ドラマ2010年代のドラマ2011年のドラマ

魔術はささやく

木村佳乃(魔術はささやく) ドラマ
木村佳乃(魔術はささやく)
宮部みゆきの小説(1989年日本推理サスペンス大賞)を原作として、2011年9月9日にフジテレビ系「金曜プレステージ」枠で放送。加藤治子(2015年11月2日没)の生前最後の出演作。

魔術はささやくの感想

木村佳乃(少女期を演じているのが谷村美月)が悪いわけではないが、原作では3人の女が死に、次は自分かと慄いているのは誰なのかは隠されている。あえて伏せた時系列をすべて開いて並べ直すことで、跡形もなく違うオハナシになっていて興醒めなこと夥しい。山口智子も演っているらしいが(1990年)、同じ趣向なのかいな。

魔術はささやく 見どころ

  1. 日常に潜む“魔術”=心理支配のリアリズム
    タイトルの「魔術」とは、呪文や儀式ではなく、「人の心を支配する技術=心理操作や暗示、催眠」のこと。言葉や映像、記憶の操作によって人を狂わせ、死に追いやるという現代の闇にリアルに存在しうる“魔術”である。このアプローチにより、視聴者の恐怖は超常現象ではなく、「自分にも起こりうる現実」として忍び寄る。
    「人の罪悪感」や「心の脆さ」を突く手法は、宮部作品らしい社会心理スリラーの骨太さで、「倫理と感情の境界」が問われるドラマに仕上がっている。
  2. 木村佳乃の“静かなる狂気”と抑制の演技
    主演・木村佳乃は、罪と恐怖に囚われた主人公・和子を派手さを抑えた表現で演じた。初期は平穏な生活者として登場しながら、次第に「自分が次に殺されるかもしれない」という恐怖と罪悪感に蝕まれていく。
    泣き叫んだり取り乱したりすることなく、不安と後悔が全身からにじみ出ている。本作の“魔術的空気感”に完全に一致している。
  3. サスペンス演出の陰影と不穏なテンポ
    演出は、映像と音響の静けさを最大限に活用したサイレント・スリラー。余計な音楽を排し、日常の音(ドアのきしみ、足音、空気のざわめき)を強調。カメラの引きや影の使い方によって、登場人物たちの「言葉にできない動揺や恐怖」を浮かび上がらせている。テンポは意図的に遅く、“観る側に考えさせる間”を確保。観る者を“魔術”の対象にしているかのような構成。
  4. テーマは「罪の共有と赦しの困難さ」
    物語の核には、「人間の罪が消えることはあるのか?」「罪を背負いながら、誰かを愛し守れるのか?」という問いがある。
    和子は“過去に加担した”とされる罪の意識から逃げず、命の危機に晒されながらも立ち向かう。その姿勢は、「過ちを認め、誰かのために生きる」という宮部みゆき作品の根底に流れる“再生”のメッセージを示している。
    ただし、この赦しは甘くない。「償いは簡単ではなく、誰かの許しではなく“自分自身の赦し”が鍵である」と、本作は語る。

魔術はささやく あらすじ

高木和子(木村佳乃)の仲間たちが次々と不可解な死を遂げる。一人目は車道に飛び出し、二人目は地下鉄に飛び込み、三人目は結婚式当日に飛び降り自殺。偶然にも、彼らは15年前に和子と共に「ある大罪」を犯していた。和子は、これらの事件が自分への復讐だと気づく。さらに、和子の命よりも大切な弟・守(中村蒼)も事件に巻き込まれる。
和子は、守が里親の元で育ち、姉の存在を知らないことを悩んでいた。彼女が名乗り出られない理由は、過去に犯した「ある罪」に対する懺悔だった。守は、実の父が横領犯として失踪し、育ての里親が交通事故で過失致死となり、孤独と闘っていた。
一方、和子の仲間たちを死に追いやる「魔術師」は、科学的に裏付けられた独特の手法で次々と犠牲者を生み出す。和子の犯した「大罪」とは何か、魔術師の正体と目的は何か、そして和子は愛する弟を守り抜くことができるのか。

ドラマ魔術はささやくのキャスト

高木 和子 – 木村佳乃(16歳時:谷村美月
浅野 守 – 中村蒼(幼少期:田中理勇
菅野 雪美 – 小池栄子
加藤 理恵 – たくませいこ
三田 敦子 – 江口のりこ
橋本 信彦 – 松重豊
田沢 智恵 – 草村礼子
田沢 賢一 – 眞島秀和
浅野 大造 – 大杉漣
浅野 カヨ – 加藤治子(特別出演)
日下 啓子 – 日和佐裕子
牧野 五郎 – 六角精児
佐藤 多香子 – 里田まい
柏木 – 高嶋寛
平田 – 宍戸美和公
原沢 鈴子 – 原田美枝子
吉武 浩一 – 奥田瑛二
看護師 – 熊切あさ美
和子等が介護を担当していた老人 – 小池榮平尾仁
守をいじめていた高校生 – 北村友彦中山優貴笠井しげ佐伯大地志村勇樹
女子高生 – 上間美緒

ドラマ魔術はささやくのスタッフ

脚本 – 渡辺千穂
監督 – 古厩智之
撮影 – 清久素延
技術協力 – フォーチュン
美術協力 – フジアール
照明協力 – Kカンパニー
ポスプロ – ビデオスタッフ
CG – マリンポスト
カースタント – 高橋レーシング
技斗 – 深作覚
催眠指導・監修 – 米倉一哉
脚本協力 – 酒巻浩史
編成企画 – 太田大(フジテレビ編成部)
プロデュース – 黒沢淳(テレパック)、渋谷未来(テレパック)、村上研一郎(フジテレビ)
制作 – フジテレビ
制作著作 – テレパック
エンディングテーマ – 安藤裕子「飛翔」

魔術はささやくの原作(宮部みゆき)


それぞれは社会面のありふれた記事だった。一人めはマンションの屋上から飛び降りた。二人めは地下鉄に飛び込んだ。そして三人めはタクシーの前に。何人たりとも相互の関連など想像し得べくもなく仕組まれた三つの死。さらに魔の手は四人めに伸びていた……。だが、逮捕されたタクシー運転手の甥、守は知らず知らず事件の真相に迫っていたのだった。日本推理サスペンス大賞受賞作。
タイトルとURLをコピーしました