裕二
音楽 – 出羽良彰、羽深由理
演出 – 並木道子加藤裕将
主題歌 – きゃりーぱみゅぱみゅ「もんだいガール」(ワーナーミュージック・ジャパン / unBORDE)
料理指導 – 石井剛、宮本英也
フードコーディネーター – 住川啓子、山﨑千裕、矢作繭子、エレディタート香織
アクション監督 – 大内貴仁
選曲 – 谷口広紀
音響効果 – 本郷俊介
スタントコーディネート – 鈴村正樹
プロデュース – 清水一幸
ラインプロデュース – 柴田圭子
制作著作 – フジテレビドラマ制作センター

『問題のあるレストラン』は、「エンタメでありながら、社会批評としてのドラマ」です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。

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