哭声/コクソン

チョン・ウヒ(哭声/コクソン)
チョン・ウヒ(哭声/コクソン)

2016年公開の韓国映画。『チェイサー』『哀しき獣』ではスピード感を重視して直接的な暴力描写を用いたナ・ホンジン監督が、一転してシャーマニズムのほかキリスト教に関する要素を取り入れ、徐々に追い詰められる心理を丹念に捉えた作品。原題は「곡성(哭聲)」(英題:The Wailing)で、実在する韓国の地名「谷城」(ナ・ホンジン監督が幼少期に住んでいた全羅南道谷城郡)と、「泣き叫ぶ」という意味の「哭声」をかけてある。20世紀フォックスで配給され、韓国国内では観客動員数687万人を超える大ヒットとなった。韓国でのレーティングはR15+。キャッチコピーは「疑え。惑わされるな。」。謎の男を怪演した國村隼は、外国人として初めて青龍映画賞で賞を得た。日本人の國村がキャスティングされた理由は、イエス・キリストを「歴史上最も世界に混乱を与え、疑念を持たれた人物の一人」と評したナ監督の、「同じアジア人ではあるものの韓国人とは違う”よそ者”が必要だった」という考えによる。

哭声/コクソンのあらすじ

何の変哲もない田舎、谷城(コクソン)で、村人が家族を惨殺する事件が続けて発生。いずれも動機はなく、幻覚性の植物を摂取して錯乱したための犯行と発表されたが、謎の発疹を発症するなど不可解な点もあり、村人たちの中では山中で暮らす謎の日本人が関わっているとささやかれはじめる。警察官のジョングは当初噂をまともに取り合わなかったが、数々の異常事態を目撃して徐々に疑念を抱き、一度は断念した通訳の神父らとともに男の家を訪れた。そこで得体の知れない祭壇や事件の現場を写した写真などと娘ヒョジンの靴を見つけ、疑いを決定的にする。ヒョジンは高熱を発したもののすぐに回復したが、苦手なはずの魚を食らい、父親に罵詈雑言を吐くなどの奇行を繰り返し、一連の容疑者と同じ発疹が現れた。
家族が呼んだ祈祷師のイルグァンは、日本人をこの世のものではない悪霊と断じ、抹殺のための儀式を行うが、苦しむヒョジンを見かねたジョングはイルグァンを追い出してしまう。一方、同じ時間に男も山中で儀式を行っていた。その後、ヒョジンの容態はさらに悪化し、発疹も全身に広がっていく。娘を案じる一心で仲間とともに山中の家に押しかけたジョングは、ついに男を追い詰めるが…

哭声/コクソンの感想

ナ・ホンジン連続視聴の続き。今回はバイオレンスアクションではなくオカルトである。

映画はルカによる福音書24章37-39節を掲げてから本編に入るのだが、ほぼ同じ台詞をクライマックスで國村隼が口にする。その姿は悪魔そのものなのだが、「人は見たいものしか見ない」という監督の言葉通り、村の助祭の目を通した描写なのだろう。実際は掌に聖痕をもつキリストなのである(映画にはキリスト教のモチーフが散りばめられている)。

その名も谷城(コクソン)という名の村で家族惨殺事件が立て続けに起こり、幻覚性のキノコが原因とされる。クァク・ドウォン演じる主人公はごく普通の警官なのだが、娘がやがて発症する(憑き物、湿疹の症状)。

この現象をめぐって3人の霊能力者が登場する。一人が國村で、旅行中だと語る日本人。もう一人がドウォンの義母が呼んだチャラい祈祷師。そしてちょくちょく姿を見せつつ最後に急にクローズアップされる白い服の女(チョン・ウヒ)。誰が何のために呪いをかけているのかは最後までわからない仕掛けになっていて、途中、「謗法」に出てきたような祈祷師と國村の祈祷合戦などもあるのだが、実は二人はグルであり、それぞれ異なる相手に術をかけていたことが後でわかる。

國村の演技は圧巻。毎朝「オードリー」で森繁久彌のようなチョビ髭の國村を眺めているのだが、つくづく年季の入りまくった役者である。

哭声/コクソンのキャスト

ジョング:クァク・ドウォン
イルグァン:ファン・ジョンミン
ムミョン:チョン・ウヒ
ヒョジン:キム・ファニ
ソンボク:ソン・カングク
イサム:キム・ドユン

哭声/コクソンのスタッフ

監督:ナ・ホンジン
脚本:ナ・ホンジン
撮影:ホン・ギョンピョ
音楽:チャン・ヨンギュ、タルパラン
プロダクション・デザイン:イ・フギョン
衣装デザイン:チェ・ギョンファ
編集:キム・ソンミン
録音:キム・シニョン
照明:キム・チャンホ

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