パラドックスなしのノーテンキ・ティーンズムービー(タイムカットの感想)
ヒロインのマディソン・ベイリーは「アウターバンクス」という人気ティーンズドラマで有名な人で、本作は「BACK TO THE FUTURE” meets SCREEM」と銘打たれている。
マディソンは、NASAのインターンシップに合格するほど学業優秀な女子高生で、死んだ姉の身代わりとして両親に育てられたことに不満を持っていた。姉サマーは仮面のシリアルキラーに殺されたのだが、マディソンはサマーの命日にタイムマシンを発見、彼女が死んだ2003年にタイムスリップしてしまう。
彼女は姉の通っていた(そして21年後に自分も通っている)ハイスクールを訪れるのだが、そこで2003年のファッションや音楽に出会い衝撃を受けるくだりがある。日本で言えば平成15年の世界に迷い込むといったところか。小泉政権下で郵政が民営化し、銀行が合併を繰り返し、イラクで戦争が始まり、六本木ヒルズがオープンし、早稲田のサークル「スーパーフリー」が検挙され、住基ネットが稼働を始め、Jファンがボーダフォンになり、地デジ放送が開始された年だ。正直、たいして「昔」とも感じられないが、2024年の女子高生にとっては大カルチャーショックなのであろう。何しろスマホもSNSもないのだ。
姉の友達で物理の天才のクインの助けで、タイムマシンの機構を調べたマディソンは、2024年に帰るためには、自分(と姉)の父親が勤める地元企業ソナーにある反物質燃料が必要らしいことを知る。マディソンは姉の死を食い止めたいが、もしそれに成功したら、身代わりとして生まれてきた自分は消滅してしまうかもしれないた悩むことに。殺害日当日、ソナーの研究室から反物質燃料を盗み出したマディソンとクインはサマーの殺害を食い止めた。仮面のシリアルキラーの正体はなんとクインだった。彼はサマーに振られて逆恨みし、タイムマシンを開発してから2003年に戻ってサマーに復讐していたのだった。
…ということで、あとはハッピーエンドになるのだが、かいつまんでも、かように説明が長くなるのは、やはりプロットが練り込まれていないからだろう。たとえば殺人鬼のクインはどこから来たのか判然としない。
なお、この話のタイムトラベルは過去と未来が分断されており(世界線が分岐するということ)、親殺しのパラドックスは生じない仕組みになっている。したがって、サマーが死ななくてもマディソンは消えないので、彼女は2003年にとどまって、この時代でNASAのインターンシップ試験を受ける。
悪い方のクインはサマーの友達などを何人も殺していていたり、2024年の二人の両親は娘を二人とも失ったりしていることになるのだが、どうもそのへんは問題にならない、ノーテンキな映画なのだった。
タイムカットのあらすじ
2024年から2003年にタイムスリップしてしまった女子高生は、仮面をつけた殺人鬼に殺される前の元気な姿の姉と出会う。果たして彼女は、未来を壊すことなく過去を変えることができるのか?
タイムカットを観る
タイムカット 見どころ
タイムトラベルとスラッシャーホラーを融合させた映画で、その斬新さやノスタルジー要素は評価されているが、ストーリーの深みやキャラクターの描写は物足りない。約91分と短く、テンポは良い。
- 見どころ1:タイムトラベルとスラッシャーの融合
タイムトラベルとスラッシャーホラーを組み合わせた新しい試みであることが見どころ。ルーシーは2003年にタイムスリップし、姉を救おうとする。 - 見どころ2:2000年代初頭はすでにレトロ
2003年の描写には、アヴリル・ラヴィーンやヒラリー・ダフの楽曲が使用されるなど当時のファッションや音楽が取り入れられている。 - 見どころ3:主人公ルーシーのパラドックス
ルーシーは姉の死後に生まれているので、過去を変えると自分の存在が消える可能性がある。この葛藤が物語の中心となる。 - 見どころ4:姉サマーとの関係
ルーシーとサマーの姉妹関係は、家族の絆や愛情のテーマである。サマーを演じるアントニア・ジェントリーの演技が見どころ。 - 見どころ5:タイムパラドックスの扱いが浅い!
タイムパラドックスの詳細な説明はない。 - 見どころ6:殺人鬼の正体
殺人鬼の正体には意外性があるが、動機や行動はよくわからない。
タイムカットのキャスト
アントニア・ジェントリー
マイケル・シャンクス
グリフィン・グラック
レイチェル・クロフォード
ジョーダン・ペトル
ミーガン・ベスト
サミュエル・ブラウン
シドニー・サビストン
カティーム・オコナー