終わった人の感想
内館牧子の小説の映画化で、監督は中田秀夫。中井貴一・キムラ緑子で舞台化もされている。
元ラガーマンで東大、メガバンクと進んだものの目が出ず、関連子会社の専務止まりで定年を迎えた舘ひろしが、社員たちに見送られながら「定年は生前葬か」と呟くシーンから話は始まる。
年下妻の黒木瞳は自分の美容院を開く準備に忙しく、ここで熟年離婚の話になるのかと思ったが、そうはならず、時間を持て余した舘がジムに通ったり、カルチャースクールに通ったりして「終わった人」として過ごす描写が続く。身につまされる人も多かろう。

黒木瞳(終わった人)
そのうち、経歴を見込まれてIT企業の顧問に就任する。
長身でスーツが似合う舘ならではで、ここまではいいのだが、成り行きで急逝した社長の代わりに代表となった途端にオフショア開発先が逃げ、会社はあっさり倒産。負債9千万を個人返済しなければならなくなる。
合間にカルチャースクールの受付嬢である広末涼子とのロマンスなどもある。
もちろん空振りに終わるのだが、妻と娘に「俺は恋をしている!」という無邪気な宣言に、眉ひとつ動かさず「良かったじゃない」という反応をした黒木瞳は、しかし借金を背負ったと知るや顔色を変える。

広末涼子(終わった人)
このヒロスエのあたりから話が変になり、童話作家を目指すヒロスエに「今までやって来て目が出なかったのだから」と断念を迫る主人公の保守性は、その後も何の反省にもつながらない。
会社が起死回生したりするのかと思うとそれもない。
結局、個人資産で8千万を返済し(いくらメガバンク出身とはいえ、1億近い資産があるはずという内館牧子の感覚が疑われるところだ)、夫婦は離婚。
残り1千万の借金で背負ったまま、舘は故郷に帰る(それでなんとかなるとも思えないのだが)。
NPO法人で働く舘を黒木が訪ねてくる和解シーンで映画は終わるのだが、なんとも釈然としない。
「俺たちは終わっていないんだ!」とラガーマン仲間と叫ぶシーンなどもあるのだが、けっきょく、妻の気持ちだけが重要というストーリーだった。絶望的なすれ違いなのである。
終わった人のあらすじ
田代壮介はかつて大手銀行の銀行マンであったが、子会社に出向させられ、そのまま定年を迎えた。趣味や夢もなく、これまで仕事一筋だった彼は退屈な日々を送るようになった。
壮介はスポーツジムに通ったり、図書館で時間を潰そうとする一方、職業安定所で職探しを始めるが、高学歴と立派な職歴がネックとなり、思うようにいかない。妻や娘からは、「恋でもしたら」とからかわれる始末。
大学院で文学を学ぼうと思い立った壮介は、勉強のために訪れたカルチャースクールである女性と出逢い、恋の予感が芽生える。さらに、スポーツジムで知り合った新興のIT企業社長との出会いによって、思わぬ人生の転機が訪れる。
終わった人を観るには?
終わった人 キャスト
田代千草 – 黒木瞳
浜田久里 – 広末涼子
山崎道子 – 臼田あさ美
鈴木直人 – 今井翼
工藤元一 – ベンガル
山下正美 – 清水ミチコ
山下良夫 – 温水洋一
桜田美雪 – 高畑淳子
田代ミネ – 岩崎加根子
川上喜太郎 – 渡辺哲
山崎麻衣 – 野澤しおり
米澤かおり
駒木根隆介
佐野元哉
範田紗々
朝比奈加奈
青山俊彦 – 田口トモロヲ
二宮勇 – 笹野高史
終わった人 スタッフ
監督 – 中田秀夫
脚本 – 根本ノンジ
音楽 – 海田庄吾
主題歌 – 今井美樹「あなたはあなたのままでいい」(作詞・作曲:布袋寅泰、Virgin Music/ユニバーサル ミュージック)
製作総指揮 – 黒澤満
製作 – 村松秀信、植村徹、間宮登良松、木下直哉、浅野謙治郎、飯田雅裕、吉崎圭一、中村卓、吉羽治、片岡尚、志賀司、東根千万億、鎌田英樹、榧野信治、藤澤利憲、富永健治
企画・プロデュース – 近藤正岳
プロデューサー – 明石知幸、坂井正徳
アソシエイトプロデューサー – 柳迫成彦
ラインプロデューサー – 望月政雄
音楽プロデューサー – 津島玄一
宣伝プロデューサー – 谷口毅志
撮影 – 斉藤幸一
照明 – 豊見山明長
美術 – 三ツ松けいこ
録音 – 室薗剛
編集 – 洲崎千恵子
装飾 – 平井浩一
記録 – 吉田久美子
VFXスーパーバイザー – 立石勝
キャスティングディレクター – 杉野剛
助監督 – 髙橋正弥、市原大地
製作担当 – 福井一夫、樫崎秀明
予告ナレーション – 増岡弘
特別協力 – 盛岡市
特別協賛 – 一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会
配給 – 東映
製作プロダクション – セントラル・アーツ
製作 – 「終わった人」製作委員会(東映、東北新社、東映ビデオ、木下グループ、セントラル・アーツ、石原プロモーション、朝日新聞社、電通、ユニバーサル ミュージック、講談社、イオンエンターテイメント、セレモニー、岩手日報社、IBC岩手放送、テレビ岩手、岩手めんこいテレビ、岩手朝日テレビ)
終わった人の原作(内館牧子)
大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられそのまま定年を迎えた田代壮介。仕事一筋だった彼は途方に暮れた。生き甲斐を求め、居場所を探して、惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?シニア世代の今日的問題であり、現役世代にとっても将来避けられない普遍的テーマを描いた、大反響ベストセラー「定年」小説。「定年って生前葬だな。これからどうする?」
大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられ、そのまま定年を迎えた主人公・田代壮介。仕事一筋だった彼は途方に暮れる。年下でまだ仕事をしている妻は旅行などにも乗り気ではない。図書館通いやジムで体を鍛えることは、いかにも年寄りじみていて抵抗がある。どんな仕事でもいいから働きたいと職探しをしてみると、高学歴や立派な職歴がかえって邪魔をしてうまくいかない。妻や娘は「恋でもしたら」などとけしかけるが、気になる女性がいたところで、思い通りになるものでもない。
惑い、あがき続ける田代に再生の時は訪れるのか? ある人物との出会いが、彼の運命の歯車を回す──。
シニア世代の今日的問題であり、現役世代にとっても将来避けられない普遍的テーマを描いた、大反響ベストセラー「定年」小説。

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