私はあなたの母親じゃない。でも、お母さんになろうと思う。
(怜南との逃避行の末、奈緒が初めて“母になる覚悟”を告げるクライマックス。)
奈緒/松雪泰子
映像演出: カメラは怜南の目線から見上げる奈緒のアップ。わずかに逆光で輪郭が柔らかく輝く。音は、BGMが消え、奈緒の声だけがクリアに響く。構図:2人の手が自然に触れ合うカットで締める。
クライマックスで奈緒が怜南に告げる言葉。血のつながりがない“母子”が、互いに母と子になろうと決意する瞬間だ。「母になる」という台詞は、光と影の境界で語られることで、“決意の純粋さと不安定さ”が同時に表現される。観客は無音の緊張の中、台詞の一語一語を噛みしめる。
母性は本能ではなく“選択”である──この作品が一貫して問いかけてきたテーマが、この一言に集約された。松雪泰子の抑えた演技が、言葉の重みを際立たせた。
私が殺しました。
(藤子が奈緒を守るため、自らを犠牲にして自首する場面。)
藤子/田中裕子
映像演出: カメラは藤子の顔のアップをロングテイク。表情のわずかな変化まで捉える。色調は暖色の光が差し込み、過去の冷たい色調と対比。音は、一瞬、救急車のサイレンが遠くで鳴るのみ。
藤子が、警察に追い詰められた奈緒をかばい、自分が怜南の実母を殺したと自白する。このロングテイクは藤子の決断の重さと“母であることの痛み”を観る者に突きつける。色彩の暖かさは、彼女が初めて見せた“母のぬくもり”を暗示している。この言葉は、娘のために母が初めて“母親らしい”行動を取った象徴。
この瞬間、母性は血縁や役割を超え、愛する者を守るための選択として提示される。坂元裕二はここで、「母性は不完全であるがゆえに尊い」という逆説を描いた。
Mother 終盤あらすじ
奈緒は継美(怜南)を誘拐した罪で逮捕され、鈴原家はマスコミに囲まれる。家族は奈緒を支える決意をするが、奈緒の頭には継美の心配しかない。継美の母親・仁美が虐待で逮捕され、奈緒の裁判が始まる。継美は奈緒に「もう一度誘拐して」と電話し、奈緒は葛藤する。葉菜の余命を知った奈緒は、葉菜を理髪店に連れて帰る。その頃、室蘭の児童養護施設にいるはずの継美が奈緒の元に現れる。
Motherを観るには?
Motherのキャスト
鈴原 奈緒 – 松雪泰子
道木 怜南《鈴原 継美》 – 芦田愛菜
怜南の関係者
道木 仁美 – 尾野真千子
浦上 真人 – 綾野剛
藤吉家
藤吉 駿輔 – 山本耕史
藤吉 健輔 – 田中実
鈴原家
鈴原 芽衣 – 酒井若菜
鈴原 果歩 – 倉科カナ
鈴原 籐子 – 高畑淳子
その他
望月 葉菜 – 田中裕子
野本 桃子 – 高田敏江
木俣 耕平 – 川村陽介
袖川 珠美 – 市川実和子
加山 圭吾 – 音尾琢真
日野 – 長谷川公彦
香田 – 吉田羊
恩田 克子 – 五月晴子
多田 平三 – 髙橋昌也
Motherのスタッフ