ビバリウム

イモージェン・プーツ(ビバリウム)
イモージェン・プーツ(ビバリウム)

2019年のアイルランド・デンマーク・ベルギーのホラー映画。原題は「Vivarium」。監督はロルカン・フィネガン、出演はイモージェン・プーツとジェシー・アイゼンバーグなど。

ビバリウムのあらすじ

新居を探している若いカップルのジェマとトムは不動産業者に「ヨンダー」という住宅地を案内される。そこはすべての家が同じ外観で、不気味なほど整然としていた。見学中、案内人が突然姿を消し、二人は帰ろうとするが、どの道を進んでも同じ家に戻ってしまう。やがて食糧の入った箱、さらに赤ん坊の入った箱が届けられ、育てるよう指示される。トムは庭に穴を掘り続け、次第に衰弱していく。

メチャクチャ後味が悪いが破綻のないホラー(ビバリウムの感想)

監督はアイルランド人で、かの国にも住宅問題があり、まったく同じ見た目の建売住宅に住み、味気ない加工食品を食べ続けるディストピアのインスピレーションは、そこから得たという(ヨンダーの住宅はある時期のアイルランドで大量に作られた建売デザインらしい)。

メインキャストは、 可愛い子ちゃんタイプのイモージェン・プーツ(「 28週後…」や ボグダノヴィッチの「 マイ・ファニー・レディ」のヒロイン)と、 ジェシー・アイゼンバーグ(「 ゾンビランド」の語り手である)の二人だけ。

住宅が高騰する前に手に入れたいと考えた二人は不動産屋を訪れ、ヨンダー(向こうとか彼方の意)という広大な郊外住宅団地を見学することに。ところが案内したくれた不動産屋がいつのまにか姿を消し、地平線まで続く迷路のようなヨンダーから出られなくなってしまう。やがて段ボールに入った赤ん坊が届けられ、「育てれば解放される」とのメッセージに、二人はヨンダーでの生活を始めるが…というストーリーである。

実は物語の序盤に、小学校?の教師であるイモージェン・プーツが、カッコウに落とされた鳥の死骸について生徒から質問されて、托卵のことを説明するくだりがある。つまり二人は「人間ではない子供」を育てるためにヨンダーに閉じ込められたのだ。

監督は「 トワイライトゾーン」などの影響を認めているが、98日後、赤ん坊はすでに見た目10歳ほどに成長し、空腹や不満を長い金切り声で訴える人間離れした存在になる(中身は3、4歳なのだ)。犬の鳴き声を真似して走り回るのは子供らしいと言えなくもないが、にこりともせずに二人が言い争う様子などを芝居ぶった口調で正確に物真似する様子は、コミュニケーションの不可能性を感じさせ、かといって無視することもできない。二人はだんだん狂いはじめ、ジェシーは庭に穴を掘る作業に無意味に熱中して、イモージェンと「子供」から孤立していく。

初めに書いた画一的な生活様式や、育児をめぐる夫婦問題などの寓意も見て取ることができるが、奇妙な「子供」をただ育てるだけ(名前も与えられない)の単調な生活の描写がなんとも後味が悪い映画である。


ビバリウムのキャスト

ェマ – ジェシー・アイゼンバーグ
マーティン – ジョナサン・アリス
母親 – ダニエル・ライアン
少年 – セナン・ジェニングス
成長した少年 – エアンナ・ハードウィック

ビバリウムのスタッフ

監督 – ロルカン・フィネガン
脚本 – ギャレット・シャンリー
原案 – ロルカン・フィネガン、ギャレット・シャンリー
製作 – ジョン・マクドネルブレンダン・マッカーシー
製作総指揮 – ロルカン・フィネガン、 イモージェン・プーツトッド・ブラウンジェシー・アイゼンバーグブルネラ・コッキリアマキシム・コットレイゲイブ・スカルペッリライアン・シャウプニック・スパイサーアラム・ターツァキアン
音楽 – クリスティアン・エイドネス・アナスン
撮影 – マクレガー
編集 – トニー・クランストゥーン
製作会社 – ピンポン・フィルム、ファンタスティック・フィルムズ、フラカス・プロダクションズ、XYZフィルムズ
配給 – イギリス・アメリカ ヴァーティゴ・リリーシング、日本 パルコ
公開 – イギリス・アメリカ・アイルランド 2020年3月27日、日本 2021年3月12日
上映時間 – 98分

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