2022年のイギリス・アメリカ合衆国のホラードラマ映画。原題は「Men」。監督・脚本はアレックス・ガーランド、出演はジェシー・バックリーとロリー・キニアなど。夫の死を目撃した過去のトラウマと目の前に現れる同じ顔の男たちの恐怖に対峙する女性を描いている。
MEN 同じ顔の男たちのあらすじ
ロンドンのキャリアウーマン、ハーパーは夫に愛想を尽かして離婚を迫ったが、夫は逆上し、マンションの上層階から転落死を遂げる。心に傷を負ったハーパーは静養のために田舎の豪奢な館を借り、一人で滞在することに。しかし森の散策を楽しんでいると、浮浪者のような全裸の男にストーカーされ、警察を呼ぶ羽目に陥る。この村の男たちは、放浪者も館の管理人も、教会の司祭も警官も、なぜか同じ顔をしていた。しかしハーパーは服や髪型、印象も異なるせいか、気づかない。
ハーパーは癒しを与えるべき司祭から、夫の死について責められたり、警官が夜中に館の庭に現れて、一瞬で消えたり、次々と怪現象に襲われる。女友達ライリーにスマホで連絡したが、電波状態が悪く上手く伝わらない。
同じ顔の男たちは入れ代わり立ち代わり館のハーパーを襲う。男の腹が大きく膨れたかと思うと、次の成人の男が産まれ、最後には死んだはずの夫が現れた。夫から「愛」が欲しいと言われても、溜息しか出ないハーパー。明け方にライリーが車で駆け付けた時、ハーパーは血まみれの館の庭で、一人ポツンと佇んでいた。なぜかライリーは妊娠中で、腹は大きく膨らんでいた。
テッテ的に攻撃される男性性(MEN 同じ顔の男たちの感想)
いやはや、凄まじいミサンドリーというべきか。クライマックスでは全裸の男が少年を産み、少年、牧師を産み、牧師、ジェフリーを産み、ジェフリー、元夫を産むのだが(この一連のシーンはかつての「サイレントヒル」に匹敵する衝撃的なもので、つまり「やり過ぎ」である)、「あなたは何が欲しいの?」と問われた夫がしれっと「愛だ」と答えると、「MEN」というタイトルがドーンと出るという按配で、テッテ的に男性性が攻撃されている。
村の男たちを一人で演じているのはロニー・キニアだが(夢に見そうだ)、それが同じ顔かどうかは重要ではなく、ヒロインジェシー・バックリーにはそう見えているというだけで、出てくる男がどいつもこいつも女を支配し、侮蔑し、欲情する男の本性丸出しの怪物なのは、ミサンドリーの産物と言える。全裸男はあろうことかタンポポの種子をバックリーに顔射する。
禁断のリンゴに始まり、グリーンマン化する全裸男やら、陰唇を指で開くシーラ・ナ・ギグ(アイルランドでは珍しくないらしい)やら、白鳥を名乗りレダならぬバックリーを犯そうとする牧師やら、宗教や神話のモチーフは渋滞している。
かつての荘園なのだろう美しい舞台はCotsonと二度説明されるが(cot+sonなのだろう)、撮影されたのはグロスタシャーとウィジントン。映画の前半は完璧な構図で、楽園のような風景を描いている。
MEN 同じ顔の男たちのキャスト
ハーパー・マーロウ(主人公の未亡人) – ジェシー・バックリー
ジェフリー(カントリーハウスの管理人、裸の男、牧師、パブのオーナー、警察官、サミュエルの顔、パブの常連客の2人など) – ロリー・キニア
ジェームズ・マーロウ(ハーパーの亡夫) – パーパ・エッシードゥ
ライリー(ハーパーの友人) – ゲイル・ランキン
警察のオペレーターの声 – ソノヤ・ミズノ
MEN 同じ顔の男たちのスタッフ
監督 – アレックス・ガーランド
脚本 – アレックス・ガーランド
製作 – アンドリュー・マクドナルド、アロン・ライヒ
音楽 – ベン・ソールズベリー、ジェフ・バーロウ
撮影 – ロブ・ハーディ
編集 – ジェイク・ロバーツ
公開 – アメリカ 2022年5月20日、イギリス 2022年6月1日、日本 2022年12月9日
上映時間 – 100分
MEN 同じ顔の男たちを観る
MEN 同じ顔の男たちを観た人の考察
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関係性が完全に壊れた後に自死をほのめかしたり、「私に何を求めているの?」と訊かれて「愛だ」と答えることのヤバさ。
様々に解釈可能なホラー映画『MEN 同じ顔の男たち』の自分流解釈(考察?)(肉球どろん) -
女性の観客は多大な不快感と嫌悪感に苛まれただろうし、男性の観客は視覚的グロテスクさというエンタメ要素に感情が上書きされてしまったのではないか。
『MEN 同じ顔の男たち』考察&レビュー ~若干のモヤモヤを添えて~(桐崎鶉) -
作り手は「男なんてクズ」と思って作ったのかもしれないし、考察なんて人それぞれ。自分が考える様に楽しめばいいと思っている。
映画あれこれ雑感(yoshirinn)