『TAKESHIS’』ってどんな映画?
かつて世界を熱狂させた映画監督が、自身のこれまでのキャリアを全否定するかのように破壊し、映画作りの迷宮へと自ら迷い込んでいく。世界のキタノこと北野武監督が、自らのアーティストとしての引き裂かれた内面を容赦ない毒気とユーモアで描き出した、極めて前衛的でスキャンダラスなセルフパロディ。
主人公は、押しも押されもせぬ大スターである「ビートたけし」と、彼に容姿がそっくりな売れない万年エキストラの男「北野」(ビートたけしの二役)。コンビニの夜勤で生計を立てながらオーディションを受け続ける北野は、ある日偶然、本物のスターであるたけしと出会う。その瞬間から、2人の世界は境界線を失い、虚構と現実、夢と悪夢が激しく交錯する混沌とした迷宮へと突入していく。
見どころは、これまでの北野映画を彩ってきたお馴染みの「ファミリー」たちが、これまでのパブリックイメージをなぞりながらも、どこか狂った記号として次々と現れる点だ。北野の隣人で売れない女優を演じる京野ことみや、たけしのマネージャー役の大杉漣。ヤクザの組長役の寺島進、そして怪しげな衣装で強烈なオーラを放つ謎の女・美輪明宏、たけしの愛人役の岸本加世子など、北野映画の遺伝子を持った名優たちが監督の脳内妄想を具現化していく。
映画は、おなじみヤクザ映画の銃撃戦をはじめ、お笑い芸人としてのルーツであるビートきよしとの掛け合い、松村邦洋や内山信二らによるドタバタ劇、そして突如として挿入されるTHE STRiPESの激しいタップダンスまで、ありとあらゆる北野武のエッセンスを詰め込みながら、それを観客の目の前でバラバラに解体していく。
六平直政や津田寛治、石橋保、渡辺哲といった実力派たちがヤクザやオーディションの審査員として物語の不条理さを加速させ、若き日の早乙女太一の鮮烈な舞や、TOSHI、DJ HANGERらのビートが、夢とも現実ともつかない映像に不思議なグルーヴを与える。
さらに、國本鍾建、上田耕一、高木淳也、芦川誠、武重勉、木村彰吾、仁科貴、太田浩介、久保晶、そしてゾマホンや馬場彰にいたるまで、画面の隅々に配された登場人物たちが、エキストラ「北野」の妄想の銃撃戦の餌食となり、あるいは巨大な毛虫となって現れ、映画の「枠組み」そのものを崩壊させていくプロセスは圧巻だ。
誰もが羨む大スターであり天才監督である男が、自分のなかに潜む「何者でもない自分」に命を狙われる孤独な狂気のゲーム。わかりやすい物語やカタルシスを真っ向から拒絶し、表現者の脳内をそのまま生々しくスクリーンにぶちまけたアヴァンギャルドな大作だ。
あらすじ
北野は役者をしているがまったく芽が出ず、コンビニの店員をしながら生計を立てている。一方、顔が北野と瓜二つのビートたけしは芸能界の大物として裕福な生活を送っている。ある日二人は顔を合わせるが、その日を境に北野はビートたけしの演じる映画の世界へと迷い込んでいく。
キャスト
京野ことみ
岸本加世子
大杉漣
寺島進
美輪明宏
六平直政
ビートきよし
津田寛治
石橋保
國本鍾建
上田耕一
高木淳也
芦川誠
松村邦洋
内山信二
渡辺哲
武重勉
木村彰吾
THE STRiPES
TOSHI
DJ HANGER
仁科貴
早乙女太一
太田浩介
久保晶
ゾマホン
しかし、おそるべし岸本加世子(笑)
文字通り自己言及的な映画であり(制作時の仮題は「フラクタル」だったそうだ)、これについてなにかを発言することに困難を感じる。むしろわかりやすい映画なのに「わけがわからなかった」という感想が百出しているのはそのためではないか。特有である、つながらない切り返しショットは、いつ見ても快感かも。
『TAKESHIS’』を観るには?
『TAKESHIS’』作品情報
脚本 – 北野武
製作 – 森昌行、吉田多喜男
音楽 – NAGI
掛川陽介・藤川祥虎
撮影 – 柳島克己
編集 – 北野武、太田義則
配給 – オフィス北野、松竹
公開 – イタリア:2005年9月2日(VIFF)、日本:2005年11月5日
上映時間 – 107分


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