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撮影(シュート)もまた戦闘への参加行為なのだ(シビル・ウォー アメリカ最後の日の感想)
大統領選直前の10月に日本公開された映画だが、早くもアマプラ配信。早いな。
大統領が14か月もの間取材を拒否し、3期目に突入し、最大の敵FBIをも解体したため、合衆国は19州が分離独立して内戦状態に陥る。大統領支持の「ロイヤリスト・ステイツ」は劣勢で、カリフォルニアとテキサスによる「ウェスタン・フォース」(WF)、フロリダ州近辺の「フロリダ連合」がD.C.のホワイトハウスを目指して進軍している。という設定なのだが、それぞれの政治的な立場は明らかにされない。そもそもカリフォルニアとテキサスが合同で動いていることが事態の深刻さのみを表している(異星人襲来でもなければあり得ないという)。
マグナム出身のキルスティン・ダンストら4人のジャーナリストが、大統領にインタビューするためにD.C.までの長い地獄を経めぐるロードムービーになっている(この映画は順撮りで製作されたらしい)。その過程で、略奪者を拷問するGSの男たち、激しい銃撃戦、相手の見えない狙撃戦などに遭遇するが、それらが政府側なのかWFなのかフロリダ連合なのかといったことは一貫して説明されない。
プレスのジャケットを着たジャーナリストたちはあくまで中立の「見えない存在」であり、瀕死の戦士たちを救おうともせずカメラを向ける徹底ぶりである(救護は中立さを否定することになるというリアリズム)。兵士たちにとってはいかにも邪魔くさそうだが、文句を言わず、弾幕にさらされる彼らを後ろから引っ張ったりもする。撮影(シュート)もまた戦闘への参加行為という暗黙の了解があるらしい。無表情を崩さないキルスティンの演技が光る。
旅のクライマックスは、ホロコーストを思わせる穴にダンプカーで膨大な死体を放り込んでいる赤眼鏡の兵士との緊迫したやりとりである。銃を向けられたキルスティンらがロイターだと名乗ると、男は「アメリカっぽくない」と言い、引き金に指をかけたままで、どんな種類のアメリカ人なのかとしつこく問う(こういうのを「シボレス」と言うらしい)。兵士を演じているのはキルスティンの夫ジェシー・プレモンス(本来の役者が急きょ降板したため)。いかれた赤眼鏡は彼のアイディアだと言う。
本作は、NYで一向に加わった駆け出しカメラマンのケイリー・スピニー(少女のようにしか見えないが実は25歳である)の成長物語でもある。終盤のキルスティンは意気消沈としてジャーナリストの立場を守りきれなくなる。当初は頼りなかったケイリーは、彼女に代わって最後までシャッターを切り続ける。
シビル・ウォー アメリカ最後の日の見どころ
19の州が合衆国から離脱しテキサス州とカリフォルニア州からなる「西部勢力」と連邦政府による内戦が勃発した近未来の米国を舞台に、ニューヨークから首都ワシントンD.C.へと向かう4人のジャーナリストを描く。「アメリカは内戦に向かうのか」という著書から着想を得ており、米国のA24による製作のもと、英国のDNAフィルムズなどによって制作された。米国ではA24、英国・アイルランドではエンターテイメント・フィルム・ディストリビューターズによる配給で同年4月12日に公開され、日本ではハピネットファントム・スタジオによる配給で2024年10月4日に公開された。
- 見どころ1. 戦場ジャーナリズムの倫理と人間性の喪失
主人公リー(キルステン・ダンスト)をはじめとするジャーナリストたちは、内戦下のアメリカを取材し、暴力や死と隣り合わせの状況で、報道の使命と自身の安全、そして人間性との間で葛藤する。若い写真家ジェシーとの関係を通じて、リーの内面が変化していく。 - 2. 内戦のリアリズム
内戦状態にあるアメリカ各地を舞台に、リアルで緊張感のある戦闘シーンが描れる。終盤のホワイトハウス攻防戦では、戦争の混沌と恐怖が強調され、強烈な印象を与える。映像や音響の演出も臨場感を高める。 - 3. 政治的中立性
映画は、特定の政治的立場を明確にせず、観客に解釈を委ねており、現代の政治的分断を反映しつつ、観客に思考を促す意図がある。 - 4. 報道の役割を問う
戦場の過酷な現実を報道するジャーナリストたちの姿を通じて、観客に倫理観を問う。報道の役割や観客の感情の鈍化がテーマになっている。 - 5. キャストの演技
疲弊しながらも使命感を持つ戦場カメラマンを熱演したキルステン・ダンストは高く評価される。若手写真家ジェシーを演じたケイリー・スピーニーとの師弟関係も、物語に深みを与える。
シビル・ウォー アメリカ最後の日のあらすじ
権威主義的な大統領に反発し、連邦政府から19の州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアは西部同盟を結び、政府軍との間で内戦が勃発、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていく。
シビル・ウォー アメリカ最後の日を観るには?
シビル・ウォー アメリカ最後の日 キャスト
ジョエル – ヴァグネル・モウラ
ジェシー・カレン – ケイリー・スピーニー
サミー – スティーヴン・ヘンダーソン
アニャ – ソノヤ・ミズノ
デイブ – ジェファーソン・ホワイト
トニー – ネルソン・リー
ボハイ – エヴァン・ライ
赤サングラスの兵士 – ジェシー・プレモンス(クレジットなし)
民兵のリーダー – ジェームズ・ヤエガシ
WFの女性軍曹 – ジョニカ・T・ギブス
WFの前線指揮官 – ジャレッド・ショー(クレジットなし)
狙撃兵 – ジン・ハ
観測手 – カール・グルスマン
エディ – エドマンド・ドノヴァン
バトラー警護官 – フアニ・フェリス
大統領 – ニック・オファーマン
シビル・ウォー アメリカ最後の日 スタッフ
脚本 – アレックス・ガーランド
製作 – アンドリュー・マクドナルド、アロン・ライヒ、グレゴリー・グッドマン
音楽 – ベン・ソールズベリー、ジェフ・バロウ
撮影 – ロブ・ハーディ
編集 – ジェイク・ロバーツ
公開 – 2024年3月14日 (アメリカ)、2024年4月12日 (イギリス)、2024年10月4日 (日本)
上映時間 – 109分
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は
内戦が勃発した近未来のアメリカを舞台にしたアクションスリラー映画です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。