憶えのない殺人の感想
犯人が認知症で自分の犯行を覚えていなかったら?というミステリ設定が、プロデューサーだか、脚本家(大森美香)の狙いであったろう。
町内(ロケ地は町田)でストーカー男が殺される事件が起こり、犯行現場近くのコンビニで、小林薫が深夜に単三電池パックと微糖缶コーヒーを買っていたことがわかる。覚えがないので感情的に否定する小林だったが、しかし自宅に大量の乾電池在庫を発見する。といった具合で、記憶が混濁し、自分で自分を信じられなくなっていく元警察官を小林薫が好演している。
小林をよく知る医師の橋本じゅんは、認知症患者にも理性や人格はあると言い、「記憶がないからといって犯人扱いすることは人格侵害ですよ!」と、小林を追いつめる刑事の尾野真千子に釘を刺す。
という後編の中盤までは面白かったが、おそらくは「諸事情」で延期されて二部構成になった影響で、全体のバランスが悪くなったのは残念である。
オノマチは保育園に子どもを迎えに行く刻限にいつも追われていて、シンママなのかなと思っていると、疲れて帰宅して子どもを寝かしつけた後のシーンでパジャマを着た夫が現れるのだが、そこでの夫婦の会話や夫の存在感はほぼ蛇足だった。オノマチの設定がぶれているのである。小林薫を追いつめる傾斜の仕方も少しおかしい。
憶えのない殺人のあらすじ
東京郊外の駐在所に勤務した佐治英雄(小林薫)は十年前に退職し、今も同じ町内に暮らしている。ある日、北嶺亜弓(尾野真千子)という刑事が佐治を訪ねる。かつてストーカー行為で佐治が逮捕した男が殺されたという。彼は服役後に同じ女性を襲い、ケガをさせており、佐治はそのことを今も深く後悔していた。
北嶺は佐治が犯人ではないかという疑いを深めていき、それに気づいた佐治は無実を証明しようとするが、認知症を患っていることにも気づく。佐治と北嶺は心の迷宮に足を踏み入れていく。
憶えのない殺人を観るには?
憶えのない殺人 キャスト
北嶺亜弓(刑事) – 尾野真千子
楢崎康英(開業医) – 橋本じゅん
稲岡勇也(北嶺の後輩刑事) – 松澤匠
奥田沙苗(元地下アイドル) – 鞘師里保
桧沢肇(ストーカー) – 西村和泉
内山宗史郎(大工) – 螢雪次朗
佐治花澄(佐治の娘) – 中越典子(幼少期:横田真子)
佐治鮎子(佐治の妻) – 筒井真理子