Amazon Prime Videoで今すぐ視聴できます!
女性たちの視線の映画(スキャンダルの感想)
2016年、前々々回の米大統領選の時期が映画の舞台。共和党の候補者討論会で司会を務めたFOXニュースの看板キャスター、メーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)がトランプの怒りを買い、一晩で十数回もTwitterを更新する事件から始まる。一方、朝の番組の顔だったグレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)はCEOロジャー・エイルズ(ジョン・リスゴー)のセクハラを拒んで降格される。
この二人は実名の人物だが(そっくりに仕立て上げた特殊メイク技術がすごい)、3人目のマーゴット・ロビーは複数のモデルを投影した架空の人物。さらに局に民主党支持であること、レズビアンであることを隠している同僚ケイト・マッキノンを配している(この二人は昨年の「バービー」でも共演している)。映画は、ロジャーがマーゴットに行ったハラスメントをリアルに描いており、このシーンは本作の白眉であろう。
まず、馘首されたグレッチェンが訴訟を起こし、ロジャーのセクハラ被害者に声を上げるように訴えて、FOXの女性たちが分断される中、メーガンは沈黙を守る。エレベーターにこの3人が乗り合わせて腹を探り合うシーンは第二の見せ場。
終盤はメーガンがついに口を開き、さらにグレッチェンの隠し録りが炸裂して、ルパート・マードックがロジャーに引導を渡すという結末である。
…というワインスタイン事件の前哨戦となった実話をもとにしているものの、本作の脚本はかなり良くできており、テレビ局の華やかな女性たちが交わす視線での描写も鋭いし、視聴率首位を誇っていた保守メディアであるFOXニュース(平均的な視聴者は68歳の男性)の内情が窺えて興味深い。セクハラがどれほどの傷を残し、人を当惑させ、恐怖させるかを訴えながら、映画はマーゴット・ロビーがFOXを去っていく姿を描いたが、この翌年、さらに8年後にトランプが大統領になるという歴史は、本作のプロデューサーであるシャーリーズ・セロンを手厳しく裏切ることになるのだった。
スキャンダル 見どころ
『スキャンダル』は、セクシャル・ハラスメントや権力の乱用といった現代社会の重要な問題を取り上げ、実話を基にした映画。第92回アカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞し、主演女優賞(シャーリーズ・セロン)と助演女優賞(マーゴット・ロビー)にもノミネートされた。特に、シャーリーズ・セロンの演技は高く評価され、彼女が演じたメーガン・ケリーの内面の葛藤や強さがリアルだと評された。映画は#MeToo運動の流れの中で公開され、セクハラ問題に対する社会の関心をさらに高める一因となった。
- 見どころ1. セクハラの構造と被害者の心理を明らかに
セクシャル・ハラスメントがどのようにして組織内で隠蔽され、被害者が声を上げにくい状況が作られているかを描いている。ケイラがロジャーからの不適切な要求に直面するシーンでは、彼女の戸惑いや恐怖はリアルである。
このような描写は、セクハラの被害者が感じる孤立感や無力感を理解する手助けとなるとされている。 - 見どころ2. 権力と「男らしさ」
ロジャー・エイルズのキャラクターは、権力を持つ男性がどのようにしてその地位を利用し、女性に対して不適切な行動を取るかを象徴したもの。社会における「男らしさ」の概念と密接に関連しており、その危険性を浮き彫りにしている。
彼のような人物が組織のトップに立つことで、セクハラが見過ごされる環境が生まれることを示している。 - 見どころ3. 女性たちの連帯と勇気
グレッチェンやメーガン、ケイラといった女性たちは、それぞれ異なる背景や立場を持ちながらも、共通の敵に立ち向かうことで連帯を深めていく。その行動は、個人の勇気がどのようにして組織や社会を変える力となるかを示している。
スキャンダルのあらすじ
2016年。FOXニュースのベテラン女性キャスター、グレッチェン・カールソンは、人気番組の担当を降ろされたのを機に、絶大な権力を笠に着て長年セクハラを繰り返してきたロジャー・エイルズCEOを訴える準備を進める。一方、看板キャスターのメーガン・ケリーは、女性蔑視が目に余るドナルド・トランプ大統領候補への対決姿勢を鮮明にしていく。そんな中、メインキャスターの座を狙う野心あふれる若手ケイラ・ポスピシルは、ついにロジャーとの面接のチャンスを得る。
スキャンダルを観るには?
スキャンダルのキャスト
グレッチェン・カールソン – ニコール・キッドマン
ケイラ・ポスピシル – マーゴット・ロビー
ロジャー・エイルズ – ジョン・リスゴー
ベス・エイルズ – コニー・ブリットン
ジェス・カー – ケイト・マッキノン
ダグラス・ブラント – マーク・デュプラス
ギル・ノーマン – ロブ・ディレイニー
ルパート・マードック – マルコム・マクダウェル
スーザン・エストリッチ – アリソン・ジャネイ
スキャンダルのスタッフ
脚本 – チャールズ・ランドルフ
製作 – シャーリーズ・セロン、A・J・ディックス、ベス・コノ、チャールズ・ランドルフ、ジェイ・ローチ、マーガレット・ライリー
音楽 – セオドア・シャピロ
撮影 – バリー・アクロイド
編集 – ジョン・ポール
公開 – アメリカ 2019年12月20日/日本 2020年2月21日
上映時間 – 108分
『スキャンダル』は「FOXニュース」で起きた実在のセクハラ事件を題材にした人間ドラマです。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。