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下の世代の非難を浴びる大人たちの苦渋(終りに見た街の感想)
売れない脚本家である大泉洋は、なりゆきで書くことになった終戦記念日ドラマの資料を持ったまま、家族(妻と息子と娘、実母、愛犬)もろとも昭和19年6月にタイムスリップしてしまい、エキストラの旧友(堤真一)父子とともに、終戦までの日々をなんとか生き抜こうとする。という前半がクドカンの呼吸で語られるのだが、後半は空気が変わり、まさかの容赦ないバッドエンドに、あらためて山田太一原作であることを思い知らされる。
本作は山田脚本で1982年、2005年の二度ドラマ化されているが、1982年版(ここで見られる)の主人公を演じたのは1940年生まれの細川俊之だったから、ぎりぎり、「戦争を知っている」設定だった。本作では83歳で認知症になりかけの三田佳子が、戦時中の記憶を持つ存在として加わっている。
主人公たちが東京大空襲を下町の人々に知らせようと奮闘する展開や、一家が住む荻窪が記録にない大規模な空襲に壊滅させられ、(おそらくは新型爆弾によって)左腕を吹き飛ばされた瀕死の大泉が目を覚ますと、瓦礫の向こうに東京の高層ビルが(前2作では東京タワーが)見える、というラストは原作と同じ。
「戦争はこんなだったんだ」と主張する、戦争に協力的でない父親たちを、子どもたち(堤の息子と大泉の娘の當真あみら)が辛辣に非難しはじめるクライマックスは、山田脚本でおなじみの世代間断絶の仕掛けだと思うが、もはや2024年の視聴者には届かないかもと思わされた。
勝地涼のプロデューサー(「同じ顔」)の意味はさだかでなく、堤真一(1982年版ではなべおさみ、2005年版では柳沢慎吾が演じる)の何か信用できない感じもひっかかるのだが、タイムスリップなのか主人公の夢なのか、すべては視聴者の想像に丸投げである。今では考えられないが、そういえば昔はそういうドラマが多かった。
終りに見た街 見どころ
2024年9月21日にテレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアムとして放送。山田太一の原作を宮藤官九郎が脚本化し、大泉洋が主演を務めた、戦争の記憶を風化させず、現代にも通じるメッセージを持つ作品である。現代の家族が戦時中の昭和19年にタイムスリップし、戦争の現実と向き合う姿を描いている。
- 見どころ1. 戦争を再体験するということ
主人公・田宮太一(大泉洋)一家が昭和19年にタイムスリップし、戦時中の生活を体験することで、戦争の恐怖や理不尽さをリアルに描いた。現代の価値観を持つ家族が、戦時中の厳しい現実に直面することで、戦争の非情さが浮き彫りになる。 - 2. ラストシーンの衝撃と解釈
物語の終盤、田宮は爆撃に巻き込まれ、目を覚ますと片腕を失い、家族も見当たらない状況で、荒廃した現代の東京の街が広がる衝撃的なラストを迎える。この結末については様々な解釈が寄せられている。 - 3. 戦争の記憶と現代への警鐘
ドラマは、戦争が過去の出来事ではなく、現代にも起こり得る危機であることを示唆しています。特に、若者たちが戦争に感化されていく描写や、終戦を迎えても現代で再び戦争が起こる可能性を示すラストは、視聴者に強い警鐘を鳴らしています。 - 4. 宮藤官九郎の脚本と現代性
宮藤官九郎は、原作のテーマを尊重しつつ、現代の視点を取り入れて脚本を手がけました。戦争体験者の記憶を次世代に伝えることの重要性や、現代社会における戦争の影を描くことで、視聴者に深い問いを投げかけています。
終りに見た街 あらすじ
脚本家の田宮太一は妻ひかり、思春期の娘信子、反抗期の息子稔、認知症の母清子と平凡な日常を送っていた。ある日、終戦80周年記念ドラマの脚本を依頼され、戦争資料を読みながら寝落ち。目覚めると家族全員が太平洋戦争中の昭和19年6月にタイムスリップしていた。
父の戦友の甥・小島敏夫とその息子・新也も同様にタイムスリップしており、合流した彼らは戦時下の厳しい現実に直面する。ひかりは針仕事を始め前向きに適応していくが、太一はなかなか現実を受け入れられずにいた。
終りに見た街を観るには?
終りに見た街キャスト
田宮ひかり – 吉田羊
小島新也 – 奥智哉
田宮信子 – 當真あみ
田宮稔 – 今泉雄土哉
五十嵐 – 神木隆之介(特別出演)
先輩俳優 – 田辺誠一(特別出演)
後輩俳優 – 塚本高史(特別出演)
農夫 – 西田敏行(特別出演)
老人 – 橋爪功(特別出演)
寺本真臣 – 勝地涼
田宮清子 – 三田佳子(幼少期 – 松岡夏輝)
小島敏夫 – 堤真一(高校時代 – 望月春希)
黒焦げで死んでいく男 – 猪野学
小島敏彦 – 奥智哉(二役)
憲兵 – 小久保寿人、佐藤祐基
小島敏夫の父親 – 緋田康人
新也の同僚のミリタリー系ユーチューバー – 篠原悠伸
清子のヘルパー – 伊田臣弥
防空壕に避難した被災者 – 真織、阿南敦子、松本享子
工員 – 吉成浩一、小沼朝生
終りに見た街 スタッフ
脚本 – 宮藤官九郎
演出 – 片山修
時代考証 – 天野隆子
風俗考証 – 刑部芳則
軍事指導 – 越康泰
アクションコーディネーター – 富田稔
エグゼクティブプロデューサー – 内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー – 中込卓也(テレビ朝日)、後藤達哉(テレビ朝日)、山形亮介(角川大映スタジオ)、和田昂士(角川大映スタジオ)
制作協力 – 角川大映スタジオ
制作著作 – テレビ朝日
『終りに見た街』は、戦争の記憶を風化させず、現代にも通じるメッセージを持つ作品です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。
終りに見た街の原作
東京近郊に住む平凡な家族は、ある朝、戦時中(昭和19年)の日本にタイムスリップしていた――信じられないようなSF的設定で始まる問題作。家族が投げ込まれた世界は、戦時下の「食糧不足」「言論統制」「強制疎開」「大空襲」の時代だった。憎むべき〈戦争〉の時代に、〈飽食した〉現代人はどう立ち向かうのか。太平洋戦争末期、敗戦へと向かう日本を鮮烈に描きながら、驚くべき結末が待ちうける戦慄の寓話。