モンローが死んだ日の感想
「心療中」を思わせる省略された描写に引き込まれるが、この後は小池真理子の恋愛ミステリーになる。
モンローが死んだ日の見どころ
小池真理子原作の大人のラブサスペンスで、孤独な中年女性と若き精神科医の出会いを中心に展開する。
主人公・幸村鏡子(鈴木京香)は軽井沢に住む未亡人で、夫の死後、心身のバランスが崩れ、生活が停滞している。彼女が心療クリニックを受診し、「眠れる」日々を取り戻す過程が描かれる。
精神科医・高橋(草刈正雄)は、年下ながら優しく穏やか。治療者と患者という関係性を超えて、「孤独を共有する者同士」の恋が自然に芽生える。食事を共にし、家庭的な時間を重ねていく。
しかし、高橋がある日突然姿を消すことで、恋愛ドラマがミステリーへと急転調する。視聴者は「ただの年の差恋愛ではなかった」と引き込まれ、ドラマのトーンが急に緊張したものに。
タイトルは、“誰かを本当に見ているのか?”という問いを象徴している。
鏡子が夫や記憶について語る中、草折の塔や時計といった小道具が「時間・記憶・死」と重層的にリンクしている。精神科医の本当の正体や職業にまつわる謎が、静かなシーンの中に少しずつ張り巡らされている。
本作はあくまで“静かな語り口”で展開すえうが、サスペンス性を後半に温めて爆発させる構成。鏡子自身の心の闇と、高橋の隠された背景が明かされたとき、登場人物の内面を揺るがすドラマとなる。
人生の閉じかけたページに再び灯をともす“遅咲きの恋”と、“心の中の真実”を静かに解きほぐす、大人の心理サスペンス、といったところか。
象徴アイテム、時計・塔・モンロー本
本作の小道具は、心理の刻印として扱われる。時計・塔・モンロ―本が、主人公・鏡子の失われた時間、自分を取り戻す高揚、そして“どう死に、どう生きるか”という命題を一貫して体現しているのだ。
時計:時間・記憶・心の停滞の象徴
鏡子は夫の死後、生活のリズムと心の時間軸を失った状態。劇中、時計がたびたび登場するのは、“止まった時間”を暗示する演出。クリニックや鏡子の自宅での“時計を見る仕草”により、彼女が自分の再生過程を意識しながらも「前に進めない意識状態」を視覚化している。
塔:心理的な孤立と高揚のメタファー
画面に塔や高台が映るシーンは、鏡子の孤独を象徴している。視線の高さは、彼女が周囲から隔絶された「孤高の未亡人」であることを示す構図。塔を見つめる鏡子のカメラアングルが俯瞰から仰角に変化する瞬間、高揚感や人生の変化の兆しとなる。心理的な閉じこもりと、それを越えつつある揺らぎの間を象徴する二重性を塔が担っている。
モンロー本:欲望と死、生きることへの問いかけ
マリリン・モンローに関する書籍は、表層的には“セックスシンボルの死”の意味。モンローは「若く美しく死んだ女性」の代名詞であり、鏡子がその本を読むシーンには「死の美化」と「生への葛藤」が交差している。何気ない本のページをめくる仕草に、「私はどう死にたいのか、あるいはどう生きたいのか?」という問いが潜んでいる。
モンローが死んだ日を観るには?
モンローが死んだ日 キャスト
幸村鏡子 – 鈴木京香
高橋智之 – 草刈正雄
長谷川康代 – 麻生祐未
高橋美緒 – 佐津川愛美
平井昌夫 – 宇崎竜童
宇津木春子 – 根岸季衣
その他
神崎朱莉 ‐ 梶原ひかり
原島富士雄 ‐ 唐沢民賢
堀川看護師 ‐ 富田望生
駒田一志 ‐ 中村靖日
高橋智之 ‐ 日野陽仁
若宮温人 ‐ 金井勇太
モンローが死んだ日 スタッフ
モンローが死んだ日の原作(小池真理子)
『サンデー毎日』での連載を経て、2015年6月に毎日新聞出版より刊行。
軽井沢にほど近い、別荘と住宅が混在する静かな森の一画。 2 匹の猫と暮らす59歳の幸村鏡子は、夫を亡くして以来、心身の不調に悩んでいた。意を決してクリニックを受診し、独身で年下の精神科医、高橋と出会う。少しずつ距離を縮め合い、幸福な時を紡ごうとしていた矢先、突然、高橋は鏡子の前から姿を消してしまった……。それぞれの孤独を生きる男女の心の揺れを描いた濃密な心理サスペンス。