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全斗煥政権下で壊れていく刑事たち(殺人の追憶の感想)
題材的に「ゾディアック」を思い出したが、本作の方がはるかに早い(2003年公開)。もしかして、フィンチャーの映画はリメイク企画だったのではと思わされる。
ソン・ガンホが序盤からいきなり跳び蹴りを披露したりして、全斗煥軍事政権下のメチャクチャな警察捜査をどこかユーモラスに描写しながら、事件は深刻化して刑事たちは壊れていく。
下敷きになった華城連続殺人もまた未解決のまま時効を迎えたが、2019年に犯人が特定されたというニュースが人を驚かせた。刑務所で本作を見ていたという話が伝えられ、ラストシーンを思い出して、なんとも言えない気持ちになる人も多かろう。ちなみにチョン・ミソンが亡くなったのも同じ2019年である。
殺人の追憶 見どころ
1986年から1991年にかけて韓国で実際に発生した「華城連続殺人事件」を題材にしたサスペンス。単なる犯罪ドラマにとどまらず、韓国社会の問題点や人間の本質に迫る。ポン・ジュノ監督の巧みな演出と、ソン・ガンホの圧倒的な演技力が見どころである。
巷の感想は「ところどころにクスっと笑えるシーンがある」「緩急の付け方が上手い」「当時の韓国社会の雰囲気や問題点がリアル」「ラストシーンの演出が秀逸」など。
第40回大鐘賞 最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞(ソン・ガンホ)、第24回青龍映画賞 最優秀作品賞、第41回百想芸術大賞 映画部門 最優秀作品賞、第51回サン・セバスティアン国際映画祭 最優秀監督賞(ポン・ジュノ)
- 見どころ1. **「アンチ・ミステリ」としての構造
犯人が特定されないまま物語が進行するアンチ・ミステリであり、従来のミステリーの枠組みを超えるものである。 - 見どころ2. **社会批判と時代背景の描写
1980年代の韓国は、軍事政権下で民主化運動が盛んだった時期。警察の暴力的な取り調べや証拠の捏造、無能な捜査体制などが描かれ、当時の社会の問題点がよくわかる。 - 見どころ3. **ラストシーンの象徴性
ラストで主人公のパク元刑事は事件現場を再訪し、通りすがりの少女から「以前、ここを覗き込んでいた男がいた」という話を聞き込む。犯人が未だに捕まっていない現実を示すシーンである。パク元刑事がカメラ目線になる演出は、観客自身が事件と向き合うことを促していると解釈できる。
殺人の追憶 あらすじ
1986年、韓国華城市で女性連続殺人事件が発生。地元刑事パク・トゥマンらが捜査するも、証拠捏造や暴力的取り調べで知的障害者グァンホを容疑者に仕立て上げる。ソウルから来た刑事ソ・テユンがグァンホの無実を証明し釈放させる。
事件は雨の日に発生し、ラジオに「憂鬱な手紙」をリクエストする人物が浮上。青年パク・ヒョンギュが容疑者として浮かぶが、DNA鑑定の結果は一致せず。ソ刑事は激昂してヒョンギュに暴行を加えるも、彼は逃走する。
17年後の2003年、元刑事パクが事件現場を訪れると、少女から「普通の顔をした男が『昔ここでやったことを思い出しに来た』と話していた」と聞かされ、真犯人がまだ生きていることを知り愕然とする。
殺人の追憶を観るには?
殺人の追憶 キャスト
ソ・テユン キム・サンギョン
チョ・ヨング キム・レハ
シン・ドンチョル ソン・ジェホ
ク・ヒボン ピョン・ヒボン
ペク・グァンホ パク・ノシク
パク・ヒョンギュ パク・ヘイル
カク・ソリョン チョン・ミソン
チョ・ビョンスン リュ・テホ