大洪水の感想
中盤まではタイトル通りのディザスタームービーで、ポスプロに3年近くかけたという洪水描写は圧巻のひと言。
舞台はソウルの高層マンションで、ヒロイン(キム・ダミ)の部屋は3階なのだが、窓のずっと下に見えていた溜まっていた水が5分ほどで床上浸水してくる、じわじわした異常さが期待を煽る。数分後にはさらに次々と高波が押し寄せ、海面は10階、18階、30階とどんどん上がっていくのだ(途中の描写でも、秒速10cm程度で水位は上がっているのがわかる)。高波のたびに各階は水没し、ヒロインは潜水状態から海面を目指す。屋上を目指す縦行動の映画なのだが、階段とか使わずに水面に浮いていたほうが早いんじゃね?
AI開発研究員らしいヒロインを助けるのは、駆けつけたセキュリティチームのパク・ヘス(ネトフリ公務員と呼ばれているらしい)だが、幼い息子が足手まといになり、脱出は一歩進んで二歩後退を繰り返す。ママが絵を見てくれないだの、うんこしたいだの、怖いだのとわがままを言って母親にべったりくっつき、ほぼ全編を通じてキム・ダミにおんぶだっこである。妖怪か。
パク・ヘスも苦い顔なのだが、彼のミッションは母子ともに救出することらしいが、母親に棄てられたトラウマを持っており、キム・ダミが息子を棄てるのを見届けに来たみたいなことを言うあたりから、話がわからなくなる。
3人はついに屋上にたどり着くが、パク・ヘスはあっさり銃殺され、ヒロインと息子は引き裂かれ、息子は何やら頭に孔を開けられて「データ」を取り出されている様子。そして脱出したヒロインはロケットで地球を脱出、宇宙ステーションへ。ここらでついていけなくなる人も多そう。
※以下ネタバレ
ここから先の後半は、一気にSFになる。
じつは息子は人造人間で(ニューマンの型番が付いている)、人間としての感情をインストールするためにキム・ダミが自ら育てていたのである(キム・ダミは世界に二人しかいない「感情エンジン」の開発者である)。このプロジェクトは来たるべき人類滅亡に備えて宇宙空間で新人類を開発し、地球に帰還させるというもので、その元になるのが「母親と息子」なのだった(よくあるアダムとイブ型ではない)。
息子には無事感情がインストールされたので、残るは母親の開発だということになり、キム・ダミは自らを検体提供し、マトリックス的な電算処理によって洪水脱出経験を2万回も繰り返すことで、「母親」をインストールする。(ここで残り半分の人が脱落しそう)
ということで後半は再び洪水スペクタルになるのだが、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」か「コンティニュー」みたいな無限やり直し系になる(最初は無地だったTシャツにプリントされた数字がどんどん増えていく)。最後にみごと「母子」が完成し、二人を乗せた船がいくつも地球を目指しているというところでジ・エンドである。
やはりSF設定の部分は説明不足が多く、納得いかない感が残ってしまった。「静かなる海」もそうだったが、韓国のSF映画はどこか暴走気味のような気がする。
大洪水のあらすじ
2025年、南極に隕石が落下して氷が溶け、世界は未曾有の大洪水で「最後の日」を迎える。津波に没しつつあるソウルの高層マンションで幼い息子を抱えて立ち往生したAI開発者のアンナは、警備チームの要員ヒジョとともに決死の脱出に挑むが…
大洪水を観るには?
大洪水 キャスト
大洪水 スタッフ
監督 – キム・ビョンウ

