萩尾望都的な少女漫画的SF(静かなる海の感想)
韓国では珍しいSFなのだが、登場人物が11人だったり、野生的なクローン少女が出てきたり、なんとなく萩尾望都的な世界観のようにも見える切ない話を、海=豊穣な水のイメージで繋いでいる。なかなかの佳作である。
動物行動学者のペ・ドゥナは、航空宇宙局の命により、謎のカプセルを回収するために、水資源が枯渇した地球から、閉鎖された月基地に送られる。チームはエンジニアや医師、軍人ら11人。ペ・ドゥナは基地の研究責任者だった姉からの最後のメッセージ「ルナを探せ」の意味を知るために参加したのだった。
基地の閉鎖理由は放射能漏れとされていたが、その痕跡がないにもかかわらず、大量の溺死した研究員が発見された。一行は秘密とされていたカプセルの中身が「月の水」と呼ばれるウイルスで、研究員たちの死因との関連を突き止める。月の水は生体に取り込まれると無限に増殖し、肺を満たして溺死させてしまうのだった。
ほぼ全編が基地内を舞台とするため単調になりがちなところを、のっけから着陸に失敗して自力で地球に戻れなくなったり、当局が揉み消したクローン体実験を揉み消そうとする韓国政府や航空宇宙局の局長の思惑や基地閉鎖の経緯が明らかになったり、月の水とバランスをとって繁茂する地下植物が出てきたり、資源を付け狙うマフィアのスパイがメンバーに潜んでいたり、と最後まで飽きさせない作りになっている。「エイリアン2」のニュートのような役割で野獣化したクローン少女が登場する。
ラストはなんだか曖昧に終わっているが、ルナは金魚のクローンだから空気がなくても生きられるのだろう。隊長は生きていると思う。
静かなる海 見どころ
韓国には珍しいSFスリラーで、資源が枯渇した近未来の地球を舞台に、月面基地での極秘ミッションを描いている。チェ・ハンヨン監督が2014年に制作した同名の短編映画を基にしており、短編のコンセプトを拡張し、全8話のドラマシリーズとして再構築されたとのこと。ハン隊長(コン・ユ)の生死やルナの行方など、多くの謎が残されたまま最終話が終了しており、続編が期待されているが、2025年5月時点で公式な発表はない。
- 見どころ1. 水資源の枯渇と階級社会は現実のメタファー
地球上の水資源が枯渇し、配給制度が導入された社会という設定は、現代社会における資源の不平等分配や環境問題への警鐘である。 - 見どころ2. 「月の水」の謎
月面基地で発見される「月の水」は、人体に触れると急速に増殖し、溺死を引き起こす特性を持つ。この未知の物質を巡る研究と、それに伴う人体実験の倫理的問題が物語の中心となっている。 - 見どころ3. クローン少女ルナの存在
基地で発見されるクローン少女ルナは「月の水」に適応した唯一の存在であり、科学の進歩と人間の倫理観との間で揺れる登場人物たちの葛藤を象徴している。
静かなる海のあらすじ
砂漠化によって水も食料も枯渇してしまった未来の地球。月に派遣された特別チームの隊員たちは、今や廃墟となった月面の研究施設から謎のサンプルを回収する任務に就くが、彼らを待ち受けていたのは月面に沈む恐ろしい秘密だった。
静かなる海を観るには?
静かなる海のキャスト
ソン・ジアン博士 – ペ・ドゥナ:宇宙生物学者。
ハン・ユンジェ探査隊長 – コン・ユ
リュ・テソク大尉 – イ・ジュン:チーフエンジニア。